【詩】ピアノの木
白鍵と
黒鍵と
それらがずらりと並ぶ八十八の玉座
そして
沈んだ鍵(けん)の窪みから
人の姿に似た木が芽吹く
ピアノから生まれた木は
母なるピアノに還るべく
八十八の玉座を尋ねる
その軌跡を律とし
隠されたパターンを解き明かした時
かの扉が開くのだ
そして
浮かんだ鍵(けん)の頂から
人の姿に似た木が還っていく
私の耳に残った響きは
その生命の旅路
私の心に残った響きは
その生命の循環
耳と心の間で反響する彼らの行方を知らぬまま
その見聞録を集めては
彼らの姿を追い求め
読み耽る
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心惹かれる演奏を聴くと、ピアニストがピアノを弾くのではなく、ピアノからピアニストが生えてきているんじゃないかという錯覚に陥ります。
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