わたしの中から出てくる小さな欲望
猫の奈々と暮らして
欲望はけして悪いものじゃないと思える
欲望には抑えて良いもの、悪いものがあり
抑えたために傷つき、自分が病んでいく
奈々に長生きしてほしい
ずっと一緒に暮らしたい欲は、難しくて
奈々にできる、わたしの能動的な行動は
必ずうまくいくとは限らず
どんなに頑張っても思うようにならないことがある
少し認知症になった奈々は、排泄を失敗してしまう
雑巾掛けしながら、希望を失っていき
気づけば
生きることに、何の価値や意義も見い出せず
ただ命の浪費をしているような錯覚に陥る
奈々が持つ生命の欲望、成功と失敗は
わたしが決めることではないのに
奈々やわたしが豊かに生きるには
ある程度の希望が必要なのは確かで
幸せの尺度を
「出来ること」の出来高に置き換えることは
得策ではないのも分かってきた
失敗に目を向ければ、失望が転がる
失敗や失念にとらわれず
日々の生活には、小さな価値があるのだと考え
わたしの中から出てくる「小さな欲望」へ
ちゃんと光が届くように
奈々が、生きてくれさえすればいい
その光が、本当に奈々の気持ちに到達すれば
そこからわたし達の歩みが広がっていくと信じたい