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楽曲探訪:前田敦子「右肩」

いろいろ音楽を聴いてた時期のストック記事です。熟成下書きとしてアップします。

いい音楽は、いつ聴いてもいいですね。
私の心に響く音楽は、私の好きな美しいものが多いなと我ながら実感しました。(何を言ってるんだ、という感じですが…。)

それのひとつくらいの気持ちです。

「右肩」について

好きなんですよねー、「右肩」。
もう、すべてが好きです。好きっていうか、なんか心の深くに入って来るんですよね。

うまく言えないんですけど、あえて言うならなんかジブリの音楽みたいなイメージなんですよね。人の記憶や感傷にダイレクトに沁み入るみたいな、そういう感触があるんです。

日本の原風景的な。イントロが流れた瞬間、何とも言えないなんかあったかいものが頭に入ってくるんです。

サウンド的にはかなり一般的な感じなんですよね。私なりに特筆することはないかな、と思います。
少なくとも最近のAKBや乃木坂の曲ほどに凝ったアレンジはないですね。

でも、これと言って昔の曲っぽさもない。
それでいて、慣れちゃうとこの音以外考えづらいサウンド。
専門用語がわからないので、やっぱりエレクトーンなのかなとしか言えないんですけど。
いい音です。

とにかく郷愁を感じるメロディーと、情緒的な歌詞

先述した通り、とにかくイントロから脳に作用してきます。

想起されるのは7月下旬くらいの、夕方5時30分くらいですかね。イントロだけでそこまで情景が募ります。
イントロでめちゃくちゃセンチメンタルになるんですけど、私の中では意外とそのままのテンションでずっと行くんですよね。
サビで再度感動、みたいなのはないわけです。
ただ落ちサビに入ったら、日が暮れていって、「今」という次元に戻されて来ます。

““それぞれの空の下で
輝いてたあの頃 想うのかなぁ””

ここですね。と言った刹那。
この部分が好きです、と言おうとした次の瞬間。

今でも 2人は
一緒に 歩いてるみたいに…

うーん、ノスタルジック。心がちょっとキュってしますね。
ちなみに、このあとの歌詞は1番サビの繰り返し。曲に出てくる2人は、今どうなっているか明らかになっていないのがポイントですね。

想像の余地を聴き手に任せています。
この点は、また後で少し掘り下げます。

歌詞を見てみても、こんなに歌詞だけで情景を連想できて、想像させる曲ってなかなかないですよ。
だって、イントロ一瞬でどこか別の次元の7月下旬のいい感じの夕方に飛ばされるのに、曲の最後には現実に引き戻されるんですよ。

私はこの曲に感情移入して、どこか自分を投影してるんでしょうね。言葉にしづらい、不思議な感覚です。

感情移入のことを話すと、必然的に歌詞の内容の話になるんですが、これって一言で言えば「当時恋していた人と過ごした夏の日を振り返ってる」歌なんですよね。
歌詞では明確に「恋」というワードが出てくるんですけど。私はそこの恋っていう部分は置いといても、恋してるわけじゃないどこか大切な人を思い浮かべたりして、センチメンタルになったりするんですね。

いろいろな“境目”がなくなる曲

前項でお話ししたことを掘り下げつつ、私がこの曲について思っていることを書きたいと思います。
私が思ってるのは、この曲はいろんなふたりを表してる曲だなあ、って思うんですよね。

たしかに「恋」って入ってますけど、恋ってなんなんでしょうね。
いや、わかるんですけど、その恋とか、愛って境目が明確にありますかね。
私の中では、少なくともこの曲を聴いてる間ってそういう「境界」がわからなくなるんですよね。

おうちにいたら、大切な人のことを思ったり。
電車の中なら、おうちのことを思ったり。
そして、私の中にいる深い「じぶん」に想いを馳せたり。

別に恋とか関係なく。
まあおうちはもはや人じゃないですけど、そういうすべてを包み込む優しさみたいなものを、この曲から感じるんですよね。
恋とかを超越した、何かを感じるんです。

曲の内容を想像しながらそれと同時に感情移入していることで、心が一段階昇華したような。
不思議なんですけど、とにかく優しくて、あったかい曲なんですよね。
今も過去も未来も受け入れてくれるような、あたたかい曲だと思いながら聴いています。

境目がなくなると言えば、この曲の情景はいろいろな点があやふや、グラデーションになってます。

まず、昼と夜の間の夕暮れ。
過去と今。
ふたりの関係。
そして、聴いてる「わたし」のこの気持ち。

想像の余地をいっぱい残してることが、この曲の優しさや特有の雰囲気を作り上げているのだと思います。
曲に隙間を与えてくれてるっていうか。
そういうグラデーション的なやさしさに私は惹かれたんだと思いますね。

やっぱり前田敦子さんの声

やっぱり右肩は前田敦子さんの声があってだなと思います。
前田さんの声はとにかく特徴的で、耳に残りますからね。独特の高音です。

秋元康さんが、前田敦子さん用の曲として宛て書きして気合い入れて作ったんだと思います。さすがにここまで心に残る曲は普通にやってたら作れないですよ、きっと。

なんか、これぞ前田敦子と言えるようなそういうものを、楽曲として感じざるを得ないんですよね。
前田さんの持ってる不安定な感じとか、庇護感というか、名前のない彼女特有の情緒というか。
そういうどこか朧げな印象をこの曲全体から感じるんですよね。さすが卒業しても彼女のプロデューサーだなあって思いましたね。

まあでも、この曲って前田さんの音源もいいですけど、高橋みなみさんと二人で歌ってるのもいいですよね。


「あつみな」最高だな、ってなるわけです。

でも、生田絵梨花さんがソロコンサートで弾き語りしてたのも印象に残ってます。
本当に綺麗で胸に沁み入る歌声でした。
また生田さん、ソロコンサートしないかな。

つまり、歌い手を選ばない名曲。
歌声の綺麗な人や表現力が豊かな人なら、きっとしっとり聴かせるように歌い上げることができるのだと思います。

最後に改めて思った、心のこと

結局人って、何でも境目が安定するんですよね。
白か黒かなんてつけることって難しいし、選んだとしても、選ばなかった方を意識してジレンマを抱えることってあると思うんです。
言い方を悪くすれば、どっちつかずが正解なことって多々あるなって。

でも、そうやって生きてることって少なくないなあって思っちゃいました。
人って、0か1じゃないんですよね〜。
基本的に0.5のスタンスでいるか、場合によっては0.3や、0.7くらいが理想のことって心の中では多いよなあって再認識しました。

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