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HORSE FROM GOURD

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#novel

溶ける呪い

溶ける呪い

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 神戸で大学生をやっていた頃の話だ。

 男が料理するのは、黒魔術みたいに手の込んだ煮込み料理だけ。

 誰かがそんなことを言っていたことを思い出しながら鍋をかき混ぜる。確かにそうかもしれないな。逆に言えば、手の込んだ料理「だけ」を作る女はいない

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Bandwagon

Bandwagon

※縦書きはこちらから https://drive.google.com/open?id=1LUkvxTS1aajhL3l3prJxNNFiaQFXUYG8

「なあ、覚えてるか」と、助手席に座るギターが言った。「俺ら最初、バンド組もうって言うて集まったんやで」
 車内に沈黙が降りる。
「ああ」と、運転席に座るドラムが返事する。「そういえば」
「もう十年ぐらい前ちゃう」
「十年」とドラムが噛み締める

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teeth mark

teeth mark

 朝起きて顔を洗っている時、奇妙なことに気がついた。右頬に、くっきりとした歯型が浮かび上がっているのだ。
 指でなぞってみると、それは確かに立体的に窪んでいた。小人たちが、遺跡の発掘調査をしている最中みたいな痕跡だった。

 もちろん誰かに噛まれた記憶はない。夜中、知らない間に僕を噛みに来るような知り合いも知り合いの犬もいない。
 それは深くくっきりと刻まれていて、しばらくは消える気配がなかった。

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Archive

Archive

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 雨なんて一滴だって降らない夏だった。学生会館の空き缶捨ては、僕たちが生協で買ったビールの空き缶で埋め尽くされた。とにかく何かを考えて、計画的に実行に移すということが面倒な時代だった。漫然と流されることが簡単で、上手く生きるための唯一の方法である

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点と線

点と線

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 雨ざらしになっている、もう使われていないバス停のポールの辺りから、何やらもやのようなものが立ち上っているなあと思って目を凝らしてみると、それはもう七年も前に死んでしまった妹だった。
「てんちゃん」
 生前の呼び名で呼ぶと、妹は私の方にまっすぐ向

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Picky Eater

Picky Eater

 旅の長さに比例して、それだけ多くの料理屋、レストランに一見さんで入ってきたことになる。しかしそれに比例して色んなものを食べてきたことになるかというとそうではない。

 旅の理由は、時間が余りに余っていたからとか一箇所に留まっているのが嫌だったからとか色々ある。もちろん、見聞を広めたいというのもあるにはあった。しかし、どうも口に入れるものだけは、それまで食べたことがあるものや、食べる前からある程度

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Nausea

Nausea

 頭痛や吐き気に悩んでいる人を元気付けるために、自分の話をすることがある。自分の頭痛がすっかりおさまった時の話だ。

 曰く、人工的に地震を発生させることの出来る兵器がこの世界には既にあるという。かつて目を血走らせてそう教えてくれた会社の同僚がいるけど、どんだけ莫大なエネルギーが要るんだよ、と思って信じていない。世界を亀と象が支えているとかなら、まだ在り得るかもしれない。指で突いたり、餌で誘ったり

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Gas

Gas

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この冬、山形県で一番寒い日のことだった。
 地下室で作業していると、「ハロー」と声がした。声の方を見やると、ガスメーターがこちらに向かって笑いかけている。

 その日は朝から頭痛がしていた。色味の強い夢を見たのだ。人も風景も青紫色で、影は全部赤色

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壁と輪

壁と輪

 蛇を追いかけていたら、それよりもひと回り大きな蛇が脇から現れて、追いかけていた蛇を丸呑みにしてしまった。麺をすするみたいに、細長い蛇はつるりと吸い込まれていった。
 丸呑みした方の蛇は、満足そうに林の奥へ逃げていった。あまりの突然のことに驚いた私たちは、ただ立ち尽くすしかなかった。
「せっかく良い物語が開けそうだったのに」
 私は、そのうわばみの背中に、一本黒くて長い縦筋が入っているのを目に焼き

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螺旋

螺旋

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 背中がむずむずするような暑い夏の日だった。洗濯機がすすぎと脱水の行程を残して動かなくなった日、私はコインランドリーで洗濯物を回していた。何もかもが面倒になり、家着のままぐるぐると回転する洗濯物を見つめていた。

 コインランドリーの中は当然

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