5月の風

読んだ本や映画の感想を書きます

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最近の記事

パンとサーカス

最初図書館で借りようと思って「パンとピエロ」と検索してヒットしないので諦めて買って読んだらパンとサーカスだった。朝日新聞で鴻巣さんが書評してて読みたくなって。 暑さ5センチの本だけど一気に読めた。東京新聞で連載されてたというので納得。世直しのためなら殺人も許される?「罪と罰」を補助線にしているという鴻巣さんのコメントにも納得。 CIAと日米安全委員会によっていいように搾取されている植民地日本。そこから抜け出したとしても次は中国の属国になるだけ。みたいな話が面白く書いてあるんだ

    • 深い河 ディープ・リバー

      「深い河」とはなんだろう。なぜわざわざディープ・リバーと添え書きされているのだろう。 いろんな宗教や宗教的なものが空気のように軽く薄く入り混じっている日本で、敬虔なクリスチャンの家に生まれるというのは結構しんどいものではあるかもなあ。 私の実家は真言宗。祖母は晩年からクリスチャンだったが、早世した夫と同じお墓に入っている。母の実家は神道。夫の実家は浄土宗。どれも排除せず、共存している。 玉ねぎとはどういうたとえか。人参とはどこが違うのか。 深い河とは、直接的にはガンジス河

      • しょぼい起業で生きていく

        雇われなくても生きていくための、しょぼい起業の秘訣。メモ。 お金をかけずに始める。今あるものを資本化する。固定費を極限まで減らす。そうすれば転んでも起き上がれる。むしろ失敗から学べる。 とりあえずリアル店舗を開け続けよう。動きをつくろう。タダのものを置いとけば黙ってても人は寄ってくる。発信し続けよう。店さえ開けとけば、勝手に協力者が現れる。 ただでもやってくれる人を活用する。(誰でも自分の能力を発揮できるなら喜んでただでもやってくれる。) カレーを売るか、シャンパンを

        • 82年生まれ、キム・ジョン

          韓国で2016年に書かれた本。100万部突破!と書いてある。 82年といえば私が大学に入ったころ。男女均等雇用法が施行されたのが85年で、就活の時に講堂に女子が集められて「できる」先輩の話を聞いたことを覚えている。遠い昔のゆるい学生時代(この小説の中ではレトロと呼ばれている)。。まだお見合いとかもあったし、均等法が施行されたといっても「寿退職」とか、お茶汲み・コピー取りとか、男子募集とか、普通だった時代。 その後、時代はどんどん厳しくなった。バブルをはさんで・・。 韓国

          ミシンと金魚

          久しぶりに一気に読んで書く気になった。 私も母を介護していて、その母が語っているように思えて身につまされた。 境遇はまったく違うのだが、老いて、からだが言うことを聞かなくなって、気持ちだけは昔と同じなのにできたことができなくなり、身内に(密かにいつまでと)ため息をつかれ、デイサービスのスタッフはあくまで冷静で優しくて、本人の言うことはしばしばトンチンカンで・・。 外からみるとそんな母が、内面ではそんなふうに思ったり考えたりしているのかと思うと、かあいそうでせつなくて、か

          ミシンと金魚

          〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。

          2022.3.1 この方は、宇宙物理学の大学院を卒業後、組織に属してその組織の期待に応えて何かをすることを求められることが苦しくなってやめて、このサービスを始めた。サービスといっても仕事でもボランティアでもない、「海外旅行に行くような」娯楽として。 「一人分の存在」だけを無料で(交通費のみで)レンタルするサービス。何もしない。そこにいるだけ。 例えば、「やる気が起きない仕事ができるよう、何もしなくていいから部屋に座っていてください。」「山手線に朝から晩まで一緒に乗ってい

          〈レンタルなんもしない人〉というサービスをはじめます。

          ちからもちのおかね

          2022.2.27 力持ちの「お金」ではなかった。「おかね」という名前の力持ちの女の子。 かわいいとも美しいとも心優しいとも病気がちともかわいそうとも書いてないよ。 高知県で今も好んで語り継がれている民話。かっこいいはちきんの物語! 「わたしがテピンギー」も同様。かわいいとも美しいとも心優しいとも病気がちともかわいそうとも書いてないよ。 こちらはハイチのテピンギーという女の子が頭を使って仲間と協力して運命をはねのけた痛快なお話。 偕成社から出たばかりのステレオタイ

          ちからもちのおかね

          クレッシェンド 音楽の架け橋

          2022.2.28@シネマクレール パレスチナ人とユダヤ人。ドイツ人とユダヤ人・・。 圧倒的な不条理、圧倒的な不平等の上に立って、人は心から協力しあえるのだろうか。 YES or NO?  何度も何度も指揮者は尋ねる。平和を望むか?音楽家になりたいのか? それは未来。 過去は変えられなくても、過去は憎しみでしかなくても、今(現在)は、未来のために選択することができる。 音楽は、そのため(平和のため)にあるわけではないけれど、ないのに、 その曲は、人間が作ったは

          クレッシェンド 音楽の架け橋

          屋根の上に吹く風は

          2022.2.24@シネマクレール 鳥取県智頭町にある新田サドベリースクールの1年を追ったドキュメンタリー。 ここ、いつだったか訪ねて行ったことがある。その時は別の方がスタッフだった。子どもの数ももっと少なかった。森のようちえん「まるたんぼう」もその時見学したなあ。 自分が子育てをしている時は、オルタナティブな学校を探すなどということは考えつきもしなかったから、我が子で痛い勉強をしたあとではもうほんとに遅きに失していたけど、それでもどんな学校があり得るのか、知りたかった

          屋根の上に吹く風は

          イエスの幼子時代

          2022.1.20 そこは過去を捨てた人がたどり着く場所。着いたときには過去の記憶は失われている。過去があったはずだとはわかっているが、思い出すことはできない。 名前も新しくもらう。言葉は新しく習得しなくてはならない。 そこでは、生きていくのに必要なものは質素だが無料で手に入る。怖い思いもしないし、人々は総じて親切で穏やか。 欲というものが少ないので、人より抜きん出ようとか、もっと効率的にやろうとか、性欲も(特に女性は)あまりない。必要な場合は、公営の処理施設に行けば

          イエスの幼子時代

          翻訳教室

          2022.1.30 これは翻訳家の鴻巣友季子さんが、母校の小学校6年生に行った「ようこそ先輩」の授業の記録です。 翻訳で大事なこと。 ・想像力の壁を超えて、相手の気持ち(立場)に限りなく立とうとすること。 ・よく読むこと。(書くより大切。)的確に読むことができれば、自ずと訳は読みやすくなる。=能動的に読むということ。 翻訳とは、いったん相手の中に入り、また自分に戻ってくる作業。自分の人間性が試される。 何かちょっと神経を逆撫でするような本、違和感のあるような本を読

          ある男

          2022.2.1 初めて平野啓一郎の本を読んだ。めちゃ謎めいておもしろかった。 人はその過去があるから愛するのか。 自分は中身と殻でできていて、中身も殻も、誰かと取り替え可能なのか。 自分が愛し愛されているのは、自分の何をなのか? 自分の中身はどこからどこまで? いろんな問いが渦巻く。

          ヤンキーと地元

          2022.2.3 すごいの一言。 研究のため、大学院生が中学生の暴走族のパシリになる。そして10年間、パシリの立場で彼らと関わり続ける。 できないよ〜!! なんでそこまでするの? 私の予想。打越さんは、自分自身を(下駄を履かせてもらって今の位置にいる)借り物のように感じていて、裸足で生きている彼らについて、自分も裸足になって知りたかった、裸足になって一緒に走りたかったんじゃないかな〜。 そうやって、沖縄に生きる彼らの生身の姿を(誰も知ることができなかったはずの)、

          ヤンキーと地元

          1984年

          2022.2.8 とにかくこの私にとっては分厚い本を最後まで読み切ったことは自分をほめてあげたい。(途中のゴールドスタインの教書(?)は飛ばしたけどね) 初めてどういう話かわかったわ。全体主義と独裁制の違いもわかっていなかった私です。 全体主義はおそろしい。どうやって、「普通の」知性がそれに組み込まれていくのか、ということが不気味なリアルさで書かれていて、洗脳こわい、拷問こわい・・・!!! 途中に出てくる言葉だけど、「権力を維持する『方法』は理解できるが、その『理由』

          生贄探し

          2022.2.8 この本は、FBで知ったこの文章に感銘を受けたので読んでみたんです。 「聾者は障害者か」(「全国高校生読書体験記コンクール」)https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2022/01/story/story_220125/ 作文は、聾者は障害者ではないと言います。障害者なんていなくて、少数民族なだけだと。そう思ったきっかけとなったのが、この本「生贄探し」です。 なぜ人は人の幸せを見ると嫉妬するのか?人の不幸

          生贄探し

          うしろめたさの人類学

          2022.2.9 そういうわけで、ずっと前に買った本だけど、何にも覚えてないんだからもう一度読んでみようかと思ったわけ。この本も上間陽子さんの「海をあげる」の続きでなぜか読む気になりました。 著者によれば、人類学とは、A国(地点)とB国(地点)を何度も行き来することで見えてくる「ズレ」から、社会をよりよくするヒントを考える学問らしい。 かつて若者だった著者は、1年休学して、エチオピアの寒村でフィールドワークをした。(といってもそこで村人と暮らし、ぶらぶらしているだけのよ

          うしろめたさの人類学