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著…中野京子『怖い絵のひみつ。「怖い絵」スペシャルブック』

 こんばんは。

 美しいけれど美しいだけじゃない、ちょっと怖いストーリーを持つ絵を見てみたい!という方におすすめの本をご紹介します。

 『怖い絵』シリーズの要点がコンパクトにまとめられています。

 「レディ・ジェーン・グレイの処刑」「処刑台に連行されるマリー・アントワネット」「ポンペイ最後の日」「不幸な家族(自殺)」などの名画をカラーで見られます。

 時代背景や神話に造詣が深い中野先生による、格調高さと読みやすさを両立した解説文も楽しめます。

 わたしは昔から『怖い絵』シリーズが好きで、その日の気分でお気に入りの怖い絵が変わるのですが、今日は「オデュッセウスとセイレーン」に見惚れました。

 セイレーンたちの正面の姿は描かれていないのですが、かえってその後ろ姿が磁器のような美しさや艶やかさを強調し、「正面はどんな姿なのか見てみたい!」という欲望も刺激します。

 きっと船乗りたちはそうやってセイレーンに魅了され、喰い殺されてしまうのでしょうね…。

 なんて危険な美しさ!

 それにしても、この本を読んでいると、怖いのは絵よりも生きている人間だなぁ…とつくづく思います。

 たとえば、「パリの銅版画:死体公示所」の解説によると、

「遺体展示室には誰もが自由に入ることができたので、死体を見たい人が、数多く訪れました。美人の死体が揚がったという情報が入れば、みんな〝それ!〟とばかりに見に行ったのです。この絵の中でも、画面左下で警官に先導されて、川で見つかったばかりの死体が運ばれていますね。死体の脚がむき出しになっているのが分かります。その様子を、上から人々が鈴なりになって見ています」
(P68から引用)

 というのだから、死はある種の娯楽の一つだったのだな、いや、もしかしたら現代でも…? と背筋がゾクゾクッとしました。

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