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美しい作品に出会いましたよ!文学フリマ東京38にて。

2024年5月19日、私は時間が出来たので、文学フリマ東京38に出掛けてきました。はじめてこのイベントに行きました。パンフレットには2075ブースの出店と書かれています。(うわー、すごい数!)
私が行った目的は、曖昧でした――。
・行ってみたかったから。
・たまたま行ける時間が出来たから。
・どういうものか興味があった。
・珍しいレアな小説が買えるかもしれないと思った。
そんなところでした。
あまり時間が無く、全てのブースを回るのは無理でしたが、私はここで数冊の本を買いました。
そこで出会えた、素敵な本を1つご紹介しましょう。

その本を知った理由ですが、正直に言いますとサンプルが置かれているテーブルでたまたま目に入り手に取った事でした。たまたま出会ったという幸運でした。
こちらの作品です↓↓↓

■読書感想文「未必のトラジェディー」

***
文学フリマに出掛けまして、本を数冊買いました。その中に泉海紫乃さんの「未必のトラジェディー」がありました。

(トラジェディーっていうのは、日本語の意味はなんだったかな?)

学生時代の英語の成績がバレてしまいそうですが、私は読み終わるまでは調べまいと決めて読みました。

この本は、製本も素敵で、カバーとオビが付いています。装丁は文句が付けようもなく上出来でした。なんとなくミステリー小説のように見受けられましたが、ただそれだけの本には思えない存在感がありました。それが何かを読み終わってから私は後から理解できたのです。そしてそれが本の外観に滲み出ていたので、そういう意味では、かなりの高い完成度でした。本文の作りも制作者の丁寧さが見られます。文字フォント、チャプターごとのタイトルとそこに飾るフレームなどが美しいです。章ごとの題名の配置も工夫されていましたね。話の全体にマッチしていると思いました。

外観ばかりに気を取られましたが、物語の中身の感想へ移りましょう。

仁科晶穂と行原女史の交わす会話とふたりの関係性が、物語の中では気持ちをホッとさせる要素になっていてそこは良かったです。行原女史に自分の事は分かられている。それを知っていて仁科晶穂は返事を返し、執筆の締め切りに向かっている。またはそれに似た掛け合いがふたりのいつもの相互関係の色になっている。そういうやり取りの日常さが本線の”重さ”を軽減してくれていました。でもこれって、ちょっと楽しい主人公ふたりの掛け合いで事件を解決に導くというよくある娯楽的要素に傾倒したシリーズ物とは違いました。

この著者_泉海紫乃さんの作品には、きっと一貫していると想像するのですが、人が胸に秘めていた様々な想いの、背負っていてその人の行動全ての源になっている事の、その真実を紐解いていくことが作品の芯になっていると感じました。そこがとてもリアリティがあって、読者を引きつけているのだと思ったのです。登場してきた東有理、瀬名はすみ、松野陽加、並木夏海の両親らが、その人にとって一生で最も劇的で感傷的で心を揺らす場面を物語の中で過ごしますね。私が目を離せなくなる訳です。恵比寿のバーの店長が彼女たちの出来事に遭遇して、豊富な人生経験をまた一つ重ねていったと思うと、外野の私が「大変ですね、今回も。店長もアルコールに走りたくなるでしょう」と声を掛けたくなりました。またちょっとそれも切なく、人の人生の紆余曲折とその重みっていろいろな人に影響を与えるのだなと痛切に感じました。

私は物語の構成と各章の終わりの一文に感じる事がありました。そのほとんどが、小説の最後に持ってくる一文のように美しかったです。途中からそれに気付いて、この章最後の一文が全体の最後に置かれていたとしても作品が美しく纏まる、締まると感心していました。“締まる”という言葉が最適ではなかったかもしれませんが、小説を書く人って最後の一文って必ずこだわると思うのです。それが各章で生まれていたので、この作品は全体が美しく仕上がっているのだと分かったのですよね。どうでしょうか? 私がこの本に感じた存在感の答えの一つはこれだろうと結論づけた所です。

それぞれの登場人物達が向き合ってきたそれまでと今回の事件によって明らかにされる場面場面が、その人物にとって人生の大きな岐路になっている程の出来事だろうという点、そして装丁からタイトルのフォントからひと通り制作過程のその作りを丁寧に仕上げている本としての完成度の点、章ごとに現われる最後の一文の特徴。私はこれらが、作品のテーマの重さを素敵さに変えて形作っていると、そう感じて、そう理解しました。そこがこの本の魅力になっていると思います。

美しい本をひとつ手にできたという喜びが今はあります。トラジェディー(tragedy)とは、一言で言うなら“悲劇”という意味ですね。後から調べました(^^); 。「未必の」と付いているので、本編に沿った素晴らしいタイトルだと思いました。その物語の仕上がりと本としての仕上がりが美しい本だと私が思う所以です。

そういうわけで、今回の文学フリマで出会えた本の中でも、私には「買って良かった」と思わせてくれる本になりました。ありがとうございました。

感想文の最後にこれだけは書いておきたいと思っていたことを添えたいと思います。

私が「未必のトラジェディー」を手に取ったきっかけは、ほんの少しだけの事でした。

その本は文庫本であったことと最終ページに「印刷所 OneBooks」と書かれていたのです。確かにその日、買ってみようとそういう気になった本はA6文庫本サイズでした。

(ページが少なくて安い物でいい。気軽に読むにはそんな感じのものがターゲット――)

そう言葉にせずに頭で決めていた私がいました。

私は自分でも小説を書いて製本するのが好きです。いくつかの経験から思った事は、少数の本を自らの費用で製本して販売するにはA6サイズはページが嵩むので割高になるだろうという点です。そこから安く頑張って販売している文庫サイズが気になったのかもしれません。自身の経験で、数年前まで自分のためだけの“世界に一冊の本”を製本したことがありました。カバーを付けて帯のオプションも可能ですが、その時に販売するには難しいと思ったものでした。その時に製本を依頼した業者は、私のと「未必のトラジェディー」で同じだったのです。偶然のきっかけでしたが、なにか嬉しいという気持ちになりましたもので。

仕事の傍ら、一週間ほどで読ませていただきましたが、とても有意義な時間でした。

私の感想です。
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著者の方の情報など書かれているリンクを見つけましたので、貼っておきます。是非どうぞ。オススメです (^^)/


★こんな内容ですが、最後まで読んでくださった方々、ありがとうございます。✨

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