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〜時計〜①
「見てっ!止めちゃった♪」あたしは自分の腕に付いていた時計を外し、そして俊(シュン)の部屋の置き時計を抱えると電池をぬいた。
「・・・・・・ありがとう」そう言った俊は悲しそうに笑った。
知ってるよ、さっきから時間ばかり気にしていること。時間というものに、いつだってあたし達は怯えてしまうんだ。そしてそれにいつだって引き裂かれる。
「じゃあ今日はずっと一緒にいられるね・・・♡」そう目を輝かせている俊のことを直視出来ない自分がいた。
「嘘だよ、そんな悲しそうな顔しないで」そうあたしの顔を覗き込む俊の首に自分の腕を回すと「ごめんね」と呟きながらキスをした。
目を開けると、あたしが電池を抜いた置き時計が目に入り10時半で止まっている。止めたはずなのにその時計を見るだけで苦しくなる。
そう、あたし達はしてはいけない恋愛をしている、あたしは旦那と子供たちの元へ戻らなきゃいけない、どうしても。
分かっていた・・・。
この恋愛の終わりがハッピーエンドじゃないことくらい、いつか終わりが来てしまうことも・・・。それでもあたし達は必死に繋がっていたんだ。毎日、ギリギリのところで。
「マジでこのまま、さらってしまいたい」
俊の言葉が胸に突き刺さる。それは決して冗談じゃないことくらい分かってる。「俊っ・・・」思い切り抱きつけば力いっぱい抱きしめてくれた。「冗談なんかじゃない、本音だよ」そう小さな声でつぶやいた俊の顔をもう見上げることは出来なかった。
いつだって、2人を引き裂く・・・
幸せな時をどんどん縮めていくんだ。
でも今は・・・時間が過ぎることに怯えることなんてない。逆に1日24時間じゃ足りないー!なんて喚いたりもする。でも、たまにやっぱりあなたを思い出すんだ・・・
時計が10時半をさすたびに。
俊・・・・・・?
あなたを思い出してしまうんだ。あの時のまま俊とは幸せなトキで止まったままで・・・・・・。
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