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陽だまりに包まれて

''明るいな〜(笑)''

気になる先輩が、わたしを見て笑う。


先輩に対して、かなり心を開いているし
感性が近い部分が多く、
何を伝えても会話が成り立つ自信があるので
思ったことをなんでも口に出せる。

''小松菜奈ちゃんに似てるって言われちゃいました!え、もうこれ菅田将暉と結婚できますよね''

''見てくださいこれ!○○って書いてある(笑)''

しょうもないこと、唐突なことばかりだけれど、
そんなわたしを見て、
''明るいな〜(笑)''
と先輩は笑う。

その陽だまりのような笑顔が、わたしを安心させてくれる。


先輩はわたしのことを、''明るく情緒が安定している人''だと思っているみたい。

それほど間違っていないけれど、本当の心の中は結構暗いし、不安定だよ?

''わたし根暗ですよー''
と何度言っても、あまりわかってくれない。

本当の暗く不安定な部分は、基本的にひとりぼっちの時にしか発揮されないから、誰にも想像できなくて当たり前かもしれないけれど。

先輩ともっと近い距離になりたいと思う自分と、本当の暗い部分を見せてしまうのが怖いなという気持ち。


先輩に、恋人と別れた話をした時のことを話した。

''日本語、という意味ではなくて、共通言語がないと感じました。それがすごく不思議というか、悲しいというか、何とも言えない気持ちでした。''

''あ〜わかる。どんなに説明しても分かり合えない人っているし、そういう人だと分かってしまうとがっかりするよね。''

それで言うと、わたしと先輩には共通言語があるのだと思う。

バックヤードでタイミングが被った数十秒でも何かしらの会話をするし、店頭でも隙があれば会話をしている。

どんなに些細な会話でも盛り上がるし、楽しめる。

''先輩は、何歳で死にたいですか?''

なんて唐突に話題を振っても

''ん〜75歳くらいかな。本当はもう少し早くて良いと思ってたけど、この年齢になってもまだまだ自分の精神年齢が追いついてなかったから(笑)
もう少し生きないと、やりたいことやりきれない気がする。''

と、わたしが納得できるような答えを返してくれる。

話していて、''ん?どういうこと?''と感じることが今のところひとつもない。

きっと、わたしも先輩も、同じくらいの程度で世の中にアンテナを張っていて、視点も近いのだと思う。


先輩と仕事終わりにコンビニでお酒を買って飲んだ夜。

駅に向かう途中の自動販売機の側。缶のゴミ箱があった。

''あ、あそこに捨てて行きます?''

''あ〜駅前のコンビニで良いかなって思ってたけど、確かにあそこに捨てた方が確実だね!''

先輩への気持ちが大きくなったのを感じたのは、この時だった。

ここで
''駅前のコンビニでよくない?''
と言われていたら、心を閉ざしていたかもしれない。

(めんどくさい人間だ)

相手の意見を受け入れつつ、自分の意見も伝えてくれる。
そういう人が大好きだし、わたしもそういう人でありたいな。


この人といたら、楽しいんだろうな。

日に日に気持ちが大きくなる。

先輩と街を歩いたら、たくさんの発見があって
あちこち視点が移るわたしを見て
''明るいな〜(笑)''
と陽だまりのように笑ってくれるんだろうな。

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