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ティール組織と大企業。実はそんなに相性悪くない…???

ティール組織は、2014年にフレデリック・ラルー氏が提唱した現代型の新たな組織形態のことです。2018年にはラルー氏の著書『Reinventing Organizations』の翻訳版が日本で発売され、実に7万部もの大ベストセラーになりました。

 ※ティール組織についての詳細を知りたい方向けの記事はこちらになります!

そんなティール組織ですが、実際に職場に導入できた人は非常に少ないのではないのでしょうか?

・自分の職場は大企業文化でとてもティール組織を取り入れるなんて無理。
・ティール組織は先進的なCEOがいるベンチャーでないと導入できない。

上記のように考えている人も多いのではないのでしょうか?
しかし、こんなことは断じてありません。

結論から申しますと、ティール組織は大企業と相性が非常に良いのです。
この記事ではその理由を以下の2つの観点から考察してみたいと思います。

1. ティール組織の試行錯誤と経営体力
2. 組織の存在目的の流動性がティール組織にもたらす影響

1. ティール組織の試行錯誤と経営体力

ティール組織はその先進性からか、非常に試行錯誤期間が長い取り組みとされます。実際、ラルー氏の著書の中でも

従来の階層的組織から転職してきた人々は、はじめのうちは自主経営に戸惑うかもしれない。

とあります。(ちなみに自主経営とはティール組織を形作る3つの柱の1つです。)

そしてこの著書の中では試行錯誤は良い事と捉えられています。
しかし、これがティール組織を導入するベンチャー企業が陥る大きな落とし穴です。

もちろん、試行錯誤自体は悪い行為ではありません。しかし、この長い試行錯誤期間が既存の多くの組織にとって重荷になることは確実です。

ティール組織を 試行錯誤

①ティール組織を試行錯誤
ティール組織を実践するには、前述の通り試行錯誤の作業が必要となります。これは21世紀前半を生きる人類の多くは未だオレンジパラダイム(ティール以前の考え方を持つこと)におり、ティールの考え方に慣れるには一定時間の練習期間が必要だからです。

②営業利益を生まないまま企業体力が削られていく
ティールの考え方に慣れるために練習をしている社員からは中々重要なアウトプットは出てきません。なぜなら、その従業員は自分の考え方を180度変えるという非常に労力を取られる作業をしているからです。この間に通常のアウトプットを出しているようではその従業員はティールパラダイムへと移行することができません。
察しの良い皆さんなら、もうお気づきかと思いますが、この作業は1週間やそこらで終わるものではありません。少なくとも1~2か月、かかるひとはそれ以上かかるプロセスになります。そしてこの間、組織はその人に給与を支払い続けることになります。すなわち、ティール組織を形成することはどんな組織改革よりも企業体力が削られる行為となります。

③成果を生み出せないことにプレッシャーを感じる
従業員は企業体力が削られる間、自身がなんのアウトプットも生み出せていない状況が続くことになります。これに対してオレンジパラダイム(ティール以前の考え方を持つ)従業員は責任やプレッシャーを感じることになります。なぜなら、オレンジパラダイムでは従業員はコストと成果を非常に重視しており、コストに見合わない従業員は切り捨てられるべきという考え方を持つからにほかなりません。

④ティール組織をやめてしまう
このようなプレッシャーを抱え続けることにより、従業員は以下の2パターンの行動をとることが予想されます。
1. ティールパラダイムに移行できず、オレンジパラダイムのままアウトプットを出し続ける
2. ティールパラダイムを要求される組織になじむことができず、組織をやめてしまう

これこそがティール組織の瓦解へのメカニズムになります。
このメカニズムを理解すると、自ずとティール組織に必要なことが見えてきます。それは

組織の企業体力の多さ

です。ここで、企業体力という言葉には「マネジメント層の心のゆとり」や「金銭的なバッファー」といった意味が含まれています。
そして、この企業体力こそ大企業が優れているポイントになるのです。

①マネジメント層の心のゆとり
こう書くと大企業のマネジメント層の方からお叱りを受けそうです。が、ベンチャー企業の役員等と比べれば、やはり心理的余裕はあると言わざるを得ません。この心理的余裕は部下への寛容へと繋がり、ある程度の時間は成長への必要過程としての是認に繋がるのです。

②金銭的なバッファー
安定的な売り上げ見込みが立てられる大企業は、金銭的バッファーを多く蓄えていって良いでしょう。この金銭的バッファーは従業員の心理的安全性を保障する一要素と言えます。例えば、いつ潰れるかも分からないベンチャー企業で働いている従業員が成長のために1~2か月無駄にすることに従業員自身は耐えられるでしょうか。人間はそこまでプレッシャーに強い生き物ではありません。多くの人が給与というコストに見合ったアウトプットを出そうとし、オレンジパラダイムに戻ってしまうでしょう。

このような理由より、企業体力のある大企業はベンチャー企業に比べてティール組織の初期段階を乗り切りやすいという傾向が存在しています。

2. 組織の存在目的の流動性がティール組織にもたらす影響

ティール組織は『自主経営』『全体性』『組織の存在目的』という3つの柱で成り立っています。今回はその中でも『組織の存在目的』に着目します。

組織の存在目的はVISIONと呼ばれるような、その組織が社会の何を変えようとしているのか?もしくは何を守ろうとしているのか?という最も重要視される理念のことです。
この理念はティール組織においては全従業員で認識が一致していることが重要とされます。

では、ここでベンチャー企業を思い浮かべてみましょう。
ベンチャー企業ではよく『PIVOT』という行為が行われます。PIVOTとは事業転換のことで、より自分たちが活躍できる領域に指針を転換することを言います。

このPIVOTという行為がベンチャー企業の身軽さの象徴です。この身軽さが昨今のベンチャー人気を支えているといっても過言ではありません。

しかし、このPIVOTという行為はティール組織にとってはかなり命取りな行為になります。なぜなら、ティール組織の『組織の存在目的』という柱が簡単に変更されてしますことに繋がるからです。

事業がうまく いかなくなる

上記の図のようにPIVOTを行いやすいベンチャー企業では、経営陣が容易にPIVOTができることにより組織の存在目的(=事業)が簡単に変更できてしまいます。
そしてこの変更に最もダメージを受けるのが、従業員です。なぜなら、従業員たちは変更前の組織の存在目的(旧VISION)に賛同して会社に入社していることが多いので、新たな組織の存在目的を簡単に受け入れることは難しいのです。

その反面、大企業ではそもそもPIVOTを行うことが難しい構造になっています。これは当然ながら人数が多く、組織構造が複雑であることに起因しています。構造が複雑であればPIVOTを行うことが難しく、組織の存在目的もなかなかぶれることがなくなるからです。

まとめ

ここまで読み進めて、大企業がベンチャー企業よりティール組織に向いているといった理由がなんとなく理解できたでしょうか?

もし理解できたとしても、あなたは以下のような疑問も同時に抱いているかもしれません。

・人数の多い大企業を一気にティール組織にするにはどれだけの時間と工数を割く必要があるかわからない。
・そもそも情報の量が膨大である大企業の中で、ティール組織を運用しようとなると情報集約の場であるイントラネットの構築だけでとてつもない時間がかかる(もしくは業務量が肥大化しすぎる)

これらの疑問はまさしく、大企業にティール組織を適用する際の問題点でもあります。

これらの問題点に対してはさらなる考察や別の手法の開発が必要でしょう。しかし、今まで大企業への導入は難しいと考えられていた『ティール組織の考え方』が実は大企業に向いているのではないか?という新たな視点が今回の考察でわかった重大な点です。

もし、今まで「ティール組織は読んだけど、うちの会社では無理だなぁ」と諦めてしまった経験があるならば!

ぜひ!御再考してみてはいかがでしょうか??

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