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「芽が出る、って信じたり」

農家も、学者も、ボディビルダ―も「信じる」ことが大切と言っていた。

文字通り、芽が出ない

少し前の話になるが、かれこれ一週間が経っても文字通り、唐辛子の芽が出ないという場面に陥っていた。

私も唐辛子の種まきは2年目になる。そのため、種をまいた段階から、頭では1週間以上の時間を要するかもしれないと理解してはいた。それでも、一週間もすれば、「まだ出てこないものか」と焦ってみたり、種たちを急かしたくもなってくる。なんならもはや新しい種をまき直さなければならないかもとすら思い始めていた。

「芽が出るって信じたり」

習慣として朝と夕に畑に出向くので、一日に二回も種をまいた畝を凝視している。7日目が過ぎようとする頃、そんな姿をいつも農業指導をしてくれている島のおばあちゃんに見られていた。

「自然相手やから、待つしかないな。芽が出る、って信じたり

電動バギーに乗って時速5㎞ほどで移動している彼女は、私にそう声をかけた。
彼女の言葉を聞いて、昔どこかで同じようなアドバイスをもらったなと思い出す。そして、素直に信じてみることにした。

マッチョ化する頭脳

昔、大学院でお世話になった先生が「知識なんて筋肉と同じだから、鍛えてりゃそこそこ大きくなるよ。だから、知識よりも『自分の研究には価値があるんだ』と思う気持ちが最終的には一番大切」と、どこか私を諭すように教えてくれた。

昨年に比べれば本を読んだりしたおかげで、唐辛子の栽培についても何かと知識は増えた。例えば、今年は種が発芽しやすい温度を保つために塩化ビニールでトンネルを作ったりしている。きっと今後も培った知識とやらを駆使しながら、新たな試行錯誤をしていくのだと思う。この意味で、私は年々頭がマッチョになっていくのだろう。

そういえば、昔、ボディビルにトライしているという方も、ボディビルで一番重要なのは「自分の筋肉を信じる気持ち」なんて言っていた。ボディビルでも最終的に必要なのはトレーニングではなく、信じる気持ちらしい。

芽が出るか否かは「信じる」にかかっている

知識はもちろん大切だ。知識がなければ、価値を説明できないし、なぜそのような行動に至ったのかを反省することもできない。

ただ知識だけを拠り所にしてはいけないのも確かだ。なぜなら、全てが知識通りに事が済むほど、この世はどうやら私に優しくないからである。たぶんそれは知識の巣窟である学者、自分の筋肉を信じているボディビルダ―、自然を信じるおばあちゃんにも同じことなのだろう。でなければ、学者は研究室から出てこないだろうし、ボディビルダ―もコンテスト当日に筋トレ本を熟読しているはずだからだ。おばあちゃんも農業書をいつも小脇に抱えている、なんてことはもちろんない。

筋肉も知識もある程度まじめにやっていれば、自ずと手に入る。ただそこから一歩先へと進める、つまり芽が出るか否かはもしかすると「信じる」という気持ちにかかっているのかもしれない。もちろんどれだけに知識に基づいて周到に準備しても芽が出ないなんてことも多々ある。だからこそ、逆に究極的には「信じる」しかないのであろう。

という私の雑念を知ってから知らずか、10日程して唐辛子は芽を出した。
いまの私は、自分自身を、
「この芽には私の信じる気持ちが宿っていると『信じたり』」
と励ましてやりたいところである。

~おわり~

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