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「それでも人生ってすてき」と思える―有川浩『レインツリーの国』

レインツリーの国 文庫版 
有川 浩(著/文)
発行:新潮社
定価 430円+税

「いろいろあるけれど、人生っていいな、恋っていいな」と思えるのが有川作品のよさです。本作でもその魅力を存分に感じさせてくれます。

人間関係でショックなことがあった日に偶然読み始めたのですが、ぼろ泣きしてしまいました。落ち着かない気持ちで読んでも、やはり有川作品は読みやすいです。

関西出身の男性・伸と聴覚障害を抱えた女性・ひとみのラブストーリーです。インターネットで知り合った二人が障害の難しさにぶつかりながら、時間を重ねていく過程に心を揺さぶられました。

「わかってほしい」と思うひとみの気もちも、あれこれ思案する伸の気もちも、どちらも共感できました。人は誰でも「ひとみ」になるし、「伸」にもなるんだと思います。

二人が関わる様子を読んで苦しくなったり、胸がいっぱいになったりして、ぼろ泣きしながら読みました。二人の会話やモノローグの言葉が心に残ります。

恥じなくていいはずの障害で恥ずかしい思いや嫌な思いをいっぱいしたし、私は伸さんの悪意を疑っているんじゃなくて、世の中を信じることが怖いんです」

「何らかの意味でコンプレックスのある人はフラットになるのがすごい難しいと思う」

そして、あとがきもすばらしかったです。単行本の方もすてきですが、個人的に印象深いのは文庫本の方です。

「分かったつもりで分かっていない、分かった振りしかできていない。後からそんな自分を振り返るときの自己嫌悪といったらありません。
しかし、何度でも自己嫌悪するしかないのだと思うようになりました。
常に適切な振る舞いができないとしても、その度にそんな自分を思い知ることは無意味じゃない。(略)
少なくとも、何も感じなくなるよりは間違う度に打ちのめされる自分でいたい。」

著者の思いが詰まったあとがきと解説まで読んでほしい一冊です。

レインツリーの国 (新潮文庫) | 浩, 有川 |本 | 通販 | Amazon

\ぜひお読みください♪/

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