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[場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)・緘動(かんどう)・発達障害・不安障害・不登校などの生きづらさ]への理解 第20話 「エネルギーの器〜心因性嘔吐症」


(ご理解いただけたら、周りの方に伝えたり、この投稿をシェアしていただけるとうれしいです。)

長女は4歳の時、幼稚園入園をきっかけに場面緘黙症・緘動(※1)を発症しました。二女は8歳の時分離不安障害(※2)と診断されました。
我が家の3人の娘たちは園や学校に行かず(行けず)家庭を中心に過ごしています。
※1:家庭などでは話すことができるのに、社会不安のために、ある特定の場面、状況では話すことができなくなる疾患。強い不安により体が思うように動かせなくなる「緘動(かんどう)」という症状が出る場合もある。
※2:分離不安障害とは、愛着のある人物や場所から離れることに対し、過剰な不安と苦痛を感じる精神医学的障害のひとつ。
症状や困難さはそれぞれかと思いますが、我が家の場合を伝えていきます。

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二年半ほど前、二女が9歳になったばかりの頃、心因性の嘔吐症が見られるようになりました。

心因性嘔吐症とは、嘔吐の原因となる身体的な異常が見られず、ストレスが誘因や原因となって発症する病気です。
吐き気が主な症状で、嘔吐することはそれほどありません。
また、「条件付け」(前にそうなったときと似た状況になると吐き気を催す)によって繰り返し症状をぶり返すことがあります。
この、「条件付け」は生まれもっての気質や自閉症スペクトラムなどの発達の問題により発生しやすいこともあるそうです。

二女の場合、感覚の過敏性や不安の強さ、分離不安障害また、強迫観念の強さがありました。

小さい頃から喉の通りの感覚に苦手がある二女は吐き気を感じたとき、「吐いたら喉が詰まって息ができなくなるのでは」という嘔吐恐怖を同時に持ち合わせ、パニック状態になりました。

その日から、吐き気と吐くことへの恐怖を繰り返し、強い症状が出る状態が数ヶ月続きました。
その数ヶ月の間、二女にとっての「条件付け」の対象は増えていきました。

目覚める、眠る、食べ物の匂いがする、空腹を感じる、誰かが訪問する、どこかへ出かける、家族以外の人に会う、など、吐き気を感じた時そうだったという状況は、吐き気を引き起こす「条件」となっていきました。

避けられる「条件」をなるべく遠ざけ、食事を頻回にするなど、医師に相談しながら、徐々に頻度や強さは弱まり、ずいぶん減っていた体重も少しずつ戻りました。

その後も「条件付け」が働くと吐き気が出るものの、長く続くことはなくなり、発症から一年、もう心配いらないかなと感じ始めていました。
ところがある時、ふとしたきっかけから、また初期のような症状が出ることになり、発症から二年半の間に程度の差はありますが、心因性嘔吐症の症状を繰り返しています。

その度に「条件付け」はより強くなるようにも思います。

「そうしたい」という思いはあっても、「そうしたら、また吐き気が始まるかもしれない」という不安が高まります。
そしてその不安や緊張が高まると、吐き気をまた感じてしまい、「やっぱりできない。こわい」となるのです。

「やってみたら大丈夫だった。」という成功体験を重ねることが克服に繋がるのかもしれませんが、不安や緊張を感じた時点で吐き気を感じてしまうので容易ではありません。

ある時カウンセラーさんがこんな言葉を教えてくれました。

「エネルギーをためる器は、年齢と共にあるいは、経験を積み、少しずつ大きくなるでしょう。

でもその器は、広がった分、もろく壊れやすくなっているかもしれません。
また、強い部分、弱い部分があるかもしれません。

器を広げることよりも、今持っている器を頑丈にしたり、弱い部分を補ってあげることが必要であることもあります。」

できるようになったことが増えたり、以前より前進していたり、また年齢を重ねたり学年が上がると、もっと増やしたり、進んだりしてほしいと考えます。
もちろん、それらが背中を押す大きなきっかけになることは多いでしょう。
そう期待してくれることが、本人のエネルギーになることもあるかもしれません。
不安に付き合い、可能性やチャンスを遠ざけることは、もったいないことかもしれません。

しかし、まずは元気になること。

二女は最近「体調が悪くなると、さみしい感じがする」と話してくれました。
きっと、二女の器のもろさがそう感じさせているのかもしれません。

元気な状態をなるべく長く続けることで、そのもろい部分は頑丈になると思っています。

心と体が本当の元気を取り戻すには、周囲の理解と協力が不可欠です。
そして、本人が希望をなくさないことで器はゆっくりでも少しずつ大きく強くなるのかもしれません。

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例は、娘のケースです。

(注)私たち家族は長女が診断されて以来、下の二人の娘も含め、療育、相談、医療の機関に定期的にカウンセリングに出向き、登校できなくても、在籍する学校の先生と連携を取っていただいています。


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