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Episode 239 途端に臆病になるのです。

パートナーと過ごすことで時間を共有する意味や恋愛の喜びを知った私ですが、それは私の中の未知の領域に踏み込んでいく作業でもありました。
今まで何の不思議もなくそれが恋愛だと思い込んでいた第三者の物語が崩れ落ち、目の前には広大な荒野が広がっている感じです。
目標物であった物語という建物にはエピソードがぎっちり詰まっていて、それが賑やかに通りの両側を埋めていたのです。
砂上の楼閣ではあっても、私の常識を作り出す根拠でもあった「それ」が目の前から消えるということです。

遮るものが何もない荒野に放り出された私は、途端に拠りどころを失って臆病になるのです。
今まで自信満々で物語を「再生」していた私は、彼女との恋愛に迷うのです。
恋愛の先にある性愛が、共有する一体感を表現していると気が付いた時に、快楽を求める性欲とのバランスが保てない…。
男である以上、性愛には興味のある相手に性的な興奮を感じないとならないワケで、その男としての野生の部分を彼女に向けて良いのか分からない…。

決してそれまで付き合ってきた女性を蔑ろにしていたわけではありません。
表面的な物語の再生とは言え、キチンとしたおつき合いをしてきたつもりではいます。
ただ、重要な部分に気が付かず、機械的でチグハグな関係を作っていたのは間違いないとも思います。

さて…ひと目惚れの彼女を目の前にして、彼女との時間を共有する喜びを知って、それが恋愛だと気が付いて、その先です。
物語では、その先の性愛に導かれるのが一般的な流れ…一体感を求めるのがそれだとも気が付いたし、戸惑いながらも私もそれを求めているとわかっている…でも。

彼女はそれを求めているのか?

人の気持ちを考えて悩む…。
ASDであるという自覚は、当時ありませんでした。
社会人になってから…の話です。

旧ブログ アーカイブ 2019/5/11

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