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hidemaro2005
ショート: 未来の日本を守ったのよ
「この話は実話に違いない」
未来の作家が投稿する“letter”で読んだ小説。
肉体を断捨離する発想は、常軌を逸脱し、
とても素人が書いた作品には思えなかった。
左手に握るスマホで、１１０番する。
私に躊躇はなく、ただ正義のため、
あんな殺人鬼を見過ごすなど、できっこない。
「１１０番、緊急電話です。
事件ですか？ 事故ですか？」
「殺人事件です」
「今、貴女が電話をかけられている場所ですか？」
「あ…違います。“letter”ってラノベ投稿サイトで、殺人事件を描写したものがあるんですが、
あの作者、絶対に人を殺しているみたいなんです」
「投稿サイトで、殺人した告白が掲載されたんですか？」
「いえ、小説です。でも、絶対おかしいんです」
「分かりました。では、作者さんの名前は？
本名は分かりますか？」
「作者は菊之宮兎右衛門です。本名は…ちょっと」
「作者は、キクノミヤ ウエモンさんで
本名は不明。投稿サイトの名前は？」
「letterです」
「今、通報している貴女の名前は？」
「あっ、えっ、あー桜田モンです」
「それは本名ですか？」「はい」
菊之宮さんが悪いのよ。私にこんなことをさせて。
猟奇的殺人を小説する方が悪い！
でも、私の名前を言うと私が特定されるじゃない。
菊之宮さんに逆恨みされたら怖い。
モンちゃんなら、いいのよ。
バカっぽいし、小学生の作文みたいなのが、
８０００view⁈ 私でも書けるわ。
読者は文盲だから、私の良さなんか分からない。
ああ、letterを退会して別サイトに行こうかな。
モンちゃんは、菊之宮さんに殺されて本望でしょ。まあバカだから、誰に殺されたか分からないか。
…私は未来の日本を守ったのよ。
悪い人は、普通、神さまが断捨離すればいいのに。