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心理的安全性はマネージャーの相当な努力を要する?(仮説)

心理的安全性が職場に重要である、というのはGoogleの職場づくりのプラクティスであるRe:workで提唱されており、先進的なワークスタイルを目指す企業のテーマになっているようです。

「チームの心理的安全性」という概念を最初に提唱したのは、ハーバード大学で組織行動学を研究するエイミー エドモンソン氏です。同氏は、この概念を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」

昨今のコロナ禍で急速に進んだリモートワークにおいても心理的安全性が重要な要素であると、カナダでデータドリブンの行動分析コンサルティングを手掛けるBeWorksが提唱しています。

What we know: In prior studies, psychological safety has been one of the cornerstones of employee success in WFH contexts. Given this new paradigm, muddied by job insecurity, it is imperative that psychological safety by closely monitored and cultivated.

(筆者訳)私達が知っていること:先行研究では心理的安全性はWork From Homeの文脈で、従業員の成功の礎になっています。仕事の不安にまみれたこの新しいパラダイムにおいて、よく育まれた心理的安全性が必要不可欠である

心理的安全性を高めるため「個人ができる簡単な取組」として、エイミー氏はTEDの中で次のように語っています

1.仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える。
2.自分が間違うということを認める。
3.好奇心を形にし、積極的に質問する。

マネージャーとしては個人がそのように取り組めるような場づくりをするこことに絶えず取り組むことが、心理的安全性のある職場を育むことに通ずると考えています。

しかしながら、ここで自分にとって悩ましい問題が生じます。

マズローの自己実現要求からの視点
上記の3つの「簡単な取組」、およびそれを育むは、マズローの自己実現理論(欲求5段階説)のすべての欲求が満たされた状態と近しいのではないでしょうか。マズロー説によると下位の要求が満たされていくにつれ上位の要求を認識するわけですから、衣食住や所属・承認が得られていない状況では心理的安全性を築くための精神的成熟はなかなか難しいのではないでしょうか。
例えばNexflixでは高度な自由と好奇心、周囲への敬意を重視する「Netflixのカルチャー」があります。が、それは少なくともNetflixで働くことでお金では困らないことを前提としているように見えます。

Netflixに限らず、優良な企業というのは最高の人材を雇い、個人の誠実さや優秀さ、周囲への敬意やインクルージョン(個々の違いを尊重し受け入れる姿勢)、そして協調性を重視するものです。これらに加えて、Netflixではさらに次のような点を大切にしています。
1.社員一人ひとりの自立した意思決定を促し、尊重する
2.情報は、広く、オープンかつ積極的に共有する
3.とことん率直に意見を言い合う
4.優れた人材でチームを構成し続ける
5.ルールをつくらない
(給与について)
最高の仲間を採用し、Netflixに留まってもらうために、個人における最高水準の給与を与えます。Netflixでは、それぞれの社員が他社で受け取ることができるであろう最も高い報酬額を見積もり、その最大額を支払います。
(退職金について)
ドリームチームを追求するNetflixのユニークな考え方として、能力がいまひとつ振るわない社員に対して十分な退職金を提示し、ポストを空けることでさらなる優秀な社員の雇用に力を注げるようにしているということが挙げられます。

ジェンダー(等の)バイアスからの視点
また、ジェンダーバイアスの行動経済学的分析と対処法を纏めた「ワーク・デザイン」では、男女の行動規範が意思決定に影響を及ぼしていることなどを上げており、通り一遍の「ダイバーシティ」「男女平等」のお題目では心理的安全性を達成することは難しそうです。

男女間格差を議論する際の重要なアウトカムは賃金であるが,女性が交渉を回避しやすいことが男女間賃金格差の一因であることは知られている。女性は交渉を好まないし,交渉する女性は敬遠されるので,強く交渉することでかえって不利益を被ることがある。
読書ノート』より

一流の組織でも心理的安全性の達成・維持は難しい
昨年、GoogleのAI倫理研究者のティムニット・ゲブル氏が、共著者となっている研究論文が問題にされた末に解雇されたというニュースがありました。ことの是非は置いときますが、記事を読む限りはGoogleが彼女の主張を受け止めきれなかったようで、一流のタレントが集まる組織も心理的安全性の維持には苦労をしているようです。

結論はないですが、心理的安全性は大事ではあるものの、それを確保するには現場のマネージャーがミクロ・マクロの視点でいろいろと工夫をすることが大事なようです。というか、私には心理的安全性のある組織づくりに自信がまったくないので皆さんの意見をよく知りたいです。

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