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著…林典子『キルギスの誘拐結婚』

 花嫁がまるで死刑宣告を受けたかのようにガックリと肩を落としているのがショッキングな本…。

 キルギスには「誘拐結婚」という文化があるそうです。

 元々は、両親に決められた相手との結婚を拒否し、恋人と駆け落ちすることを意味した文化で、女性を無理やり連れ去れば厳しく罰せられていたそうですが、20世紀に入ってからは合意の無い暴力的な誘拐結婚が増加したのだそうです。

 この本の冒頭には、誘拐された女子大生が泣き叫んで抵抗しているにもかかわらず無理やり花嫁の象徴である純白のスカーフをかぶせられそうになっている写真が載っていて、心が痛みます…。

 他の女性たちも、抵抗したけれど諦めて結婚せざるを得なかった女性ばかり。

 キルギスでは誘拐結婚は違法なのだそうですが、なかなか無くならず、警察や裁判官も「親族間のもめ事」としており、犯罪として扱うことはほとんど無いのだそう…。

 いやいや、犯罪としてちゃんと扱っておくれよ!

 婚約者がいるのに誘拐され、「あなたとは絶対に結婚しないから、早くここから出して」と叫び、抵抗を続け、隙を見て携帯電話で家族に連絡して救出された…という女性もいたようですが、こういう幸運なケースはまれ。

 キルギスでは高齢者を敬う慣習が強いので、男性の親族の高齢女性が長時間に渡って説得して仕方なく女性が結婚を承諾させられたり、いったん男性の家に入った女性は純潔性を失ったと噂を広められてしまうので「家族に恥をかかせたくない」と女性が仕方なく結婚を受け入れるケースが多いのだそうです…。

 なんて男性にとって一方的に都合の良いシステムなのでしょうか!

 男性は自分が誘拐する女性を選んで誘拐しますが、誘拐される女性には拒否権が無いの?

 この本には、男性が女性を誘拐してくるのを男性の親族や近所の人たちが嬉しそうにしながら待っていたり、男性が女性を何時間もかけて結婚に応じるよう説得をしている隣の部屋で男性の親族たちが結婚祝いの食事を取り始めている写真も載っており、ゾッとします。

 他国の文化を批判するのは良いことではありませんが、わたしはこの文化をクレイジーだと思います。

 読んでいてかなりしんどい本ではありますが、世界にはこうした現実がある…と学べて良かったです。

 人間の残酷な一面を垣間見ました。

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