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「私が強い人間だったから、ここに立っている」―性暴力裁判で語った被害者のことば

性暴力に遭った一人の女性が、裁判でついたて越しに加害者・弁護士・裁判員らに語ったという記事をまとめました。

⚠️ センシティブな話なので、つらくなりそうな方はご注意ください

性暴力に遭いながら、加害者・裁判官・社会に対して訴えた、論理的で力強いメッセージが印象的でした。

◇ 理不尽な物事に対する姿勢
◇ 言葉の伝え方
という点でも、多くの学びがあります。

▼裁判の概要と被害者そよかさん(仮名)の意見陳述の全文はこちら

“性暴力”裁判 被害女性が語った15分のことば (nhk.or.jp)

\ぜひお読みください/

被害者を救えない社会構造

検察の求刑10年に対し、弁護側の主張は5年6ヶ月と大きな隔たりがある中、裁判の争点は「被害女性・そよかさんの被害がどれだけのものか」となりました。

そよかさんは事件前から大学でジェンダーについて学んでいたおかげで、事件直後から適切な行動で支援を受け、証拠を保全し、PTSD治療を半年で終えることができました。

ただし、自身の被害について加害者・弁護側の主張に強い抗議を示しました。

「被告人の行ったことが『半年で治療を終えられる程度のことだった』ということでは決してなく、被害者がたまたま周囲の環境に恵まれた私という人間だったからこそ、この被害の結果に収まっているのだと考えます」

「これだけ被害回復に必死になってきたのに、私の努力と、私の良い環境条件にただ乗りするようなかたちで被告人の罪が軽くなるのなら、あまりに馬鹿げた話だと思います」

また、性暴力に手をこまねいている日本社会や司法に対しても、強く訴えかけました。

私が受けた性暴力は、この事件の被害だけではありません。(略)
この事件の被害に遭った後、やっと日常生活が送れるようになって復職面談に出かけた日、痴漢の被害に遭いました。死にたくなりました。(略)
みんなみんな、捕まっていないです。この社会では「しょうがないこと」「よくあること」という扱いをされるんです。

「なぜ、女性の見た目でいるだけで、このような暴力や見えにくくされている差別に晒され続け、社会はそれを見逃し加害者を許し続けるのでしょうか?
みんな酷いと思っているのに、そう言葉にはするのに被害者を救えないのは、社会構造の問題です。
だから、社会構造を変える第一歩として、メッセージとして、ここで正当な判決を出してください

被害者も一人の人間であるということ

性被害に遭ったときの怖さ、恥ずかしさ、そして周りの対応へのやりきれなさは、多くの人が感じたことがあるのではないでしょうか?

わたし自身、初めて性被害に遭ったとき、すぐに母親と友だちの母に話したのですが、思ったような対応をしてもらえず、納得いかなかったことがあります。

それだけ日本社会に性犯罪への偏った認識・対応が根強く残っているのだと思います。そよかさんの言葉を読んで、そうした悔しさ・理不尽さを思い出しました。
そんな中、事件後にかけてくれた父親の言葉が印象的です。

「きっと、こういうときどうすればいいかお前の方がずっと分かっているんだろうから」

この言葉でそよかさんは、「自分は無力な弱い被害者ではなく、力をもっている」と気づかされます

被害者は事件に遭ったときやその後の捜査・支援、報道等で「無力で弱い存在」として語られがちです。
だからこそ、そよかさんの強い姿と父親の温かい言葉が心に残りました。

“強い被害者”でなければ、正当な判決・支援が受けられない日本

最後に、裁判に至るまでの経緯と社会への要求を力強く述べました。

被告人が今「反省している」というのは、「これ以上言い訳をできなくなった」結果、行きついた判断です。
私がワンストップセンター(※)に連絡せずに証拠保全をできなかったら、地元の病院で断られたときに諦めてしまったら、被告人は事実を認めなかったでしょうし、この公判の争点も事実関係を争うものだったでしょう。
そもそも警察に連絡できなかったら、これだけの罪を犯した人間が、今も平然と社会生活を行い、新たな被害を生み続けていたかもしれません

※ワンストップセンター:性暴力被害に関する支援機関。

私がここに立っているのは、「当たり前のこと」ではありません。時間の制約、法の壁、大きな恐怖、あらゆるもの、あらゆる段階で「私が負けなかった」その結果です。「私が強い人間だったから」ここに立っています

私が求めるのは、被害者がまともに生活していける社会と、それを作る法制度の改革です。今すぐにでも、この日本の被害者保護制度、被害者支援制度を、加害者を弁護する立場の人間が主体的になって変えていってほしいくらいです。(略)
それがすぐにできないのだから、最低限制度が変わるまで、加害者の認知が根本的に変わるまで、「長い刑期」が必要です。

判決は検察の求刑通り懲役10年が下されましたが、加害者は控訴しました。

裁判で「『私が強い人間だったから』ここに立っている」と語ったそよかさんですが、NHKの取材に対し、このように答えました。

「さまざまな事情でここに立てない被害者の方が多くいることを深刻に思います。(略)
(あの言葉は) 裁判官に当たり前と思ってほしくなくて言ったことで、法廷に立てない被害者が弱いわけでは絶対にありません

芯の強さと他の被害者への優しさを持ち合わせた人間性の深さを感じました。

記事を読んで、そよかさんの姿勢に感動するとともに、被害者がここまで行動し訴えかけなければ、正当な判決や支援が受けられない日本の現状について考えさせられます。

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多くの方に広めていただけると、うれしいです。

関連リンク 

『“ 性暴力 ” 裁判 被害女性が語った15分のことば -1人の女性の意見陳述全文-』

▼裁判の概要とそよかさんの意見陳述の全文が読めます。

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※記事内容の発信について、そよかさんのご了承をいただいております。

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