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見知らぬエーデルワイスの「レ」

カラスノエンドウが、庭の隅で花を咲かせる
5月の半ばには
豆が膨らんで、豆笛が吹ける
最近の子ども達は、あの笛を知っているのかな

笛で思い出すのが
まだ猫の奈々と暮らしていない、夏

どこからともなく、エーデルワイスが聴こえた
ソプラノリコーダーの音
夏休みの課題だろう

♪ ミーソーレー ドーソーファー 
♪ ミーミミファソラーソー
懐かしいなぁ、体得した指が勝手に動く
と、♪ ミーソーレー
この「レ」で躓いた
リコーダー主は、この先も「高いレ」で失敗する

ソプラノのリコーダーは、しっかり指で穴を塞ぎ
息を吹いてやらないと、高音を出すとき
安定した音にならない特性があった、はず

あまりに失敗を重ねるので
土日曜の休みがない、親御さんなのかもしれない
もしくは、指先が小さな子ども
知っている人がコツを教えれば、すぐにクリアでき
リコーダー主が気の毒になる程、その先へ進めない

窓から顔を出しても
アパートのどこから音がするのか、特定できず
「ピー!」なんて外れた高音を聴くと
「がんばれ」音の方向を見つめる

わたしも予定があり、家を出たのだが
リコーダー主が気になって
中途半端な音が、頭を旋回していた
あれだけ練習しているのだから、きっと上手くいく

人というのは、目に見える他人だけが応援して
自分ひとりぼっちなら、無援に感じやすい
心が収縮して、涙が出そうになる

自分が好調のときは、反対に
応援してくれる、目に見えない人を蔑ろにし
自分ひとりが成功した気になっている

自意識過剰になるなら、せめて
自分は見知らぬ人間から応援されていると思い
絶好調なら、孤立無援の淵が近いと気を引き締める

それくらいで居る方が、謙虚になれるかな
わたし、驕るなかれ