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【第4章】50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け

本連載では、当社マネジャーの柳瀬大地が「月刊 人事マネジメント」にて執筆した、企業業績向上のための50代社員の活躍を引き出す人事の仕掛けを分かりやすく紹介いたします。

全6回にわたる内容ですので、ぜひ全てご覧いただけると嬉しいです!

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スキルアップ教育(ポータブルスキル編)

第3章では、自律的なキャリア志向を高めることで、50代社員の仕事に対するモチベーションが向上する内容をご紹介しました。
「自律性」を持ち「高いモチベーション」を獲得した50代社員に対して、会社は次の手を打つ必要があります。

それは、具体的なスキルの獲得です。
では50代社員に求められるスキルとは何でしょうか?

今回は業界や職種、年齢にかかわらず身につけるべき基本となるスキルをご紹介します。

またそのうえで、50代社員にそれらのスキルを習得してもらうためのポイントもご説明していきます。(図表)

どこでも活躍できる人材になるためのスキル

業界や職種、年齢を問わず身につけるべきスキル、それは「ポータブルスキル」です。

ポータブルスキルとは言葉通りで、どこにでも持ち運べる知識や能力のことを意味します。
特定の業界や企業にとどまらず、どんな仕事を行う場合でも必要であると、一般的に定義されています。

つまり、グローバル化の急速な進展や労働人口の減少、働き方の多様化により流動性が高まる現在の労働市場において、円滑な就職や転職を実現するための重要なスキルといえます。

これは社員が高い成果を出すために必要となる基礎的なスキルである一方、特定の会社で長く過ごすうちに忘れてしまいがちなものでもあります。
なぜなら同じ会社でずっと働いている場合には、社内のキーパーソンを知っているなどの企業特殊スキル、業界慣例に詳しいなどの業界特殊スキルを発揮する場面が増えるからです。

しかし時代の変化とともに、こうした特殊スキルの賞味期限は切れてしまう傾向にあります。
キーパーソンだった上司が定年退職し、部下だった社員が新たなキーパーソ ンになったとき、これまでの関係性の維持が難しくなることがあるためです。
また業界についても同様で、数値を追いかけることが当たり前だった金融業や製薬業で数値目標が廃止されるなど、新しい働き方やスキルが求められるケースは多々あります。

だからこそ、改めてポータブルスキルに立ち戻る必要があるのです。

ここで、ポータブルスキルの分類の一例についてご紹介します。

「対課題スキル」「対自己スキル」「対人スキル」の 3つに分類したうえで、それぞれの分類を構成する主なスキルは以下のようになります。

対課題スキル
情報収集力、課題解決力、計画力、発想力、実行力など

対自己スキル
忍耐力、継続力、決断力など

対人スキル
コミュニケーション能力、リーダーシップ、協調性、交渉力など  

これらはいずれも若いうちはしっかり発揮できていたものの、年齢とともに疎かになっていませんでしょうか?

そこで、50代社員もかつては発揮できていたであろう「対課題スキル」「対自己スキル」「対人スキル」について、 再び身につける方法についてご紹介します!

ポータブルスキルを身に着けるための勘所

ポータブルスキルは多岐にわたるため、万遍なく身につけようとするのは効率的ではありません。

社員の方々には、「自身の強みを伸ばすのか」または「今後のキャリアや現在の仕事で成果を上げるために必要なスキルを伸ばすのか」といった視点で優先順位をつけながら、集中的に鍛えてもらうようにしましょう。

その際、第2章でご紹介したスキルの可視化による現状把握や、第3章のキャリア自律研修などによる仕事観やキャリアの再構築が役に立ちます。

また、ポータブルスキル習得を短期間で完了させる方法はありません。
集合研修やeラーニングを通したインプットと、業務内での実践によるアウトプットを継続反復することが重要です。
学んだ内容を着実に定着させることで、活躍するための勘所を取り戻していくことが大切です。

効果的なインプットを実現するための教育

ポータブルスキルのインプットを促す方策の1つとして、外部の集合研修の活用が挙げられます。

集合研修ではリアルタイムでのグループワークやディスカッションが可能であり、ロジカルシンキングなどの対課題スキルやリーダーシップなどの対人スキルの習得に最適であるためです。

またwithコロナの現下では、オンラインによる集合研修の需要も高まっており、場所にとらわれない研修も利点です。

ただし、新たに研修を実施するとなると、もちろん一定のコストがかかります。
また、集合研修は内容や実施時間が一律のため、社員それぞれの勤務態様や習熟度に応じたきめ細かなフォローが難しく、コストに見合う効果を見込めない場合があります。

こうした課題の克服・補完策として、LMS(Learning Management System)を基盤としたeラーニングコンテンツを活用する会社も増えています。
最近のLMSの多くはクラウド型のサービスのため、システムを新たに導入する必要がなく、初期コストを抑えられるのことが特徴です。
また、数百から数千のeラーニングコンテンツを毎月定額で受講でき、そのうえフィードバックも受けられるため、受講者は自身の希望や習熟度に合わ せて時間や場所を選ばずスキルアップを目指すことが可能です。

さらに、LMSでの学習進捗管理機能やスキル管理機能などを社員データベースと連携させることで、タレントマネジメントの観点から戦略的な人材配置や人材開発が可能となり、優秀人材の育成・抜擢などに役立てることができます。

アウトプットを支える体制づくり

インプットした学習内容を日々の業務のなかで繰り返し実践することでスキル定着を図ります。
その際、社員に明確なゴールを持ってもらうために、人事・教育部門は会社の成長に向けたポータブルスキルの必要性や重要性をしっかり示す必要があります。

「評価される具体的な行動は何か」「業務上求められる考え方は何か」といったことを可能な限り目標管理や評価制度に反映させていく運用法を検討することが大切です。

また、収集・管理している社員情報を所属部署の上司に随時共有するようにしましょう。
それによって、上司は部下のスキルの到達度を適切に認識し、日々のコミュニケーションにおいて部下に的確なアドバイスを送ることが期待でき、社員のさらなるモチベーション向上にもつながるでしょう。

まとめ

本記事では、ポータブルスキル獲得のポイントについて、主に教育の観点からご説明しました。

次回、第5章では50代社員の活躍のカギを握るもう1つのスキルである、デジタルリテラシーの伸ばし方についてご紹介しますので、ぜひご覧ください!


【第5章はこちらから!】


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