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くどうれいん『うたうおばけ』

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ともだち、いますか。「友達」じゃなくて、「ともだち」です。パーカーを後ろ前に来て、フードで顔を覆い、「おばけ、歌います」とレミオロメンを歌い出すような、ともだち。ここにたくさんいますから、ちょっと覗いてご覧なさい。

何なんだ、ともだちって。と問うてくるひとがいるとしたら、内容に触れずに答えるのは難しいし、各話で登場するともだちの特徴は突飛過ぎて説明がしにくい。

ごく個人的で身勝手な見解を述べるとすれば、暗い顔でニヤリと笑い合えるひと、だろうか。文中にはよく「にひ」だとか「いひひ」だとか「にか」だとかいう笑い声が漏れる。どう考えても爽やかではない。が、人間いつでも爽やかで明るい訳ではないし、普段日の光に照らされている間は出てこない暗い部分が一致したほうが、仲良くなるには手っ取り早いのかもしれない、と読んでいて思う。

うまく行きそうにないナンパも馬の話で一転したり、あほらしいと思いながら宇宙ステーション「きぼう」をみたいと思い、あほらしいことをしたい時に連絡を取る相手と離れた場所できぼうを見たり、そしてそのあと交際したり。

多分、そういった現象って、言葉にしにくいし身の回りで見かけたりしない。でも、読んでいてわかるわかるとうなずく程度には私達もそれを経験している、はずなのだ。それを、著者はエッセイという形でこっそり文章にしてくれている。いや、「見えてしまう」から書いている、と言うべきか。「穏やかにかわいい百鬼夜行」は、夜にひっそりと、しかし見た者はニヤッと、楽しむべきものである。

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くどうれいん『うたうおばけ』書肆侃侃房、2020

四六判、並製、192ページ
定価:本体1,400円+税
ISBN978-4-86385-398-0 C0095

装画:西淑

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2021年8月1日、Instagramにて投稿

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