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図書館ウォーカーがオススメする「旅のついでに訪ねて欲しい図書館」10選最新版(写真つき)

「図書館ウォーカー」を名乗って、全国各地の旅先の街で地元の図書館を気ままに訪ね歩いています。

その様子は青森県津軽地方で発行されている新聞「陸奥新報」の連載(最終週以外の毎週火曜日掲載)として2019年11月から旅エッセイの形でつづっており、今年の1月20日には掲載済みのものから66回分をセレクトし加筆訂正したうえで書籍化しました(電子版もあり)。

まえがき

10数年近く前からこの「図書館ウォーカー」という旅の楽しみ方を趣味にしてきましたが、つい先日訪問済み図書館のデータを整理していて、計400館以上になることが判明しました。400以上の図書館を訪ねたということは、同じ数の街を歩いたということになります。

図書館ウォーカーの楽しさの一つは、鉄道駅やバス停などの交通拠点から図書館までの道すがらにゆっくりと街の様子を楽しめるということです。このような旅のやり方になっているのは、僕が車を運転できないので移動がほぼ公共交通と徒歩に限られるため。また、図書館は立地が博物館や美術館のように観光客向けではないので、その街の日常が感じやすいということもポイントです。

前置きが長くなりました。コロナもまだまだ油断はできませんが、とりあえずようやく旅をまた気軽に楽しめる状態に戻りつつあります。少しずつですが。

これからの旅を頭に思い描いてわくわくしている方もたくさんいらっしゃるでしょう。というわけで図書館ウォーカーのオラシオからオススメの図書館を10館ご紹介したいと思います。セレクト基準はだいたい次の通りです。

1)駅やバス停からの街歩きが楽しい
2)図書館内からの、または周辺の眺めが良い
3)その地域でおいしいものが食べられる
4)デザインが面白い
5)館内が過ごしやすい

必ずしも上の5つ全てに当てはまるわけではないのですが、このような条件をもとに選びました。あと、以前書いた↓の記事および書籍「図書館ウォーカー 旅のついでに図書館へ」で選んだ館は外した最新版になっています。

ちなみに図書館ウォーカーは「図書館評論」ではないので、必ずしもこのセレクションが「図書館としての良し悪し」を評価したものではない、ということをお断りしておきます。と言うかそもそも「旅行で訪ねたくらいの短時間でその図書館の良し悪しなど判断しようがない」から「わからない範囲内で楽しもう」という考えのもとに書いているのが図書館ウォーカーです。

また僕は元図書館員で、「館内を撮影したい」という申し出に対する対応の難しさをよく知っているので基本的に館内撮影はしないという方針を採っています。賛否両論あるのは知っていますが、この方針に物足りなさを感じる方は実際に訪ねてみて、撮影することを少しの間だけ忘れてご自分の目で楽しむことをオススメします。

では参りましょう。図書館ウォーカーがオススメする「旅のついでに訪ねて欲しい図書館」10選最新版です!

旅のついでに訪ねて欲しい図書館10選

利尻町交流促進施設どんと郷土資料室(北海道)

入口からは利尻山が見え、ほんの少し歩けば礼文島を望める海も。飲食店や書店なども立ち並ぶ利尻島随一のコンパクトシティエリア沓形にある複合施設1階。郷土資料室という名前ですが、中は立派な図書館。展示なども頑張っています。
個人的にオススメは道の向かい側にある「利尻ふれあい温泉」。海が眼前に見える露天風呂やぬる湯の源泉が楽しめるんです。
利尻島には2つの自治体があり、計4つの図書館があります。どれにもそれぞれ特徴があり、街の様子も違うので島の図書館めぐりも楽しいと思います。島は円形で道路が一周しているので、宗谷バスを使って島めぐりが楽しめますよ。

利尻町交流促進施設どんと
礼文島がこんなに近くに!
沓形の街と利尻富士

利尻島内のもう1つの自治体「利尻富士町」が、利用条件はSNSなどで発信するだけという超ハードルが低い「ワーケーション・お試し暮らし事業」というのをやっていて、安価な費用で長く島に滞在できます。

アクセス
宗谷バス利尻線沓形バス停から徒歩5分。または礼文島から6~9月限定のフェリーで沓形港に到着後徒歩10分

北秋田市阿仁公民館図書室(秋田県)

秋田内陸循環鉄道のメイン駅の一つ「阿仁合」周辺の小さな街にはなんと、3つも「図書館的空間」があります。そのうち正式な図書館はこの図書室1つだけです。さらに駅の観光パンフレットの棚には北秋田市図書館各館情報が載った利用案内も置いてありました。鉄道駅に図書館の利用案内を置いてある例は、僕はここ以外知りません。
グーグルマップで調べると阿仁合駅から徒歩5分くらいと出るのですが、これはトラップでものすごい上り坂が待っています(笑)でも敷地内からの眺めは絶景ですよ。
阿仁合駅舎内には古くから営業している食堂「こぐま亭」があり、阿仁合産の味噌などを使った料理が楽しめます。またお土産が所狭しと並べられたショップもあり。そして駅2階には休憩所も兼ねたブックスペースや広々したワーキングスペースもあるのです。ここが2つ目の図書館的空間。
そして3つ目は駅前の通りにある小さな無人書店。ここは無料の貸本もやっているんです。小ぢんまりした阿仁合の街ですがとてもお寺が多く、短い街歩きが充実したものになると思います。

桜の向こうに阿仁公民館
阿仁の街並み
無人書店&無料貸本屋「阿仁合の本やさん」

アクセス
秋田内陸循環鉄道阿仁合駅から徒歩10分ほどの阿仁公民館内

小国町おぐに開発総合センター図書室(山形県)

2023年4月現在、大部分が不通区間となり代行バス運行となっているJR米坂線。沿線の半ばあたりに位置するのが小国町(おぐにまち)です。山間にある豪雪自治体で、街の中心部をやがて日本海にいたる荒川に合流する明沢川が流れています。
この図書室は複合施設内3階にあって、なんと1階には温泉の公衆浴場があるんです。温泉と同じ建物にある、非常に珍しいロケーションの図書館です。温泉は大人200円という超低価格。でも入館時に受付の女性に言われたように「ちっさいよ~。石鹸一つしかないけど(笑)」という、ミニマムサイズ温泉。浴槽は2,3人が限度というところでしたが、いいお湯でした。
この街は、いい意味での昭和感と言うか、寅さん映画のロケ地になりそうな愛すべき日本の地方の風景を感じられるところが良かったです。
あと、図書館的トピックとしては街の中心にあるショッピングモール「アスモ」の中にも自動販売機やテーブル、イスなどが並んだ広い図書室的スペースがありました。中で自由に読めるし、借りることもできるっぽいです。アスモは100円ショップなどもあり、地元のおじいちゃんおばあちゃんの憩いの場として機能しているようでした。

小国町開発総合センター。横の階段がカッコいい
矢印方向突き当たりが温泉。右に見えるのは和室の休憩所
小国駅前から見た街並み

アクセス
JR米坂線小国駅から徒歩10分

魚沼市立小出郷図書館(新潟県)

先日十数年ぶりに全線復旧を果たしたJR只見線の南の起点が、魚沼市の小出駅。只見線は超有名ローカル線なので小出駅も同じく有名なわけですが、その知名度にくらべて駅周辺の街並みについてはあまり知られていないのではないかと思います。
ここの街が変わっているのは、鉄道駅と街の中心部が川(魚野川)で隔てられているということでしょうか。街に行くためには、大きな小出橋(しかも高架状)を渡らないといけないのです。
でも、だからこそゆっくり街歩きしたい時にはちょうど良い機会になりますし、何と言っても橋から眺める絶景がすばらしいんですよ。午後イチの只見線に乗るぞ、という方は一本前の列車で小出駅に来て、のんびりここの街を散策してからというのもいいんじゃないでしょうか。
図書館は昔の本屋さんの一階?という感じの空間にぎっしりと資料が詰め込まれいて、郷土関係の本もたっぷりありました。

小出郷図書館。ここもアーケード図書館ですね
こういうなんでもない商店街がそそられる
魚野川と越後駒ケ岳。絶景!

アクセス
JR上越線または只見線の小出駅から徒歩15分ほど

名古屋市中村図書館(愛知県)

図書館ウォーカーには珍しく大都市名古屋。ここを訪ねてみようと思ったのは、名古屋泊で夕方ごろには着く予定だったので、ホテルにチェックインする前にどこか図書館に立ち寄れないかと思ったのと、たまたまネット上で池のほとりに建っている写真を見たからです。そう、僕は水の景色が好きなので。
僕は行く図書館を決めたら、アクセス手段と所要時間を調べるくらいであまり下調べをしないで訪ねるようにしているのですが、ここが意外だったのは、最寄りの地下鉄駅から地上に出たら大きな鳥居が立っていたこと。そこからこの図書館がある公園内の神社まで参道になっているんですね。参道と言ってもふつうの下町という感じなのですが、それがけっこう良かったんです。
あと施設的にはここは複合文化施設(中村公園文化プラザ)内で、併設の秀吉清正記念館が小さいながらもけっこう見ごたえありました。併設文化施設を見るのも、図書館ウォーカーの楽しみの一つです。

スケールの大きな中村公園文化プラザ。横に回ると池に写る姿が楽しめます
中村公園の池。桜もちらほら
中村図書館に向かう道。まあふつうの街なんですけど、なんかいい

アクセス
名古屋市営地下鉄中村公園駅から徒歩10分ほど

羽曳野市立中央図書館(大阪府)

羽曳野市は、僕が大学入学まで暮らしていた自治体の隣にあって、正直下町のごちゃごちゃした感じ(自分の実家近辺も含め)というイメージしかなかったのですが、古市古墳群が世界遺産認定されて一躍注目の的に。
と言っても街の感じはあまり今も変わっていなくて、良くも悪くも昭和感を残した住宅街が多くを占めていて、その中に古墳がぽつんぽつんとあるのが楽しいんですよ。
古墳なんて僕ら地元の人間からするとありきたりの風景だったんですが、世間の視線が変わった今、改めて歩いてみるとそれはそれで面白いんですよね。というわけで、古墳がすぐ横にある羽曳野市立中央図書館。複合施設の羽曳野市立生活文化情報センターLICはびきの地下にあり。カーブした構造も楽しいです。
羽曳野市はまた、大リーグのサンディエゴ・パドレス所属のダルビッシュ有投手の出身地。彼は公式戦で一勝するごとに市に10万円を寄付しているそうです。ということをこの館で知りました。ご当地ネタを学ぶのも図書館ウォーカーの楽しみの一つです。

LICはびきの
LICはびきの向かいの芦が池。ちょっと北欧っぽい?
竹内街道横の軽里大塚古墳(白鳥陵)

アクセス
近鉄南大阪線古市駅から徒歩15分ほど

真庭市立中央図書館(岡山県)

日本指折りのローカル鉄道路線として知られるJR姫新線。この館の最寄り駅はその中の中国勝山駅です。市内を流れる旭川に沿う形でレトロな街並みが魅力の「勝山町並み保存地区」が南北に広がり、その北の端くらいの場所にこの図書館は建っています。
図書館に行くためには基本的にこの保存地区をずっと歩くことになるので、まさに図書館ウォーカーするために最適のロケーションと言えます(笑)。鮮やかなデザインののれんの数々がイチオシです。
とは言え真庭市は観光展開したこのエリアと、市役所などが集約された地元住民向けエリアはかなり離れた立地になっていて、その意味では「街の日常を味わう」図書館ウォーカーのコンセプトからはちょっとはずれたロケーションとも言えますが。
この図書館は最近できた新しい館で、館内の至るところに後出の利点を活かしていろんな工夫がなされ、展示などもすごく頑張っている感じがしました。僕が行った時は3階で映画フェスが開催されていました。図書館員さんが作業しながら楽しそうに会話していたのも、最近の「静けさを押し付けない図書館」のトレンドを実施しているのかなと。

真庭市立中央図書館
保存地区内のカフェからパチリ
旭川

アクセス
JR姫新線中国勝山駅から徒歩20分ほど

津和野町立日原図書館(島根県)

清流と言えば四万十川や仁淀川を思い浮かべるかもですが、島根県西部を流れる大河「高津川」もその代表例。映画の舞台↓にもなっていますよね。その高津川と支流の津和野川が合流するあたりに津和野町日原地区があります。
津和野町と言えば何と言っても、あの鯉が泳いだりしている古い街並みの津和野地区が有名ですが、天邪鬼な僕はこちらに来たかった。以前益田から広島に向かうバスから見た、高津川越しの集落の美しさがずっと気になっていたんですね。
街歩きでは清流と橋と山並みの景色をこれでもかというほど堪能できます。また津和野地区とはまた違ったレトロ感が漂う街並みも良いです。図書館の建物も周囲に溶け込むデザインになっています。小さいながらもきれいで観光パンフなども配布してあって、何より川側にある閲覧席からの高津川の絶景が最高です。

日原図書館
川の合流地点と日原の集落
高津川!

アクセス
JR山口線日原駅から徒歩25分。または石見交通バス広益線清流ライン高津川号、津和野線の日原診療所前バス停から徒歩10分ほど

平戸市平戸図書館(長崎県)

海が見える図書館です。海辺の高台という絶好ロケーションのうえ、海側に突き出した屋外休憩スペースがあり、海を眺められる図書館としてはプレミアム級と言っていいと思います。館内も広々していてきれいですよ。
平戸市の中心部は九州本土から平戸大橋を渡った平戸島最北部にあり、図書館のすぐ横には平戸城もあります。街の規模としてはとても小さいですが、ちょっとレトロな街並みやすぐ近くの海などが手軽に楽しめます。
最寄りの鉄道駅は鉄道ファンにはおなじみの松浦鉄道たびら平戸口駅。かつての日本最西端鉄道駅で、現在も「レールを走る鉄道」という条件付きですが最西端に位置します。駅構内には待合室も兼ねた小さな鉄道博物館やおいしいと評判のちゃんぽん屋さんがあり、いずれも営業時間が短いですが開店時間中に来るとけっこう楽しめると思います。

平戸図書館がある複合施設COLAS
川べりにあったフランシスコ・ザビエル像(たぶん)
平戸大橋を渡るバスから見た海

アクセス
西肥バス平戸桟橋行き平戸市役所前バス停から徒歩15分ほど。平戸桟橋方面行きバスは平戸口駅または平戸口駅前バス停、または松浦鉄道松浦駅前、JRおよび松浦鉄道佐世保駅前からの複数路線あり

南さつま市立坊津図書館(鹿児島県)

海が見える図書館です。坊津は、三重県津市の安濃津、福岡県福岡市の博多津と並んで日本三津と言われているかつての海上交通の要所で、鑑真が上陸したことでも知られる名所です。「新日本紀行」「ブラタモリ」「旅ラン」などのテレビ番組でもたびたびとりあげられています。
実はここ、書籍「図書館ウォーカー」の松原市民図書館「読書の森」の回で登場した女性(詳しくは読んでください笑)のお母さんが昔住んでらしたことがあるそうで、またnote読者の方の「図書館内からの海の絶景」情報もいただいて気になっていた街でした。
坊津はいくつかの地域を併せた総称で、図書館のあるエリアは「坊」です。個人的には、少し北側の高台にある坊津歴史資料センター輝津館を見てから付近の海などを散策し、ゆっくり坊の集落へと歩いて来るのがオススメ。
図書館はオリジナルのリーフレットを作って配布していたり、地域情報を積極的に発信していたりとかなり頑張っている館で好印象。海ぎわに建っていて2階にあるので海の眺めもすばらしいです。

図書館がある坊津公民館
入口に立てかけてありました。おっしゃれ~
高台から見た坊の集落

アクセス
鹿児島交通今岳~枕崎線龍巌寺下バス停から徒歩7分

おわりに

というわけでした。何度も言うようですが、「良いと評判の図書館を訪ねる」のが目的ではなくて、あくまで主役は「図書館に着くまでの街歩きの楽しさ」です。
あとは、実際に歩いた時の非常に個人的な感覚にもとづいた楽しさなので、この10館も完全に独断と偏見です。これからの旅のプラン作りの参考になればさいわいです。

最後に。見出し写真は坊津の海、下の最後の写真は平戸市のたびら平戸口駅にいた愛想の悪い猫でした。

基本的に図書館ウォーカーの旅取材は自費ですので、もしよろしければサポート、投げ銭などいただければありがたいです。心からの感謝とともに経費に充てさせていただきます。

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