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【BtoB MA事例で考える】データ分析における本質的な課題の探し方について考えた

 こんにちは!クロスコムの本田(@HONDAWeb1)です。BtoB専門のCRM支援会社として、企業のマーケティング活動を支援しています。

今回は、データ分析における本質的な課題の探し方について考えたので、BtoBのMA(マーケティングオートメーション)の事例を交えながら書いていきます

※本投稿では本質的な課題を、目標と現状にギャップがある状態(問題)の中で、表面的ではなく根本的に改善すべき取り組みと定義して進めます。


1.データ分析をはじめる前に

  「とりあえずデータ集計して考えよう」になっていないか?

 時間が有限である以上、ムダの無い分析業務を行いたいとみなさんは思っているはずです。しかし現実は、データ分析に対する知見の不足や数字に対する抵抗感から思考が止まってしまい、結果「とりあえず集計していたら何か見えてくるだろう」という考えなしの行動をすることが少なくないと思います。

 しかし、データ分析は本来、分析結果から得られた示唆をもとにビジネスを改善させることが目的のはずです。探索的にデータを分析することが結果的に改善されるケースもありますが、これは確率論の話で、分析成果を得るのにどれだけ時間を要するか見当がつきません。

 特にMAやCRM領域においては、GA4やサーチコンソールのようなWeb上の行動情報以外にも、顧客属性や売上金額などのデータもあわせて分析することが多いと思います。そんな大量データの中でも分析の目的を定め、取捨選択しながら成果を出すことを考えると、「目標達成に向けて売上金額・商談数の拡大につながる示唆を出すこと」に情報を絞って、データ分析に取り組むべきではないでしょうか

  KGIと現在地のギャップはどこか?

 実際にデータ分析を始めるまえに、まずはKGIと現在地のギャップを把握することが大事です。具体的には、KGIを因数分解した数式モデルに現在の集計数値を当てはめることで、数値のギャップを把握することです。

 例えば「2024年度の最終成約数100件」をKGIとした場合、添付のように数式化できます。

 極力シンプルにかつ少ない情報で分析に着手すべきデータを絞り込むためにも、このようにKGIを数式化することは重要になります。この見込み顧客という因数も、社内で設定しているリードステージ数によって更に細分化することができますが、まずはKGI達成の数式をつくり、KGIと現在地のギャップを把握することから始めるべきでしょう。

  解を出すべき本質的な課題にリソースを割く

 ビジネスにおける課題は無数に存在すると思っています。予算が足りない、コンテンツ内容が悪い、人員が少ない、組織体制がビジネスにそぐわない。言い出すとキリがない程、私たちの周りには課題が存在しています。

 すべての課題に対して取り組み、理想の状態を実現できればいいのですが、日に日に課題が生まれているので、課題発生数に対して解決数が追い付きません。だからこそ、ビジネスへのインパクトが大きい課題から優先順位を付けて取り組む必要があります。

 とすれば、解を出せばKGI達成に大きく貢献できるインパクトの大きい課題、つまり根っこの本質的な課題を見つけることで、少なりリソースで効率よく改善できます。

 本質的な課題を探すことが難しいことは理解していますが、それでもデータ分析においてはこの本質的な課題を捉えなければ、有用な示唆が出せずビジネスの改善につなげられません。なのでここからは、私が考える本質的な課題の探し方についてお伝えします。

2.本質的な課題の探し方

 データ分析における本質的な課題の探し方について、いくつかのステップに分けて考察していきます。

  ①一定量のデータを集める

 本質的な課題を探すにあたり情報収集は欠かせません。なので、まずは一定量のデータを集めることから始めます。実際にビジネスの現場で何が起こっているのかを指標数値で把握することで、目標達成の阻害要因を客観的に洗い出すことができます。

 実際にMAツールでは、リードの獲得経路からメール開封率にURLクリック率、またGA4や社内システムツールと連携すると、遷移先ページ内のコンバージョン数や顧客別の購入金額など、MAツールだけでは計測できない範囲で分析することも可能です。

 しかし、ここで注意したいのが、「とりあえず集められるデータは全て集める」が目的化してしまうことです。これはマーケティング活動でもよく見かける「とりあえずフレームワークを使って整理する」と、フレームワークを使うことが目的化した現象と同じだと思ってます。

 情報は、加工次第で無限に収集できます。企業規模別のクリック率、都道府県別のメール到達率、時間帯別のURLクリック率。分解していくとキリがありません。そこに時間と労力を過度に割くとかえって情報洪水に流されて、どの情報を分析に活用すればいいか分からなくなってしまいます

 なので、「適切な情報収集量」という明確な定義はないと思いますが、ビジネスの目的に必要だと考えられるデータのみを対象に集める方が良いと考えます。感覚的な話になりますが、とにかく情報を集めすぎないよう注意すべきでしょう。

  ②課題のアタリをつける

 そうすると、一定量の情報を収集できたかと思います。しかし、ただ情報を収集しただけでは、KGI「2024年度の最終成約数100件」未達の原因がどこにあるのか、まだ分かりません。

 そこで次に行うのが、課題のアタリをつけるです。KGI未達の原因について、いくつか仮説を持つことが必要になります。※仮説の切り口は、その人の知見や経験に依存するので、仮説の精度を上げるためには場数を増やすしかないと思います。

 例えば、成約数が伸びないという問題として、メール文章の内容に課題がある、シナリオに課題がある、メールで紹介するホワイトペーパーに課題がある、もしくは商談での提案内容に課題がある、などいくつか挙げることができそうです。

 ですがこの状態では、まだその人の経験・勘で出した仮説止まりで、もっともらしい仮の答えのままです。これらのアタリから、本質的な課題が潜在していないかを洞察していく必要があります。

  ③分解して比較する

 そして、②で構築した仮説が正しいかを検証するために、データをさらに洞察していきます。分析では、共通する項目でそれぞれグルーピングして、グループ間で効果数値を比較することが一般的だと思いますが、「メール文章の訴求に課題がある」を例に挙げた場合、添付のように訴求軸でグルーピングができそうです。

 それぞれのグループでデータを抽出することで、例えばURLクリック率や、コンバージョン率などの指標数値を比較対象に、グループ間で差分を計測することができます。そして計測した結果、グループ間の差分が有意ではない場合、メール訴求はKGI未達の本質的な課題には該当しない、もしくは全体的にメール文章の内容に問題がある可能性が高いと判定します。

補足)グループ間の数値の差分が意味のある差分か否かは、統計学の有意差判定にて判断することができます。検索エンジンで調べてみましたが、有意差判定ツールを無料で利用できるページが公開されています。ぜひ使ってみてください。

 本質的な課題ではないと判定した場合、別でアタリをつけた課題に焦点をあてて、分解と比較の作業を行っていきます。もしアタリをつけていた課題を分解しても有用な結論が得られなかった場合、MA施策(HOW)以前の問題として、ターゲット(WHO)や提供価値(WHAT)を見直す必要がありそうです。

 このようにアタリをつけた課題から、成果に関わる項目(ここでいうメールの訴求軸)で複数のグループに分解することで、項目単位での数値比較をすることができます。こうすると課題の範囲が狭まり、より的確に本質的な課題を特定することができるようになります。

  ④「なぜ?」を繰り返す

 分解して比較しただけでは、本質的な課題にたどり着いたとは言えません。比較した指標数値はあくまで施策の成果であり、表面的なものです。

 そこで最後に、分解した数値結果からなぜ?を繰り返します。ここからは仮説思考がかなり重要になります。

 例えば、先ほどの分解したメールの訴求別コンバージョン率を比較したとします。するとカスタマイズ性を訴求したメール文章が、他の訴求内容と比較して低いことが分かりました。

 そこからがなぜ?を繰り返す番です。なぜカスタマイズ性は、他の訴求と比較してもコンバージョン率が悪いのか?と問いかけを行っていきます。

 例えば、「カスタマイズ性の価値がそもそも伝わっていないから?サービスにカスタマイズ性が求められていないから?」と1回目の問いかけを行い、そこからさらになぜ?を繰り返していきます。

 「コピーの表現が悪いから伝わっていないのか?カスタマイズはもはや当たり前で、独自性ではないから?」など、さらになぜ?を繰り返すことで新しい仮説が生まれます。

 もし、マーケティング調査の結果からも、このカスタマイズ機能が本当に顧客にとって便益であり、インパクトの大きい要素だと考えるのであれば、ここでいう本質的な課題は「カスタマイズ性を魅力的な独自性として伝わるように表現しなければならない」だといえそうです。

 補足)ここで例に挙げたカスタマイズ性訴求ですが、このカスタマイズ性を見直す以前に、最もコンバージョン率が高い業務効率性の訴求メールの送信数を単純に増やすことで、KGIを達成する可能性も考えられます
 そうなると、業務効率性訴求のメール送信数が少ないことが本質的な課題と考えられそうなので、一部のデータだけを見ないようバイアスに注意することも大事になります。

 少し簡潔に書きましたが、このように「なぜ?」を繰り返すことで、結果数値の裏側にある本質的な課題へアプローチし、KGI達成に必要な改善アクションを見出すことができるようになります。

  ※補足)複数の既存顧客データから、共通点を探索する

 もし既存顧客のデータが社内で蓄積されている場合、複数の既存顧客データから共通点を探索することも有用です。

 例えばMA施策でいうと、購入金額の上位10~20%の顧客を対象に行動ログデータを分析するとどうでしょう。すると、未購買顧客の行動ログデータと比較することで、自社の提供価値を理解した顧客に共通する行動パターンが観察できたり、その行動パターンから顧客に刺さるコンテンツを客観的に知ることができたりするのです。

 このように特定のグループ間で共通する行動パターンを発見することで、全体データからでは見えなかった新しい気づきが得られたりします。


3.「分解して比較する」スキルセットが必要

 簡単でしたが、以上がBtoB MA事例で私が考えるデータ分析における本質的な課題の探し方でした。結局はデータを分解・比較してどんどん仮説を構築していく作業になりますが、ある程度的を絞ることで情報洪水におぼれず、効率よく分析することができると思います。

 また周りの声を聴いていると、指標数値を集めてレポートを作成するだけの作業をデータ分析と呼ぶ方もいらっしゃいますが、私はそうだと思いません。それはただの集計報告です。

 安宅和人氏の有名な著書「イシューからはじめよ」で、分析について安宅氏はこう答えています。

「分析とは何か?」
僕の答えは「分析とは比較、すなわち比べること」というものだ。分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同志を比べ、その違いを見ることだ。
~~中略~~
つまり、分析では適切な「比較の軸」がカギとなる。どのような軸で何と何を比較するとそのイシューに答えが出るのかを考える。これが絵コンテづくりの第一歩だ。定性的な分析であろうと定量的な分析であろうと、どのような軸で何と何を比べるのか、どのように条件の仕分けを行うのか、これを考えることが分析設計の本質だ。

著書「イシューからはじめよ」ーー知的生産の「シンプルな本質」

 「比較の軸がカギ」と安宅氏が答えている通り、データ分析は比較がなければ意味を持たない業務になるということです。つまりMA施策のデータ分析においては、単なる目標と現状のギャップ比較ではなく、メール訴求軸での比較、顧客属性軸での比較など、KGI達成に直結する本質的な課題を特定するために、意味のある分解をして比較すべきではないでしょうか

 ということで、最後におさらいをして終わりにします。

■本質的な課題の探し方
①一定量のデータを集める
②課題のアタリをつける
③分解して比較する
④「なぜ?」を繰り返す

本記事のまとめ

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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