おみくじ
さて、年の瀬である。
この時期は、どこに足を運んでも、落ち着かない人々で溢れている。その顔には、新たにやってくる一年に期待する、恍惚の表情が浮かぶ。
この喧騒に身を浸すのも悪くないが、一方で、落ち着きも欲しい。そういうとき、読書が私に安寧の時間を与えてくれる。
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来年に活かせる本を読もう。年末になると、そういうことを考えがちで、12月上旬ぐらいから、年末年始に読みたい本をセレクトし始める。よってすでに、年末に手に取る本は決まっていた。
選書理由は、年が明けたら早々に実践することになるだろう、という一点だ。隣でおみくじを開く友人に対し、「実はね、おみくじってのは……」と蘊蓄をたれるつもりはないが、少し歴史を知っておくだけでも、おみくじを引く行為を面白がれるのではないか、と思った。
あと、子どもの頃、祖父母に連れられて訪れた神社にて、くじを二回引いたところ、凶と大吉が出たことがある。子どもながらに「これは……してよかったのかな」と不安になった。この点についても、書いてあるのなら知りたい。
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本書前半から、すごいことが書いてある。今まで一緒にくじを引いてきた親類・友人の中に、この正しい見方をしていた人は一人もいなかったと思う。いれば、くじを開いたときの言動から分かるはずだ。私も当然のように、「これは当たってるかな」と口にしていた。この情報、年始に間違いなく披露することになるだろう。
おみくじの引く回数についても、本書には詳しい記述がある。
室町時代の成立とされる狂言「鬮罪人(くじざいにん)」の例などを取り上げ、基本的におみくじは引き直さない、つまり引いていいのは一度だけ、と解説している。
一方、江戸時代の小咄集や随筆を紐解くと、くじは三度引いてこそ神の真意が分かるとする「三度鬮」の例や、自分の決断と合致するまでおみくじを引き続けた例など、目的や状況にあわせて、おみくじの引き方にもバリエーションがあることも分かる。
この話、おみくじを二度引いて不安になっていた幼い私に、教えてあげたかった。
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