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著…ポール・オースター 訳…柴田元幸『幻影の書』

 誰にも別れを告げず、置き手紙もせず、突然行方不明になった喜劇俳優ヘクター・マン。

 ヘクターはそれから六十年以上消息不明。

 …と聞けば、誰もが「きっとヘクターはとっくの昔にどこかで死んでいるだろう」と思いますよね?

 この小説の主人公デイヴィット・ジンマー教授もそう思っていました。

 しかし…。


 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。


 この小説は、思わぬ展開へと読者を誘います。

 ジンマー教授は飛行機事故で妻子を失うという辛い体験をしました。

 そして、ヘクターの作品を観て救われたのを機に、ヘクターに関する本を書きました。

 すると、ジンマー教授のもとに、

 ヘクターがあなたの御著書を拝読し、あなたに会いたいと申しております。

(著…ポール・オースター 訳…柴田元幸『幻影の書』単行本版P6から引用)


 という、俄には信じがたい手紙が届きました。

 ジンマー教授は手紙の内容を疑いながらも、ヘクターの数奇な人生を辿り、そして同時に自分の人生を振り返っていきます。

 その平行線が時々交わるような、死者と生者の境が無くなるような、不思議な読み応えの作品です。

 文章にやや癖があるので、一度読んだだけではなかなか物語が頭に入ってこず、何度も読み返しました。

 何年かして読み返したら、また違う視点で読めそうです。

 ワインのように熟成させて味わいたい作品。



 〈こういう方におすすめ〉
 喪失の物語を読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 6時間くらい。

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