著…貴志祐介『我々は、みな孤独である』
「なぜ人を殺してはいけないのか?」という永遠のテーマ。
そして、「以前わたしはこのシチュエーションを体験したことがある」という気がする、デジャヴの正体。
これは、その二つについて、ある答えを出してくれる小説です。
血生臭い描写もありますし、また、そのグロテスクさ以上に、すっきりしないオチが読み手の心に嫌な感じで纏わりつきます。
ある意味、どんなホラー小説よりも生理的嫌悪感をもたらす稀有な作品。
決して万人にはおすすめしませんが、『世にも奇妙な物語』が好きな方にはおすすめです。
※注意
以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。
主人公は探偵です。
彼はある日、奇妙な依頼を受けました。
依頼人は、なんと「数百年前に前世の自分を殺した犯人を探して欲しい」と頼んできたのです。
とんでもない無茶振りですよね。
しかし、彼は依頼人の前世を巡る調査に出かけます。
そこから少しずつ明らかになっていくのは、はっきりと思い出すことが出来なかったとしても、前世からの因縁はいつまでも続くということ…。
前世で関係のあった者同士は引き寄せ合うのです。
それが、良い関係だとしても、悪い関係だとしても。
…そう。
仮に、殺人事件の加害者と被害者というふたりだとしても。
お互い、近いところに転生し、強い縁を感じてしまうのです。
「初対面だけどどこかで会ったことが気がする」なんて思って、相手に親しみを覚えることもあり得ることだと思いますが…。
それは、もしかしたら、前世で自分を殺した相手だったり、或いは自分が殺した相手だから、印象に残っていただけなのかもしれません…。
ある意味、運命の相手と言えるかも…?
…と、ここまででも十分不気味ですが、この人間同士の「縁」について、恐ろしいラストが用意されています。
最後まで読むと、「そうだったのか…」と背筋がゾワゾワします。
スケールが大きくて気が遠くなるのと、わたしは「もしも現実がこのオチ通りだったら嫌だ! 最悪過ぎる!」と、自分の心の中で拒絶反応が起きたのを感じました。
この嫌な感じもまた、貴志祐介先生の小説でしか得られない読書体験ですね。
〈こういう方におすすめ〉
前世をテーマにした不気味な小説を読みたい方。
〈読書所要時間の目安〉
3時間半くらい。
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