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【詩】反芻

椅子に腰かけると
小さな指の腹が背中をつついて私を呼ぶ

右に振り向くと
きゃっという小さな笑い声

戻って

左に振り向くと
すっと走り去る小さな影

右に振り向き
左に振り向き

楽しそうに笑うものだから

右に振り向き
左に振り向き

いつまでも見つけられないふり
今ではもう、そんなもので君は笑わないけど



ふと椅子に腰かけると
小さな面影が背中をつついて私を呼んだ気がした

あの日の笑い声が
私の両耳に戻ってくる

さて、どちらに振り向こうか

幼い思い出が背中のほうで
見つけてほしそうに
振り返るのを待っている




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