宮田大チェロリサイタル_2022年11月26日
昨日、 宮田大さんのチェロリサイタルに行ってきました!
正式には、『「横浜市栄区民文化センターリリス 開館25周年記念特別公演」 宮田大 コンサート・シリーズ 第1回宮田大チェロリサイタル』。
ピアノは、宮田さんが「10年以上ともに演奏している」と言うジュリアン・ジェルネさん。コロナ下で再会するのは2年ぶりとのことですが、「音楽を通して語り合っている盟友」、「チェロソナタでは、ピアノはチェロの伴奏ではなく対等」という言葉から、二人の絆の深さを感じました。
宮田さんは演奏する前に毎回、曲の解説をしてくれました。穏やかな口調で、平易な言葉で表現するので分かりやすく、語られるエピソードや情景が共感を伴って頭に浮かぶ。聞いているうちに、曲に対して私の心がより開いていくのがわかりました。
ラフマニノフの『パガニーニの主題による狂詩曲』が、まるで薄い生地のリボンをほどくように演奏会の幕を開けると、カプースチンのジャジーな楽曲や、郷愁に胸が締め付けられながらも”ほっこり”とあたたかい、グラズノフの小品が続く。前半の最後に演奏された松村崇継作曲『Earth』では、意識が肉体を抜けて、そのまま宙へ。俯瞰していくような感覚を味わいました。「こうしてみればすべて1つ」と思った瞬間、取るに足らない個人的なこだわりから解放されたようでした。
後半はラフマニノフの『チェロ・ソナタ ト短調 作品19』。
最初に完成させた『交響曲第1番』の不評により長いスランプに陥ったラフマニノフが、作曲家として立ち直る過程で創られた曲。
宮田さんは「ラフマニノフの人生」が投影されたこの曲がもっとも好きで、「自分の葬式にはラフマニノフ『チェロ・ソナタ』の3楽章を流してほしいと、周囲(の人たち)に言っている」そう。
「最後にようやくレンブラントの絵画のような一筋の光がさして。そこに向かって進んでいく心の強さが現れているような曲」
このコメントを胸に演奏を聴いていると、1~3楽章でトラウマから抜け出そうと地を這いながら、それでも美しい音の片鱗を自分の中からたぐりよせ、「書きたい!」という音楽への情熱と渇望を支えに闇の中を進む作曲家の姿、がありありと浮かびました。
そして、暗闇がために人間の目では見えないけれど、もがいている間も常に音楽の神様が彼とともにあった。そのことを感じ、涙が溢れました。
当然ながら私は作曲家として名を馳せてからのラフマニノフしか知りません。そして、人はよく才能を開花させた人を「神に選ばれし」と言いますが、宮田さんの演奏で『チェロ・ソナタ』を聴き、イメージ上のラフマニノフとともに4楽章でようやく光に包まれると、「神様って、こういう”酷な選び方”もするんだよなあ」と、思ったのです。
演奏中、舞台から聴こえてくる宮田さんの息遣いに、気づけばこちらの呼吸も同調していました。スイングする時の立体的な波紋や、消えゆく瞬間まで輪郭の見える、響きの裾。ウッドベースのように弾かれる音。のびやかに、重厚感を伴って響きわたる音を体感しながら宮田さんの演奏を聴いていると、「チェロって、弦楽器だったんだな」という当たり前のことを、あらためて実感しました。
※ 当日の記憶を基に書いており、ご本人確認をしていません。そのため、上にあるご発言が正確でなく、意図や内容をミスリードしてしまう箇所もあるかと思います。何卒ご容赦いただけますと幸いです……m(_ _)m