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【第1章】50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け

最終更新日:2024年5月23日

本連載では、当社マネジャーの柳瀬大地が「月刊 人事マネジメント」にて執筆した、企業業績向上のための50代社員の活躍を引き出す人事の仕掛けを分かりやすく紹介いたします。

本記事では、50代社員がどのようにして今の状態に至ったのかを整理していきます。

*本記事は、5~7分程度で読むことができます。

「50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け」は、全6回にわたる内容ですので、ぜひ全てご覧いただけると嬉しいです!


50代社員の必要性と可能性

はじめに

「成功体験に固執して融通が利かない」「過大な給料をもらっている」など、平成を駆け抜けてきた50代社員に対する否定的な論調をよく見かけます。

政府は70歳定年の導入を目指し、高齢になっても働き続ける施策を進めていますし、一部の大企業ではリスキリングという名の下で企業主導の再教育が進められています。
50代を含むシニア層を大きな労働力として捉え、生産性を高めることで企業の競争優位を高めていくことが社会的な要請といえます。

一方で、多くの企業において、管理職になっていない50代社員が特に上述のように否定的に見られています。

社会全体からは求められている一方で、一部から否定的に捉えられているという矛盾をはらんでいる状態です。

そこで今回は、50代社員がどのようにして今の状態に至ったのかを整理してみましょう!

50代社員の特徴と現在地

50代社員の多くは、1990年前後のバブル景気のなか、大量一括採用されました。
当時は終身雇用・年功序列といった日本型雇用システムで出世し定年まで勤め上げるキャリアパスが理想とされ、それが当たり前の時代でした。

しかし、バブル崩壊後は深刻な不況により、労働負荷が増加する一方で管理職ポストの削減で出世が約束されない事態に陥りました。

さらに近年、日本型雇用システムの転換やデジタル化の潮流により、働き方そのものが劇的に変化し ています。

つまり、従来の価値観やスキルが通用しなくなっているのです。

このように外部環境の急激な変化に柔軟に対応できなかったことが、冒頭の50代への否定的な論調につながっていると思われます。

50代社員が活躍する必要性と可能性

否定的な論調で捉えられることもある50代社員には、今後、活躍の必要性や可能性はあるのでしょうか?

労働力と生産性の観点から考えてみましょう!

1 )労働力の観点
50代を含むミドル・シニア層は企業の要員構成的に大きなボリュームを占めています。
若年労働人口が確実に減少し続ける状況で、50代社員が70歳に至る今後20年間を、不活性なまま放置することはとてももったいないことです。

企業の業績を拡大していくためには、ボリューム層である50代社員の活躍は欠かせないと考えられます。

2 )生産性の観点
50代社員は長い就業経験を通して、知識や経験、さらに幅広い人脈を蓄積してきました。
これらの要素を、クリエイティビティ(新たなアイデアの創出)やイノベーション(アイデアの具体化)の場で活用し、生産性向上に寄与させられないかを考察します。

・クリエイティビティ(新たなアイデアの創出)の場面
新たなアイデアを創出する方法の1つに、既存の知の組み合わせがあります。

50代社員が持つ知識や経験は、これまでの企業活動を支えてきた貴重な資産といえます。
これらの資産の体系化・組織知化(個人の知識や経験を組織に共有し活用すること)により、多様な観点からの検討が可能となります。

結果として、アイデアの創出が促進されます。

イノベーション(アイデアの具体化)の場面
新たなアイデアを創出したとしても、それを具体化し実装するためには「橋渡し役」が必要となります。

特に営業部門などで長く従事してきた50代社員は、社内外に幅広い人脈を築いていることが多いです。

そのような人脈を効果的に活用できれば、アイデアの具体化を加速させることができます。

50代社員の活躍における2つの阻害要因

50代社員に活躍してもらう必要性や可能性は理解しつつも、50代社員自体に特有の課題があるとすれば、「スキルの発揮度が低いこと」と「低調なモチベーション」 が挙げられます。

1 )スキルの発揮度が低いこと

・スキルアップデートの不足

テクノロジーの進化やビジネスモデルの変化により、これまで蓄積したスキルが通用せず、生産性が低下している可能性があります。

こうした局面でも自主的な学び直しを実践していければいいのですが、他の世代に比べて少ないのが50代社員の特徴でもあります。

・自身の成功体験と異なる視点でのスキル活用の不足
既存のスキルは、異なる視点で活用するなど、使い方次第で新たな気づきを生み出す可能性があります。
他方で、50代社員は保守的な傾向にあるため、従来の成功体験に基づく方法でしか使いこなせていない可能性があります。

2 )低調なモチベーション

・管理職への出世の可否がモチベーションに影響
多くの50代社員にとって、管理職への出世のタイミングがキャリアの転換点となります。

50代社員は、年功序列の日本型雇用システムのなかで「自分は順調に出世していけるはず」と漠然と考えている場合が多いです。
なので、一定年齢を超えて出世の可能性が低くなることにより、今後のキャリアや活躍機会が喪失するのではないかと危惧するようになります。

こうして生まれた不安や危機感が、仕事に対するモチベーションの大幅な低下につながる恐れがあります。

このタイミングは概ね40代半ばまでに訪れることが多いです。
半数がキャリアの終わりを意識し始めるのも40代半ばから、というデータもあるため、人生観や仕事観に変化が起きやすい時期だといえます。

2つの阻害要因を克服し50代の活躍を促す人事の仕掛け

50代社員活躍の実現に向けたスキル・モチベーションに関する阻害要因への対応は、以下の通りです。

・スキルへの対応
50代社員のスキルのアップデートとスキル活用方法を検討します。

・モチベーションへの対応
キャリアや業務に対する意識の変革を促しながら、出世だけではない、さらなる活躍に向けたモチベーション向上施策を検討します。

まとめ

以上のとおり当事者である50代社員自身の取り組みも必要ですが、それ以上に企業側が彼らの取り組みを誘発し、後押しする仕掛けを設計・ 運用することが重要になります。

第2章からは、人材配置、評価、教育、組織開発などの切り口で50代社員の活躍を促す仕掛けを具体的に解説していきます!


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