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エッセイ(思い出から)

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#子供の頃

MY LITTLE LOVERと、えりちゃんのことを少しだけ

MY LITTLE LOVERと、えりちゃんのことを少しだけ

「悲しみのため息」も「ひとり身のせつなさ」もピンとこなかった。

小学生。まだ運動場でけいどろ(地域によってはどろけいと言うらしい)をすることが一番の楽しみだった私には、年頃の女性の憂いを帯びた複雑な気持ちが分かるはずもなかった。

歌詞には共感できなかったが、メロディーを耳にした瞬間、一目惚れならぬ「一聴き惚れ」をした。

悲しみのため息 ひとり身のせつなさ
抱きしめたい 抱きしめたいから

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祖母の家

祖母の家

祖母の家がなくなった。

「一つの時代が終わったんや。」

父が芝居がかった口調で言ったので盛大にため息をついた。驚いた。なぜ教えてくれなかったんだと思った。

以前から壊そうかと話していることは知っていた。でもいつの間に実行されていたんだ。体から力が抜けていくのを感じた。

祖母の家。それは私の亡くなった母が育った家でもある。

母は四人兄弟の一番上で、妹が二人、弟が一人。祖父は若くして病気で亡

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なりたいおばあちゃん、なりたくないおばあさん。

なりたいおばあちゃん、なりたくないおばあさん。

おばあさんになるまで、できれば健康で生きていたいと思う。

そして歳をとればとるほど謙虚でいたい。そう思うのは自分がまだまだ謙虚からは程遠いからだろう。

長年生きてきた経験から傲慢になってしまう事は避けたい。

そして「あの時のおばあさん」のようにはなりたくないなぁという思いがある。

小学校一年生くらいだったのだろうか。古い記憶だが、鮮明に覚えている。

近所に小さな商店があった。徒歩五分ほど

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