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【第3章】50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け

最終更新日:2024年5月23日

本連載では、当社マネジャーの柳瀬大地が「月刊 人事マネジメント」にて執筆した、企業業績向上のための50代社員の活躍を引き出す人事の仕掛けを分かりやすく紹介いたします。

本記事では、50代社員のモチベーションを向上させる取り組みについてご紹介します。

*本記事は、10分以内で読むことができます。

「50代社員の活躍を急ごう|ミドル・シニア社員の生産性を上げるための人事の仕掛け」は、全6回にわたる内容ですので、ぜひ全てご覧いただけると嬉しいです!

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50代社員のモチベーション向上のために

第2章では、棚卸により50代社員の既存スキルを可視化する方法と、既存スキルの活用方法をご紹介しました。

しかしながら、前回申し上げた通り、スキル内容によっては活用できる場面が限定されることが多々あります。

その場合、スキルのアップデートをしてもらう必要がありますが、まずその前に着目すべきポイントがあります。(図表)

それは、仕事に対するモチベーションの問題です。

50代社員のモチベーション低下の原因と対策について考えてみましょう!

なぜ50代社員のモチベーションは低下するのか

そもそも、50代社員のモチベーションが下がる原因は何なのでしょうか?

50代社員の多くは、「終身雇用・年功序列のエスカレーターに乗り、会社の指示や期待に応えていけば将来安泰」「自分の将来は会社が決めてくれる」などと、どこか他律的に考えている現状があります。

その証拠として、労務行政研究所が各社人事担当者に対して行ったアンケートでは、40代・ 50代社員に感じる課題に「キャリアビジョンがなく、受け身の姿勢で仕事を進めている」ことを挙げる回答者が多数いました。

しかし、経済成長の停滞、産業構造の変化、グローバル化などによって日本型雇用制度が機能しなくなっているのが現状です。
そのため、50代社員がこれまで漠然と楽観視してきた年功による昇格、報酬増加、権限の拡大といった見返りが期待できなくなっています。

このような従来型の年功管理による淡い期待と、実際に降りかかる現実とのギャップに対応できなくなり、50代社員はモチベーションを低下させることになります。

そして、50代社員が他律的な考え方に至り、現実にうまく対応できなくなっている背景には、以下3つの阻害原因が複雑に絡み合っていることが考えられます。

1 )仕事に対するモチベーションの偏重
日本型雇用慣行のなかで30年近く働いてきた50代社員は、自身の価値判断で社会的意義ややりがいを見出していく内発的動機づけではなく、昇格・昇給に代表される外発的動機を、モチベーションの源泉にしてきた傾向にありま す。
そのため、上述のようなギャップに困惑することとなります。

2 )OJTによる既存の組織と業務への過度なコミットメント
日本型雇用慣行での人材育成は、OJTとジョブローテーションが主流だといわれています。

OJTでは、「組織内の既存業務スキルをいかに習得し、使いこなすか」が重視されるため、時代や技術、環境の変化に応じたスキル・価値観のアップデートにどうしても苦労するという側面があります。

そのため、OJTで育った50代社員は過去の経験に固執することで、新たな変化にうまく対応できなくなっていると考えられます。

3 )コミュニケーションの減退
パーソル総合研究所が実施したアンケートでは、高齢になるほどダイバーシティに対する抵抗感が強くなるといった結果が出ています。

若い世代や異性との意見交換に抵抗を感じるようでは、変化を理解し取り入れる機会が減り、ますます自身の価値観や考え方のアップデートが困難となっていきます。

モチベーションを向上させるキャリア自律研修

こうした現状を打破し、50代社員のモチベーションを向上させるには、まず本人の意識変革が不可欠です。

それを支援し、促進させる会社側の取り組みとしては、「キャリア自律研修」の実施が考えられます。

50代社員のキャリアに対する期待と現実をうまく調整し、働くことの意味を捉え直す「きっかけづくり」としてこの研修を行います。
具体的には、自身の現在地の認識および提供価値の模索をする「アンラーニング」と、働きがいを再定義するための「ナラティブアプローチ」を実施することが考えられます。

1 )アンラーニング
一度学んだ知識や価値観を意識的に捨て、新たに学び直す手法です。
実際の研修では以下のポイントを踏まえながら実施します。

・社内外の環境変化を把握しながら、自身のこれまでのスキルや経験、価値観を批判的に見直す

・ その見直しを踏まえて、社内外における立ち位置を客観的に認識し、今後の自身の提供価値の可能性を検討する

アンラーニングは、様々な価値観を持った人となるべく多く対話できるよう、異なる部署や職種の社員とのワークショップ形式で進めることをおすすめします。

2 )ナラティブアプローチ
臨床心理学領域から生まれたカウンセリング手法であり、対話を通じて個人の持論や解釈を引き出し、それを別視点で置き換えて問題解決を図るものです。

自身の仕事のこれまでを振り返る場合、「これまで会社のために懸命に働いてきたのに出世もできず報われない」「自分より上の世代はもっと待遇が良かったと思う」というように、どうしてもネガティブで近視眼的な「自分語り」 に陥りがちです。

しかし、ナラティブアプローチを実施することにより、「自分や会社のためというよりも社会のために役割を果たしていきたい」「仕事を通じて社内外のカウンターパートの期待に応え、いい関係を築きたい」といった、従来とは異なる視点で仕事の意味を捉え直すきっかけがつかめるかもしれません。

ナラティブアプローチにおいては、本人の腹落ちが不可欠です。
本人の本音をうまく引き出し、決して上からの押し付けにならないよう、自然な形で意識を変えていくことを心がけましょう。

その点では、人事部だけでなく、ナラティブアプローチ手法に知見があり、ファシリテーション能力が高い外部研修コンサルティングを活用することが有効です。

まとめ

本記事では、50代社員のモチベーションを向上させる取り組みについてご紹介しました。

50代社員のモチベーション向上のためには、自身のキャリアを自律的に考えていただけるように方向づけていくことが何よりも大切です。
前述の研修を一過性のものにせず、日々の業務においても意識して取り組んでいけるよう50代社員をフォローしていくことが会社側に求められます。

一方で、50代社員の活躍に向けては自律的なキャリア志向の確立だけでは十分ではありません。
自律的な「思考」ができるようになれば、次に「思考」を「行動」に移し、成果を出していく必要があります。

第2章では、既存スキルを新たな視点で活用する方法で活躍してもらう場を提案しましたが、第4章では、50代社員の活躍の機会をさらに広げるためのスキルのアップデートに向けた教育のあり方をご説明しますので、ぜひご覧ください!


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