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あやとり家族四十八〜亡き父との約束〜

死人に口なし

一人で暮らす寂しさを実感する毎日
友達に連絡をして一人でいる時間をなるべく減らすようにしていた

何のための一人暮らしだったのか
自由は不自由で、人がいないと孤独を感じる

対処法もわからない

みんなどうやって生活しているんだろうかと考えていた

介護の仕事は続けていて、仕事と家の往復
仕事があってよかったんだと思う

父が亡くなってからは、仕事をする意味ももうないし違う世界も見てみたいから辞めようと思っていた

だけど、亡き父と約束をしてしまったために仕事を続けた

帰国後に起こった事


留学先から勝手に帰ってきた私に父は言った

「お前は、挫折したんだ。途中でやめて帰ってきたことは挫折だ」

勝手に送り込んでおいて、”挫折”と言われたときには、正直父のエゴだと思った

そもそもの発端がすずちゃんのためだったのに
何で私が悪く言われなきゃいけないんだって

日本に帰国したのも祖母からの連絡があったわけで
私がそこまで責任とる必要もないし、言われることに理不尽だと思った

自分から何か挑戦したなら”挫折”で良いけれど
他人から”挫折”したなんて言われたくない

この言葉は理不尽と思いつつも、心に深く刻まれた
帰国後、一ヶ月間父から無視をされている間に
段々と自分が悪いと思うようになっていった

そのことを払拭するように、無視解禁後に父に言った
「私、介護の資格取るから」
「次は、資格取るまでやるんだぞ。これで取らなかったら人から信用されなくなるからな」

何という重い言葉を発するんだろう
この時の父は、癌で闘病中であり麻薬を使い痛みを抑えていたこともあって
言葉を直球で使うことが多くなっていた

自分ができない分、子どもに託す気持ちもあったのだろう
にしてもだ、勝手すぎる

父が亡くなってから、私は約束通り介護の資格をとった
当時は三年間介護職に従事すれば受験資格がもらえた

国家試験だということも知らなかった私は、一冊の問題集を買いただ読んでいただけ
今だったら絶対に受からない
もっと難しくなっているから

合格したことがわかると、父のお墓に報告しに行って言った
「資格取ったよ。約束は守ったから」

やっと言えた
三年間の呪縛からやっと解き放たれた
開放感でいっぱいだった





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