人的資本経営を誰でも分かるように解説します
人的資本経営ってご存じですか?
ひと言で表すことが出来るでしょうか?
答えられない方には
ぜひ最後まで読んで欲しい。
人事で働く人以外でも
サラリーマンとして基本的な知識は
必要だと思うからです。
今回は、採用にも密接に関わる
人的資本経営とは何か?
誰にでも分かるように解説します。
1.注目された背景
2022年8月、政府が
「人的資本可視化指針」
を発表しました。
この指針の焦点は
「人的資本」の「可視化」にあり、
企業は
有価証券報告書に人的資本を記載すること
が義務づけられます。
これは、企業にとって
株価や資金調達に大きな影響を与える
として、注目が集まったわけです。
また、人的資本可視化指針は
難解な文章であり、一読しただけでは
理解することさえ難しい代物でした。
基本的な指針から各論に至るまで
色々ひとまとめに書かれていることが
原因ではないかと思います。
また、
コーポレートガバナンスコード(※1)
が改定された時、投資家に対して
人的投資の状況報告が求められます。
(上場企業のみ)
※1 コーポレートガバナンスコード
コーポレートガバナンスを実現するために
必要な原則を金融庁と東京証券取引所が合同で
取りまとめた「上場企業統治指針」のこと。
これに人的資本の情報開示も含まれる。
例:ダイバーシティ項目
①管理職における多様性の確保の考え方
(女性・外国人・中途採用者の登用)
と測定可能な自主目標を設定する。
②多様性の確保に向けた人材育成方針・
社内環境整備方針をあわせて公表する。
2.人的資本とは?
それでは冒頭で質問した
ひと言で表すとどうなるか?
私は次のように定義します。
人は企業にとって「資本」であり、
育成することで企業価値を高める存在である
一方で、従来の捉え方では、
人は企業にとって「資源」であり、
労働力として企業へ貢献もするが、同時に
利益を圧迫する人件費=コストと捉えていた
更に例えるなら、
企業を「車」とした場合、
「資本」なら
人は「運転手」であり、操縦テクニックで
車の価値を何倍にも高めてくれる存在。
一方で、
「資源」なら
人は「燃料」であり、消費するものとして
不足したら(現場へ)投入する存在。
このように表現すると、
両者の違いが分かって頂けたと思います。
採用の現場でも
各部署の不足人数を調査して
採用人数や採用要件を決めていませんか?
実は、このプロセス自体
従来の「人は資源」という考え方が
元になった計画なのです。
本来の採用とは、
不足している人数ではなく、
目指す未来に必要な人材を採用する
このように定義すると良いと思います。
話を戻しますが、
この指針では人材の定義が大きく変わりました。
人は企業においてコストではなく、
成長に不可欠な投資対象となる「資本」であり、
KPIを設定し、
可視化することで企業価値を測り、
上場企業に対しては、
株価や金融機関の融資にも影響しますよ。
という新しい考え方へ
ゲームチェンジしたことを意味します。
3.人的資本の仕組み
次に、人的資本経営の仕組みは、
①現状を把握
②KPI(※2)を設定
③人的資本へ投資
④投資の効果を検証・改善
⑤成果を情報開示する
ことで成り立ちます。
また、項目は大きく分けると、
「働き易さ」と「成長促進」の要因を
具体的な数値で示す必要があり、
「KPI」を可視化することが義務化された
このように理解して頂ければ結構です。
※2 KPI(Key Performance Indicators)
KPI=重要業績評価指標とは、
組織の目標達成の度合いを測る計量基準のこと
4.採用とどのように関連するのか?
従来、社員が辞めるとき
待遇に対する不満が最も多い理由でした。
しかし、現在では異なります。
もし、あなたが、
会社を辞めるとしらどんな理由か?
想像してみてください。
現代のサラリーマンは
以下の理由で退職を決意するそうです。
自らの市場価値を向上していく上で、
今の仕事内容や職場の環境が
本当に自分にあっているのか?
不安を抱き、先が見通せなくなったとき。
このように社員の育成(投資)がなく、
また、仕事内容や職場環境においても、
自分自身への成長実感が損なわれると、
エンゲージメントが著しく低下します。
当然の話ですが、
魅力のない企業からは、人が離れていき、
魅力的な企業には、人が多く集まります。
この「魅力的な企業」とは一体何か?
自分自身のことばで語れるか?
深く考えて頂きたいのです。
ここまで前置きしたところで、
人的資本経営と採用との関連性について
私見も織り交ぜて解説させて頂きます。
人的資本経営とは、
企業で働く人が、一体どのようにして
企業の価値創造をしていくのか?
これがきちんと
言語化できて、ストーリー性があること
が重要な要素であると私は主張します。
なぜなら、
人的資本経営では、投資によって
企業の魅力を最大限引き出せるのは人である
と定義するのならば、
実務で運用していくためには、
自社に置き換え、言語化して伝えないと
社員に正しく伝わらないと考えるからです。
例えば、このように
明文化するのは如何でしょうか?
当社は(ビジョン)を掲げており、
それを達成するため、
人材へ○○を投資している。
ゆえに当社の社員は○○を生かし、
(商品・サービス)を用いて
顧客の(ベネフィット)を実現し続ける。
(※3)
言語化がストーリーとして
しっかり腹落ちする内容であった場合、
社員が一丸となって同じ方向に進めます。
その先に、利益の達成と人材の確保を
優位に進めることができると思うのです。
※3 顧客のベネフィットを実現し続ける
詳細はこちらの記事をご参照ください。
5.人材版伊藤レポート
最後に、人的資本経営を語る上で
人材版伊藤レポートの存在は
セットで覚えておかないといけません。
人材版伊藤レポートとは一橋大学の
伊藤 邦雄 名誉教授によって提唱され、
2022年9月に経産省より公表された
2.0が世間に衝撃を与えました。
このレポートを詳しく説明すると
とても長くなるため、今回は
ポイントだけを軽くご紹介します。
3つの視点
①経営戦略と人材戦略の連動
②As is-To beギャップの定量把握
③企業文化への定着
5つの共通要素
①動的な人材ポートフォリオ
②知・経験のD&I
③リスキル、学び直し
④従業員エンゲージメント
⑤時間や場所にとらわれない働き方
人材の視点で伊藤レポートが示す概念は、
社会の変化に対応するための横軸と、
ビジネスモデルや経営戦略から逆算する
ための縦軸が組み合わさっています。
企業は今いる人が何ができるかではなく、
経営が目指す方向=目標から逆算して
何が足りないかを考える必要があります。
更に補足すると、
目標は人材育成によって実現するのか、
あるいは外部から採用するのかを
明確にしていく必要があるのです。
ざっくり説明すると
このような概念になります。
如何だったでしょうか?
人的資本経営は従来の視点からの脱却と、
企業の魅力や価値の明確な伝達が求められる
ということが伝わりましたでしょうか?
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