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著…池上俊一『世界史のリテラシー 少女は、なぜフランスを救えたのか ーージャンヌ・ダルクのオルレアン解放』

 農家の少女として生まれたジャンヌ・ダルクがどんな経緯でイギリス軍と戦い、死刑に処され、そして死後どのように名誉が回復されたのかを考察している本。

 ほとんどが文章で構成されているのですが、読者に直接語りかけるような著者の語り口のおかげで、スムーズに読み進められます。

 この本を読んでいると、彼女が国内外に与えたインパクトがいかに大きかったかが窺い知れます。

 ある者にとっては救国の乙女。

 また、ある者にとっては異端且つ脅威。

 彼女が十三歳の頃から聞いていたとされる「声」の正体が何だったのか非常に気になりますが…、それは謎のヴェールに包まれたままです。

 恐らく、それを解き明かすすべは無いでしょう。

 この本の中で特にわたしの心を打ったのは、処刑裁判の記録に残る彼女自身の言葉です。

 執拗に失言を誘う尋問に対して、彼女は毅然と答えています。

 「神の命に背くことを教会が私に行わせようとしても、私は絶対にそうするつもりはありません」

(著…池上俊一『世界史のリテラシー 少女は、なぜフランスを救えたのか ーージャンヌ・ダルクのオルレアン解放』単行本版P151から引用)


 その凛とした態度に比べて、あの手この手で彼女を有罪にしようとする者たちの思惑ときたら醜いものです。

 「十字架を目の前において欲しい」と最期まで頼んだ彼女と、そんな彼女を生きたまま焼いて晒しものにしたあげく遺骸を捨てた者たちと、一体どちらが「神をないがしろにした」と言えるのか…?

 つくづく考えさせられました。






 〈こういう方におすすめ〉
 ジャンヌ・ダルクの生涯に興味がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 読みごたえはありますが、ページ数は少ないので、1時間前後くらい。

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