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相手がサブメンバーなら勝てるのか。(日本対コスタリカ)

残念ながら、昨日行なわれたワールドカップのコスタリカ戦、日本は敗北を喫した。

決勝トーナメント進出のために、最低でも「引き分け」で勝ち点1を取りたかったところ。チャンスを生かせず零敗。ドイツ戦で歓喜した人たちも、改めてサッカーの厳しさを味わったことだろう。

日本が敗退した直後、何名かが「スペインがドイツに勝つと、決勝トーナメント進出が確定する。体力温存のためにサブメンバーを出してくるから、日本は有利に戦える」という趣旨の発言をしていた。(結果的にスペインはドイツと引き分けたので、決勝トーナメント進出のためにスペインも確実に勝利を狙ってくることが確定したわけだが)

どうしても僕は、先の発言が頭に引っかかって離れない。

相手がサブメンバーなら、日本は勝つ可能性が高まるのだろうか。

サブメンバーが、主力より総合的に劣るのは確かだろう。だがそれ以外の諸条件は同じではない。体力は有り余っているはずだし、何なら主力の座を奪おうと躍起になるはずだ。しかも「負けたら敗退」のようなリスクもない。守りに入らず戦いに臨んでくる相手は、もはや脅威でしかないはずだ。

そういった情緒的な感情を抜きにしても、そもそもサブメンバーのデータは不十分だ。主力メンバーが相手であれば、本戦における選手の好不調や戦いのパターンも把握できる。把握できるからといって勝てるとは限らないが、データ不十分な状態で、現代サッカーで勝利するのは博打でしかない。

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ワールドカップ開催と並行して、積読していた『THE REAL MADRID WAY レアル・マドリードの流儀』という本を読み始めた。

15〜16年、16〜17年、17〜18年と、UEFAチャンピオンズリーグで3連覇したレアル・マドリードは、サッカーファンでなくても知られる存在だ。グローバルで成功を収めているチームゆえに、言うまでもなく、選手は勝利を義務付けられている。

本書で、レアル・マドリードにとっての「勝利」の考え方が記されていた。

レアル・マドリードのコミュニティにとって、「勝利」はすべてではない。この概念は、「なんとしてでも勝つ」「結果がすべて」という考え方や、データ分析を優先した選手起用、はたまた「当面の勝利」のために才能と同時に「問題」も抱えた選手を獲得する「リスク覚悟のギャンブル」とは対極をなす。レアル・マドリードのコミュニティの基準と要求は、それとは別次元にある。彼らがチームに求めるのは、コミュニティの価値観と期待をピッチ上で体現すること。つまり、勝利にもチーム哲学、品位、流儀、エレガンスを求めているのだ。コミュニティの理想は「勝者たれ、紳士たれ」。試合に負けたとしても、チームは最後まで戦う姿勢と威厳を貫き、コミュニティの期待に応え続ける。

(スティーヴン・G・マンディス(2018)、『THE REAL MADRID WAY レアル・マドリードの流儀』東邦出版、P56より引用、太字は私)

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先の発言をした人たちも、悪意があったわけではない。そもそも日本代表メンバーは、誰ひとりとして「サブメンバーなら勝てる」という考えは抱いていないだろう。

観客である僕たち一人ひとりが、日本代表に何を望むのか。

昨日の敗戦は、そんな原点を問い直す機会でもあるような気がしている。

ラッキーでも何でも、技術的な進展がなくても、勝てばOKなのか。そんなことは、きっとない。メンバーがひたむきにピッチを走り、フェアに球際を争いながら、全力で勝利に向かっていること。そういった姿勢が見えるからこそ、観客は日本代表に熱狂するのではないだろうか。

東京オリパラのゴタゴタや、田嶋会長の人権問題に対する発言など、スポーツそのものをピュアに楽しめる状況でないかもしれない。日本代表が勝って全てがチャラになるわけではないけれど、やっぱり、日本代表が頑張っている姿は励みになるわけだから。

サッカー日本代表のミッションやバリューは何か。そんなことを観客とともに考えることができれば、日本におけるサッカーの価値もグンと上がっていくように思うのだ。

──

わいわいと書きましたが、最終節に、決勝トーナメント進出が決まるという展開は悪いことばかりではありません。

ドキドキするし、ドイツ戦のような「熱狂」を再び味わえるかもしれません。しかも相手はスペイン。日本がどんなサッカーを見せてくれるか楽しみです。

*追記(12/2)*

『THE REAL MADRID WAY レアル・マドリードの流儀』の感想を、僕が運営しているPodcast「本屋になれなかった僕が」でも配信しました。良ければ聴いてみてください。

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