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KnightandMist

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たぶん小説になる予定。今書きためているところです。 あらすじ 浪人し、就活も失敗し、あとがない主人公浅霧遥香。 そんなある日、彼女に異変が襲った。 それは今流行りの異世界転生…
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2021年5月の記事一覧

Knight and  Mist第四章-3聖堂にて①かくかくしかじか

Knight and Mist第四章-3聖堂にて①かくかくしかじか

砦の頂上にある聖堂に一同が会し、おのおの自己紹介するはこびとなった。

なぜイーディスがいるのか?

エルフたちはあれからどうなったのか?

気になることはやまやまだが、まずは話を聞くことにしたハルカであった。

「では私から」

最初に口を開いたのはリルさんだ。

「この砦を預かる身、聖騎士のリリー・ホワイト。みなさん、喧嘩など騒ぎを起こしてレティシアを困らせないように。次、レティシア」

「え

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Knight and Mist第四章-2焔の騎士イーディス

Knight and Mist第四章-2焔の騎士イーディス

「イーディス!?」

思わぬ人の登場に素っ頓狂な声を上げるハルカ。

「ああっ!?」

それに対してめちゃくちゃ機嫌の悪そうなイーディスの声がした。

「キンキンした声で叫んでんじゃねえ。ったく、っせえな」

三白眼でギロッと睨まれる。

「てか誰だよテメェ!?」

「え、えっと、あの……」

凄まれてレティシアの背中に隠れるハルカ。

(やっぱりこの人相手に名乗れる名前なんてない……!!!!)

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Knight and Mist第四章-1 死闘の果て

冷たい感触がして、目が醒めた。

「あっ、ダメでしたか?」

柔らかい日差しがハルカの顔にかかる。

「もう峠は越えました。死の槍の毒も抜けましたから、もう大丈夫ですよ」

全身が怠い。ハルカはなんとかして自分の状況を理解しようとした。だが頭が猛烈に痛い。

「あの、わたしです。レティシアです。わたしが分かりますか?」

ハルカはわずかに顔をあげ、眩しい金髪の美少女を見上げた。心配そうにしながら、

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Knight and Mist第三章-8騎士誕生

Knight and Mist第三章-8騎士誕生

「こっちだ! こっちにエルフの工房がある!」

気づけば館にまで炎が迫っている。煙の中をスループレイナの貴族が先導し、ハルカとセシルは走っていた。

はじめての戦場、この世界に放り出されたときのあの光景を思い出す。

いつの間にか周囲はエルフだけではなく、鎧を身につけた人間たちがたくさん現れていた。

彼らがいたるところに火をつけてまわっているのだ。

走っているうちに、エルフの死体と、その倍以上

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Knight and  Mist第三章-7 大いなるもの

Knight and Mist第三章-7 大いなるもの

グレートマザーにグリフォンの羽根をあずけ。

不安な気持ちのまま一夜明けて。

ハルカたちは素晴らしい朝食を振る舞われたあと、エルフたちに囲まれて、例の大樹のある広場に集まっていた。

緊張感ただよう空気。

とげとげしい視線と、ハラハラ見守る視線がエルフたちのあいだで行き交う。

特にヒッポグリフを盗もうとしたスループレイナの貴族が出てきたときは、一層とげとげしいものとなった。

だが敵視されて

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Knight and Mist第4章-6 ふたたび湖畔にて

ーー虫の声。

ふう、と息をつく。

「いったいなんなのーー」

ひとり湖畔に立ち、ポツポツ灯る不思議な灯りを眺める。

熱気から解放され、気持ちの良い風が渡っていく。

「ずいぶんと気に入られたようですね」

背後から草を踏み分ける音とともに近づいてくる声があった。

ハルカはパッと振り返った。

「セシル! 探したんだからね!」

「寂しかったですか?」

ニコッとするセシルに、

「ひとあし

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Knight and  Mist第三章-5 長老のはた迷惑な観光案内

Knight and Mist第三章-5 長老のはた迷惑な観光案内

「そして賢者イグノークがこの大広間を訪ね、ここを『大きな図書館とする』と言ったのだ。彼にはその限りなく美しき図書館の姿が見えていた……まだ見ぬ図書館の完全な姿がな。彼は歴史家でもあった。彼はエルフで1番の彫刻家を選び出し、そしてーー」

「あ! の!」

やっとのことでハルカは長老の止まらない話に割り込んだ。

あれから小一時間ほど。

ハルカは宴に参加するでもなく、エルフの館ツアーに強制参加させ

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Knight and  Mist三章-4噂のあの人

Knight and Mist三章-4噂のあの人

ーーーー音楽とざわめきが聞こえ、ハルカは目を覚ました。

虫の声と風の音に混ざって人々の笑い声が聞こえて来る。

ずいぶんと寝てしまったらしい。お腹は空いていたが、すぐに宴に出る気にならず、ハルカは湖のほとりの方へと歩いていった。

よい風が吹いていた。

ハルカはその静寂と風を楽しんだ。

「宴にも出ずに湖や森を眺めているとは、そこに世界の神髄をみるからかな? それとも人と距離を置けるからかな?

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