見出し画像

著…太宰治 絵…紗久楽さわ『葉桜と魔笛』

 主人公の妹はまだ18歳。

 それなのに、重い病にかかってしまいました。

 医者から宣告されたのは、余命100日以内。

 主人公も父も、痩せ衰えて力を失っていく妹を、ただ黙って見ていることしか出来ません。

 妹も、自分がもう永くないことを悟っている様子。

 それがまた主人公を一層辛くさせます。

 そんな中、主人公は妹を元気づけようと、優しい嘘をつきます。

 妹はそんな姉の優しさを察して、美しく微笑しながら、

「ああ、死ぬなんて、いやだ」
(単行本版P34から引用)

 と悲痛な思いを吐露します。

 きっとそんな姉妹の会話を聴いていたのでしょう。

 父もまたその嘘に合わせた優しい嘘をつきます。

 …太宰治がこの作品を書いてから随分長い月日が経ちましたが、今もなお人々は病に伏します。

 まだ生きていたいのに。

 死にたくなんて無いのに。

 愛する人たちとお別れしないといけない。

 周りの人々も苦しみます。

 代わってあげたいし、治してあげたいのに、どうすることも出来ないから…。

 いつかもっと多くの病や怪我を治せるようになったら良いのに…と、わたしはこの『葉桜と魔笛』を読む度に切望します。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,330件

いつもスキ・フォロー・コメント・サポートをありがとうございます😄 とても嬉しくて、記事投稿の励みになっています✨ 皆さまから頂いた貴重なサポートは、本の購入費用に充てさせていただいています📖