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同じ名を持つ君へ

昨夜、目覚まし時計を朝6時半にセットして寝たはずだった。

目覚まし時計がどこにもない。

電気もつかない。

スマホのライトを使おうとしたら、
なんとスマホも見当たらなくて。

見たこともない便箋と封筒が置いてあるのだ。

廊下や玄関、キッチンにバストイレ、全て電気がつかない。

使えるのは非常時のために、ベッドの下に置いていた、アンティークのランプ。
卒業旅行で買ったものだ。

着替えやメイクは不便だけれどなんとか支度をする。

慌てて着替えて用意をしていると
玄関のインターホンが鳴った。

ドアを開けると床に荷物が届いている。
差出人は...何語かもわからないし、読めない。

開けてみると、中身は

行灯、提灯、オイルランプ、ランタン、キャンドル。

そして真っ白な便箋1枚。

「なんなのよ、これ?」

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「え、マジで?うけるんだけど」

「笑い事じゃないよ。これなにも書いてないし」

職場で同僚と昼食をとっていると
同僚たちは吹き出す。

別の同僚がメガネをかけて紙を上に透かしながら尋ねる。

「ねぇ、これ炙り出しの手紙じゃない?」

一気に私たちの緊張感が増す。

同僚のライターを借りて注意深く紙を少しずつあぶっていくと、
やはり文字が表れた。

「...何語なんだろうね」

「あっ、これドイツ語かも!」

思い出した。
ドイツに卒業旅行した時に見た文字だ。

会社帰りにドイツ語の辞書と本を買い、家で少しずつ訳す。

差出人はリヒト。

「ヒカリさん、こんにちは。
お荷物は届きましたか?
快適な温かい灯りの暮らしを満喫してください。」 

リヒトとは一体誰なんだろう。
そして私はなぜ、リヒトからこんな仕打ちを受けているんだろう。

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何日、いや何週間 過ぎただろう。

マッチでキャンドルやランプなどに火を灯し、その光だけで生活するようになった。

最初は不便さに不満だらけだったのに
いつの間にか、ゆらめく温かい灯の中での生活が心地よくなっていた。

帰宅してから、1つ、1つの灯りを点していくことも苦ではなく
むしろ癒しになっていた。

そして、この生活になって
1つとても嬉しいことがあった。

部屋から窓の外を見た時の景色が
よりくっきりと綺麗に見えるのだ。

こんな生活も悪くないな。
そう思っていた。

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ふと見ると窓の外に人がいて驚く。

「ヒカリ、こんばんは。
リヒトはドイツ語で光。
僕は光の精です」

光の精だなんて驚きながら
ヒカリは、リヒトの話を聞く。

やっとスマホの自動翻訳が使えてありがたい。

「ヒカリ、以前は電気をかなり無駄で雑に使っていたね。
これはヒカリに電気の大切さを知ってもらうためのミッションなんだよ」

確かに、私、無駄に使っていたな。

リヒトがすっと指揮棒のようなものをくるりと回す。
元の通りに電気がついてあらゆる電化製品が使えるようになった。

「じゃあ、僕はこれで。
あと、ドイツ製ランプを今でも大切にしてくれてて嬉しかったよ」

帰ろうとするリヒトに、ドイツ語で
ヒカリは言う。

「私も、同じ名を持つあなたに会えてよかった」

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( 以上、1197文字)

今回、初めて ピリカさんのピリカグランプリに参加させていただきます。
前回開催時は、まだ小説を書いたことがなく、
度胸も出せず、でした。

その後、小説を書き始めて昨年は合計3本。
今回はようやく、なんとか〆切日ギリギリに
書き終えることができました。

ピリカさん始め審査員の皆さんも、
そして、応募される皆さんも本当に素晴らしい作品を書かれる方ばかり。

名前の ほしまる のごとく、
この企画に参加して、遠くからでも
盛り上がりの光に更に灯を点せれば幸いです。

ピリカさん、審査員の皆さん。
企画から引き続き審査とお手数おかけしますが
このような楽しい企画をありがとうございます☆


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