無邪気な子どもとヴァイオリンが出会った瞬間_クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)&キヴェリ・デュルケン(ピアノ)___2023年3月5日
2023年3月5日、クリスティアン・テツラフ(ヴァイオリン)&キヴェリ・デュルケン(ピアノ)の演奏会に行ってきました。
テツラフさんのヴァイオリンを聴くのは初めてだったのですが、演奏後に思わずこんな声が漏てしまいました。
「ヴァイオリンって、こんなに色々な音が出るんだ……!?」
ヤナーチェク「ヴァイオリン・ソナタ」もそうでしたが、とくに2曲目に演奏されたバルトーク「ヴァイオリン・ソナタ第2番 Sz76」は、無邪気な子どもとヴァイオリンが出会った瞬間、お互いがわくわくしながらセッションしているような音でした。
楽器「今度はこんな風に弾いてみて?」
子ども「うわあ、こんな音も出るんだね! じゃあ、こう弾いたら?」
楽器「こう鳴るよー!」
2人(?)「楽しいー!」
そんな言葉も聞こえてきそうなほど。
音の余韻ま毎回コントロールされた立体的な演奏からは、情景が広がるような音だったり、幾何学模様のような音だったり、やわらかかったり、水晶の先端のように煌めいていたり、透明だったり---。様々な音が爆ぜるように生まれてきました。キヴェリさんのピアノも、呼吸の1つひとつまでそれらの音と合っていて、スリリングでとにかく美しい時間でした。
後半のスークの「4つの小品」もよかったのですが、何よりブラームス「ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.108」は、歌うヴァイオリンとともに聴き手の心も自由に飛翔するような曲でした。
あっという間に感じる演奏会で、とにかく楽しかった。
豊かで自由な音色に触れることほど、心を開放し、力が満ちることはあるでしょうか。
演奏会が行われたトッパンホールは、椅子がゆったりしていて、個人的に大好きなホールの1つです。何より、音の響きがすばらしい! ホールのすみずみまで音が均等に満ちているように感じます。
情けないことに、この感覚を言語化するのは難しいのですが、ホールによっては「きっと、あの辺りまでしか密度の高い音に包まれてはいないのだろうな」と、自分が包まれている音の範囲の限りを背中でなんとなく感じることもあるのですが(大して耳の肥えていない私の感覚なので、事実とは異なるはずです。悪しからず)、
トッパンホールは自分が包まれている音の範囲がホールいっぱいに感じるのです。
テツラフさんの音色をこのホールで聴けたことは、何より幸せでした。
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