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組織のリーダーがチームワークをつくる

はじめに

ちょうど一年前、昨年の3月末に長く勤めた会社を退職しました。

1986年に新卒で入社し36年間一つの会社に在籍しましたが、正確には34歳から51歳までの17年間、会社を休職して労働組合の専従役員として過ごしました。ここでは”労組の専従役員ってなに?”の説明は以下のコトバンクに譲りますが、会社人生のおおよそ半分を専従役員として過ごした社員はそう多くはいないはずです。

そういう意味で、ボクのバックボーンは”労働組合”なのかもしれません

ボクにとって労組の専従役員は人生においてとても重要な期間でした。普通に会社勤めをしていればおおよそ経験することのないことも多く経験することができたからです。楽しいことも苦しいこともありましたが、いま思いおこせばすべてが良い思い出です。

特に、上司に仕える側の方が向いていると今でも言い切れるボクですが、役員として最後の5年間は委員長を務めさせていただきました。組合員が5,000人を超える大きな組織の代表者です。

当時、大きな組織をどうやってまとめれば良いか悩んだことを覚えていますが、時が過ぎ自身の任期が終えるころ強く感じたのが「チームワークって大事だよな」ということでした。委員長というのは責任こそ大きくなりますが、自分でできることなどほとんどなく、それこそチームのみんなに支えられて仕事ができているようなものだからです。

今日は、当時を思い出しながらボクなりの「仕事におけるチームワーク」、「チームワークの成果を最大化する」にはどうすればよいかについて綴りたいと思います。


20代、チームワークよりも一人親方

思いおこせば20代のボクは職場では浮いた存在でした。

当時、製造部の間接スタッフとして工程改善の仕事に就いていましたが、仕掛り製品の試験や評価、レポートまでのほとんどが一人作業です。
またある時期は、製造部全体の工数や歩留まり、改善効果を取り纏める事務局の仕事を担当しましたが、数字を集計するために職場の仲間との関わりはあっても「チームでワークをした」という経験がありません。
一人作業あるいはパソコンに向かっている時間が圧倒的に長かったのです。

だからといって人の目が及ばないことをいいことに仕事をサボっていたというわけでもなく、自分で言うのもなんですがそれなりにはきちんと働いていたと思います。なので、チームというよりもたまたま一人親方的な環境のなかで仕事をしていたのですが、そんな環境に不満や疑問を抱くこともありませんでした。
 
 

30代、専従役員となってチームワークを知る

34歳、そんなボクに転機が訪れました。
当時頼まれるがまま職場の組合活動に参加をしていたボクに「支部の書記長をやってみないか」という声がかかったのです。支部といっても、当時2,500名程の組合員が在籍するような大きな組織で、書記長は事務方の責任者なので大役です。いまの仕事を続けながらやれるようなものではなく、職場を離れて(会社を休職して)務める専従役員です。

声をかけてもらったことに対して“期待に応えなければ”という思いもあったのですが、今思うと当時の先輩役員が輝いて見えたこともあって前向きに引き受けたことを覚えています。

本題から逸れますが、いま組合役員の担い手がなく頭を悩ませている単組がたくさんあると聞きます。現役の役員の皆さんは、辛くて嫌なことが多いと思いますが、いつも元気で輝いている(ように見せる)ことは大切だと思います。優秀な人材は魅力のあるところにしか集まらないからです。

当時、おかげさまで「あなたしかいない」と頼めば引き受けてくれる方が多く本当に助かったことを思い出しますが、私を含め組合の専従役員が輝いていた(そう見せていたのかも?)ことの証左ではないでしょうか。

本題に戻ります。
支部書記長になって以降、日常が「チームでワークする」ことばかりになりました。支部のイベントや専門部の活動、会社との協議など、大半の活動はチームでなければ成し得ないことばかりだからです。今思えば学生の頃に経験したチームスポーツ(野球)以来、組合の活動が社会人のボクに初めて「チームワーク」を学ぶ機会を与えてくれた気がします。
 
 

40代、チームワークで大仕事に取り組む

今でも「あのときは必死だったな。だけど良いチームワークだったな」と思い出すことがあります。

ボクは当時、組合の役員として4年間を東京にある外部団体へ出向していました。11組合が加盟する連合会(組合員約15,000人)の事務局長を務めました。

あるとき、加盟組合で事業所閉鎖に伴う人員整理・解雇の問題が発生したのです。組合にとって組合員の雇用は最も大切にしなければならないことです。

雇用確保を求める組合と会社との交渉は難航を極め、最終的にその加盟組合はスト権を確立して交渉に臨む決断をしたのです。スト権を確立することなど今の労使関係において尋常なことではありません。が、ボクが事務局長を務める連合会と加盟する産業別組織(組合員約750,000人)が当該組合の主張を支持し全面的に支援することになりました。

スト権を確立してもストライキに突入する前に労使が合意すればストは回避できます。解決を図るためにギリギリまで合意を模索したものの、スト予告日の前日夜に会社が団交に姿を見せることなく、スト突入が決定的となりました。

スト初日は、吐く息が真っ白な極寒の早朝。会社の正門でピケを張ったことを思い出しますスト突入後、関係者の懸命かつ迅速な対応で早期に労使合意点を見出すことができ、短期間でスト終結が図れたことは救いでしたが、組合と会社が不眠不休で繰り広げた闘いは、心身のダメージだけでなく労使関係においても断絶状態を生むことになりました。

その後、壊れてしまった関係を「正常な労使関係」として新しい礎を築くために半年をかけて取り組みました。あのときボクは事務局長として、関係者との連携を含め全体を統括する立場で仕事をさせていただいたのですが、スト決行から終結、関係の修復に至るまで関係者のチームワークがなければ絶対に成し得なかったと思います。
 
 

チームワークに必要なもの

2022年、サッカーはワールドカップに沸き、今年はWBCで日本が劇的な優勝を飾るなどたいへんな盛り上がりを見せています。一人では何もできないと感じさせられるチームスポーツは言うまでもなく、つい一週間ほど前に最年少で6冠を達成した将棋の藤井聡太さんのような孤高の勝負でも、相手の玉を攻め落とすには20枚の駒を上手く連携させなければなりません。ここにもチームワークを考えるヒントがありそうです。

これらに共通する、結果を出すためのチームワークにはなにが必要でしょうか。ボクは『信頼の厚い指揮官(リーダー)』だと考えます。野球は監督で決まると言われ、20枚の駒を巧みに操るのは棋士だからです。

チームスポーツでは仲の良い者同士だけでわいわい楽しくやっていたら結果が出たということもあるでしょうが、これは、個人の力量が相手を圧倒していたか、偶然にしか過ぎないと思います。
 
 

リーダーがチームワークをつくる

ボクは、20代では一人親方的に仕事をやってきましたが、あのときもし若い自分がチームで仕事をしていたらどうなっていたか想像してみます。

あるとき、リーダーからボクが所属するチームに対して仕事(目標)が与えられました。そのとき自分は考えます。

  • このチームで自分の役割はなんだろう?

  • このチームに自分は貢献できるのか?

  • このチームで自分は成長できるのか?

当時ボクが本当にこう考えたかは別としても、先輩メンバーは当然考えるでしょう。そのときリーダーがメンバー一人ひとりに対してどのような対応をするかでチームワークの良し悪しが決まると思うのです。

リーダーは、一つ目の疑問に対して一人ひとりに、あなたがチームに欠かせない存在だということをきちんと伝えなければなりません

二つ目の疑問には、お互い助け合って相乗効果を発揮しようと励まさなければいけません

三つ目の疑問には、仕事(目標の達成)を通じて個の成長に繋がることを示すことが必要です。

これらには、リーダーとしての資質と人間力が必要ですが、なによりメンバーにしっかりと向き合うことができるリーダーがいれば、メンバーは安心して仕事に集中することができます。

一方、メンバーの疑問に向き合わないリーダーは、メンバーをスキルのある単なるスタッフとして扱っていないでしょうか。そんな環境にあるメンバーは、自分の役割すら理解できないのでチームの相乗効果は見込めません。

どちらのリーダーがより良い成果をあげ、個人の成長につなげているか。その差は歴然としています。

メンバーときちんと向き合うことができる信頼の厚いリーダーがチームワークをつくる。そんなことを考えながら仕事に向き合ってきました。
 
 

チームワークに対する憂いと期待

ボクが勤めていた会社はものづくりの会社で、チームワークの大切さを認識する一方、近年、心配することがあります。これは、いまの世の中全体に言えることかもしれません。

一つは成果主義的な人事制度の台頭です。勤めていた会社では期初にすべての従業員が上司と「コミットメント」を結びます。それが全てではありませんが、個人目標の達成が評価に直結するので、一人ひとりが目標達成に努力します。少し考えすぎかもしれませんが個人目標の達成に躍起になるあまり、お互いが助け合うことやチームへの貢献に対してマイナス面が出過ぎてしまわないか心配をしています。ぜひ、チームワークの成果が個人の評価に適切に反映されることを望みます。

もう一つは、ボクたちシニア層です。いまでは当たり前の雇用継続制度ですが導入された2000年頃、当時は再雇用された人に対して「何をやっているのかわからない」「十分働いてきたのだからのんびり働いていても仕方ないかな」などと思うことがありました。あれから20年以上が過ぎ、そんな労働力の担い手としてシニア層の経験や知見をどう活かすかはとても重要です。シニア層の責任と役割を明確にして、チームで活躍できるシニアがどんどん増えていくことがこれからの日本には必要だと思います。
 

退職して1年が経ちます。
自身が働いてきたことの足跡の意味も含めて現役の頃を思い出して書き留めましたが、ボクのような考え方では令和の時代には通用しないかもしれません。しばらくしてからこれを振り返り、改めて考えてみたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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