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在野研究一歩前(42)「読書論の系譜(第二十四回):内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)⑤」

 今回も前回に引き続き、内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)内で紹介されている、「偉人」の「読書」論を見ていきたいと思う。

ヘンリー・ピーチャム
「徒らに其藏書に誇りて空しく五車の珍に得々たるも、而かも其胸中些の智識なき人の爲を學ぶ勿れ、萬巻の書を藏しながら之を利用せざる者は、譬へば枕邊に煌々たる燈火を點しながら眠に就く小兒の如し」(P21)


ヘンリー・ピーチャムは、ルネサンス期のイギリスの作家で、修辞学に関する論文で著名な人物である。
 ヘンリー・ピーチャムは語る。
 いたずらに蔵書数を誇ることはいいことではない。多くの本を所有していて、それを利用することがないのは、枕元で燈火をともしながら眠ってしまうようなものである。


ウィリヤム・ウオラー(ウィリアム・ウォラー)
「余の書齋に在りて余は確かに賢人の外誰人とも言を交へず、然れども一度戸外に出れば余は俗物と語を交へざらんと欲するも得ず 余は此處にありて、遙かにエンドルの地まで旅行することなくして、凡ての時代の最も俊れたる靈と、最も博識なる哲學者と、最も賢き經綸家と、最も偉大なる將軍とを呼起し、彼等をして余の用を爲さしめ得べし」(P25)

サー・ウィリアム・ウォラーは、清教徒革命(イングランド内戦)期のイングランドの軍人、政治家。議会派の有力軍人の1人で、内戦ではイングランド南部・西部を転戦し王党派と交戦。戦いの業績から、イングランド王ウィリアム1世にちなんで「征服王」と呼ばれた。
 ウィリヤム・ウォラーは語る。
 私は書斎の中にいるとき、賢人だけと向き合い言葉を交わすことができる。しかし、いったん書斎から出てしまえば、賢人とはかけ離れた俗物的な人間と交際することになる。私は書斎の中にいながらにして、すべての時代の優れた人物たち(哲学者、経綸家、将軍)に会って、自分自身を成長させることができる。

 

トーマス・フラー
「汝若し外にありて遊戯又は事業を有せざれば、退きて汝の書齋にある皮の衣着たる正直なる古き人(書籍)を友とすべし、彼等は汝に供するに優れたる欝散の術を以てせむ」(P27)

トーマス・フラーは、17世紀イギリスの神学者、聖職者。
 トーマス・フラーは言う。
 もしあなたが外において為す遊戯や事業を有していないのならば、家に帰って書斎にある「皮の衣着たる正直なる古き人(書籍)」を友人とするべきである。その友人は、あなたの悩みを晴らしてくれる術を身につけている。
 ―現在において、「本」は「皮の衣」を身につけていない。「本」の形態の変遷が垣間見える。

 以上、「在野研究一歩前(42)「読書論の系譜(第二十四回):内村鑑三編『偉人と讀書 讀書に關する古今偉人の格言』(山縣圖書舘、1900)⑤」」を終ります。
 お読み頂きありがとうございました。

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