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大好きな「佐藤晴真 チェロ・リサイタル」_2023年11月30日

紀尾井ホールで、大好きな「佐藤晴真 チェロ・リサイタル」を聴いてきました!

「その格調高い構成の中に、思いもよらぬほど心惹かれる瞬間がちりばめられています」ーー。

佐藤さん自身の言葉でプログラムに書かれていた通り、実に味わい深く、豊かで美しい音でした。
格調高い音の奥に情緒豊かな情景が、まるで透明な水をたたえた煌めく泉のように存在しているのを感じたのです。

1曲目のL.v.ベートーヴェン「チェロ・ソナタ第3番イ長調Op.69」を聴きながら、
「こんなに”歌う”ベートーヴェンって、これまで聴いたことがないかも知れない」
と衝撃にも似た感動を覚えました。

ちょうど今が冬だからなのでしょうが、まるで暖炉の前で回想しながら、遠い記憶とともに春から初夏、夏や秋と巡る四季の中を旅するような郷愁を感じました。聴きながら感情が二重、三重と皮膚の内側に生まれていたのです。

3曲目のJ.S.バッハ「ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ 第3番 ト短調 BWV1029」は、まるで教会の中で聴いているような響きがあり、敬虔な気持ちで聴きました。
とはいえそれだけではなくて、佐藤さんの音を聴いていると、ひざまずいて神を見上げているのではなく、人々の暮らしの安寧を見守っている神の視界を分けてもらえているような。それにより神に見守られていることを穏やかに確信するような、温かさを感じました。

「ああ、そこ(世界)には人がいるんだな」
「人が登場する音楽なんだな」
という、あたたかな存在感。とても深い安心感でした。

とりわけ惹かれたのは2曲目のR.シューマン「幻想小曲集 Op.73」で、音が響いた瞬間から鳥肌が止まりませんでした。
色彩が溢れ続けるロマンティックな音でありながら、重厚な気配がある。なんとも格好いい音色でした。

何よりアンコールでR.シューマンの「献呈」を聴けたときには、喜びで涙が溢れました。
というのも、佐藤さんの演奏会の2日前。サントリーホールで行なわれた反田恭平×NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団の演奏会でも、私はR.シューマンの「献呈」を聴いたのですが、あいにくちょっとした事故に遭ってしまい、音楽だけに全身を浸すことができなかったのです。
そのとき心に負った傷が癒えていくのを実感しながら、あらためて自分の人生に音楽があることを神に感謝しました。

幸福です。


紀尾井ホールを出ると、目の前にある「ホテルニュー・オータニ」のイルミネーションも美しかった

<出演者>
佐藤晴真(Vc),佐藤卓史(Pf)
<曲目>
L.v.ベートーヴェン:
チェロ・ソナタ第3番イ長調Op.69,第5番ニ長調Op.102 No.2 
R.シューマン:幻想小曲集 Op.73
ヴィオラ・ダ・ガンバ・ソナタ 第3番 ト短調 BWV1029
J.S.バッハ:
チェロ・ソナタ 第5番 ニ長調 Op.102 No.2
<アンコール>
R.シューマン:献呈

【ききみみ日記】
★今回で投稿130回目になりました★
オペラ・クラシック演奏会の感想をUPしています。是非お越しいただけますとうれしいです。
(2022年10月10日~2023年1月15日まで101回分を毎日投稿していました)

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