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作…アクセル・ハッケ 絵…ミヒャエル・ゾーヴァ 共訳…那須田淳、木本栄『ちいさなちいさな王様』

 わたしたちが生きている世界では、人間は何も知らない状態で小さく生まれて、だんだん様々なことを学んで大きくなって、やがて死んでいきますよね?

 ところが、この小説に出てくる「王様」の世界では違います。


 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。


 王様の世界では、何でも知っている状態で大きく生まれて、だんだん小さくなって様々なことを忘れて、やがて誰の目にも見えなくなるのです。

 この対比がとても不思議で魅力的。

 誰にも見えないくらい小さくなってしまったからといって、いなくなったということにはならない…というのがポイント。

 もしかしたら「王様」の世界では、分子とか原子とかそういうレベルまで小さくなっていっても、命に終わりは無く、誰もがどこかで存在し続けるのかもしれません。

 ひょっとしたら、わたしたちの世界でも、同じことが言えるのかもしれませんね。

 気がつかないだけで。

 普通は、体が生命活動を停止すると、体の中から意識が消えて、その後は腐ったり場合によっては虫に喰われたり火葬されたりするわけですが…。

 実は、死んだら生前とは全く別のからだとなり、また死んで、また別のからだに移行する…というのをずっと繰り返してきているのかも。

 たとえば、蝶は蛹から羽化するけれど、果たして、蝶は自分が蛹だったことを覚えているのでしょうか?

 蛹の前は幼虫だったことを。

 幼虫の前は卵だったことを。

 そうやって想像を巡らせていくと、生命の神秘に圧倒されます。

 わたしたち人間も、どこから来て、そしてどこへ向かうのでしょうか?



 〈こういう方におすすめ〉
 生命の神秘に関心がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 1時間くらい。

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