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2021年11月の記事一覧
Knight and Mist第八章-3 魔族
ーーひやり
不意に背筋から耳にかけて怖気が走る。周囲が嫌な空気に支配される。
ゾクっとする違和感。誰もいないはずなのに独りじゃない気がする気味の悪さ。
沈黙が耳鳴りのように感じられる。
バッと振り返るが、何もいない。
「俺がいたらまずいのかい?」
だしぬけに耳元で声がして、ビクッと振り返ると、すぐ横にユーウェインが立っていた。
藤色の髪の男で、柔和な雰囲気ではあるがこっちは正真正銘の
Knight and Mist八章-2深峰戒という男②
「はあ、ややこしい性格ね」
ハルカはこめかみあたりを押さえながら、魔族の権能を持つという日本人の男ーーオーセンティック(自称)を見つめた。
この男が何を考えているのかさっぱり分からない。
お前は何者か、と問いながらハルカの名前を知っているし、それどころかセシルとも知り合いらしい。
それどころか、ハルカとセシルには何かしらの絆があるというのだ。
それを利用してどうやら絶望を楽しみにしている
Knight and Mist第八章-1 深峰戒という男①
「あらためて名乗ろう。私の名前は深峰戒。魔族だ、というよりは、魔族の権能を有する、と言ったほうが正しいな」
トンネルのようにループした空間に佇む男ーー深峰戒と名乗った男が不敵に笑い言った。
謎の空間に囚われ、魔導士たちに謎の実験をされそうだったところ、魔族が現れなんとか助かったものの、脱出に手こずっていたーーそんなときだ。この男が現れたのは。
背が高くシャンと立つ神父服の男。
顔には笑みが
Knight and Mist第七章-8 それでも囚われの身
「ダメだ、見つからない……」
がっくりしてハルカは言った。
実験室のような部屋で。中央には手術台のようなもの。明かりは魔導の灯りだけ。ループする部屋から脱出しようと、ハルカは出口を探して棚や壁を調べていた。
次第に額に冷たい汗が流れ始める。
視線を移せば足下には死体が転がっている。
ここから出られなければ、自分も死ぬのだ。このひとたちのように、誰にも知られることもなくーー
ざわざわとし
Knight and Mist第七章-7 鷲獅子心の剣
物々しい武器が床に散らばった実験室にハルカはおりたった。
自分のいた台は真っ黒になっている。ベルトは千切れ、それを光の球が照らしている。
空間を切り裂き、ハルカが出てきたのはちょうど薬棚のあたりだ。
自分の繋がれていた場所をしげしげ眺めたあと部屋をみまわすと、すでに魔導師三人が事切れているようだった。
音もなく静かだ。
トゥム博士は全身が真っ黒になり、首から先がなかった。
ハルカは慎重