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【美術と自由研究】ファッションと建築と折り紙工学-イシガキフグからイッセイミヤケまで

「お母さんはいつも自由研究をしているよね」と子どもたちに笑われます。
学校の勉強はどうしてもやる気になれなかったくせに、
今になってこんなに学び欲があふれてくるなんてね。と私。
でも楽しくてしかたがないんだよねと言うと、
子どもたちは「ステキ!」と言ってくれるから調子に乗ってしまいます。 こんなに学びが楽しいのは発表できる場があり、誰かに読んでもらえるということの喜びも大きいなあと思っています。noteさんのおかげです!
ありがとうございます!

さて、今回は建築の展示に行ってきました。
またまた全然知らないわからない世界です(苦笑)
でも展覧会のタイトルが「感覚する構造(後期)ー法隆寺から宇宙まで」だなんて、これは絶対おもしろそう!見なくちゃ!と思いますよね!(笑)

法隆寺の五重塔は地震大国日本の地で1000年以上も倒れず現存しているんですよね!すごすぎます!
どうしてそんなことが可能なんだろう?こんなに昔から耐震性っていう考え方があったんだろうか。どんな技術があったんだろうか。

今回はより理解したいと思い、法隆寺五重塔に関しては少し予習をしていきました。
まずは真ん中の柱。これがただ、本当に柱だけがあるんですね。
心柱しんばしらと呼ばれる太い柱が下から上にまで伸びていて、そのまわりには階段も何もなく吹き抜け状態なのだとか。だから揺れてしなる時にまわりになにも影響しない。でも、それがどうして倒壊しないことにつながるのだろう?
現地の模型で早速確認しました。

ほんとだほんとだ!
真ん中に太い柱がずーっとのびているのがみえます

模型のそばにあった図解説明がわかりやすくて、とてもよく理解できました。

わかりやすい図があり、うむうむと理解!

法隆寺五重塔は「積み上げ構造」という、各部が独立して最低限の木組みだけをしながらそれを積み上げていく建築方法でなりたっています。このような構造は「柔構造」というのだそうです。
この図をみて、え!細部はそれぞれに動くの?重なっているだけ?各部がバラバラに動く?と驚きました。このように木材同士が固定されていないことで「エネルギーを吸収する振動の周期を長くして、地盤の揺れと共振しにくくする」のだといいます。
地震の揺れを吸収するという考え方の一つなのだとか。

地震の揺れを吸収するという事で思い出すのは、子どもたちが幼かったころ一緒によく行った国立科学博物館(東京・竹橋)の「建築館」のワークショップにて見せてもらった耐震実験のことです。高いビルに設置されている大きな丸い水槽の水が地震の揺れとともに回りだし、安定的に円を描きながら地震の揺れを吸収している様子をみせてくれました。
また、他の方法として、建物内の地面に車輪をつけて揺れと一緒に動くことで建築に負担をかけることもなく、また中にいる人たちはダイレクトに地震の揺れを感じないしくみになっていました。

法隆寺五重塔も、内部にあるものをわざと動かすものとして作り、その動きに揺れを吸収させるということではまさにこの科学館の実験と同じような考え方なのではないかなと思いました。

この柱の技術はスカイツリーにも使われているのだそうです。こんなに昔の技術がまだまだ参考になるってすごいことですよね!


でも法隆寺五重塔がこんなつくりー強いて言えば、こんな簡単なつくりだったとは思いませんでした。逆にもっとがっちりと支えているなにかがあるのかと思っていたくらいだったのでちょっと拍子抜けしました。
法隆寺五重塔が建てられたような時代には今のような技術も機械もありませんでしたが、釘を一本も使わずに1000年以上もしっかりと残された建築物を造ったのです。それは事実なのです。ということはどういうことなんだろうと、当時の大工さんの考え方を思わずにいられなくなります。

こういう場面で私は時々ハッとします。
日頃こんなふうに,
本当のことを見過ごしているのかもしれないと思ってしまうのです。

この場合だったら、
「自然」という大いなる先生のことを忘れていやしないかと。

法隆寺五重塔を建てようという時、当時の人たちにとって
現代よりももっと身近に自然があったことでしょう。
木の性質や自然の命をもっと知り尽くして、人間も自然に耳をかたむけ
自然から教えてもらおうという気持ちが強くあったであろうことを想像します。
法隆寺五重塔の美しい姿は当時の日本人の自然に対する心の姿でもあるのではないかと思えてきました。
そういう意味でもわたしたち現代人に教えてくれているのではないか。
そんなことも今回考えさせられました。




また、釘を1本も使わないということで思い出されるのは「木組み」のことです。以前、東京四谷三丁目にあるおもちゃ美術館というところで、「木組」のおもちゃ(おもちゃといっていいのでしょうか?)に出会いました。

当時幼かっだ次男はこのおもちゃが大好きでおもちゃ美術館に行くともうこればかり夢中でいじっていました。家にいてもアレをやりたいからまたおもちゃ美術館に行きたいと言うので何度も通ったほどです。
わたしもそのおもしろさと美しさに魅了され、次男がこういうことに夢中になるのがとても嬉しいと思いました。
今回の展示の中でもそういった木組みの技をみせてくれるものもたくさん展示されていました。

継ぎ手を1/2ずつずらして三方向に組み合わせることで、金物を用いず、手作業のみで組むことが出来る構法(三方格子)

やはり日本は地震が多い国なので耐震性の考え方は昔から考えられていたようです。この展示ではそういう見方だけでも様々な技法をみせてくれてとても興味深い模型ばかりで自由研究熱の血が騒ぎます。

これは白川郷合掌造りの模型です。

棒状の部材を縄締めでつなぎあわせています。それらで三角形の骨組みを作りトラスと呼ばれる非常に安定した構造を作り出しています。このトラスで構成された2階は蚕室として用いられていました。
 合掌梁の根元は 先のとがった駒尻によって置かれています。 コマの軸のようになっているんです。どの角度でも 駒が安定すると同じように 底辺を支える梁に差し込まれています。このちょっとした工夫が豪雪に耐えたり、多少の揺れでも安定している強度をもっているなんて!すごいなあ!


重力や風力などの力の流れを考え素材を選びながら建築家とともに構造デザインを考えるという仕事をしている、「構造家」と言う人たちの存在を今回の展覧会で初めて知りました。
今回の展示は、そんな全国各地から集められた100点以上の構造模型であり、どれも興味深く、本当にどれもが驚きと感動でした。(気が付いたら4時間展示室にいました!)

今回私が一番見たいと思っていたのは折り紙工学の構造についての作品でした。以前この折り紙工学に興味を持ったきっかけを noteにも書きました。

今回のWHATでの展示では若手構造家の下田悠太さんのインタビューがとてもおもしろく、会場でもじっくり聞いてしまいました。帰ってきてからサイトにこのインタビューが紹介されていたのでここにはりつけさせていただきます。
興味深い内容が詰まっています。

彼の作った模型は大型のテントのような形状でした。
下田さんはインタビューの中で詳しく説明してくださっているのですが、自然からのヒントをアイデアの中にたくさんお持ちでいらっしゃいます。
インスピレーションを得たそれらも一緒に展示されていました。

インタビューを聞くとこの展示物のおもしろさがわかります
ハリセンボンの仲間のイシガキフグの標本
イシガキフグのとげの構造がこの標本のように一本一本するどく立ち上がらせているときと、体になじんでいるときとあり、その収納力はまさに「折り紙」の構造を思わせるという話にワクワクしました。
様々なタネなど。それぞれのタネの飛ばし方などをインタビューの中でお話されています。私も以前カタバミのタネを飛ばすことに夢中になったことがあります。靴にたくさんタネがつくのですが、そうやって遠くに運んでもらうという植物のあざといと思えるほどのしたたかな生きる姿勢をとてもおもしろいと思いました
膜テンセグリティ構造の生成プロセス小型模型
「自由形状の膜テンセグリティパビリオン」
下田さんの作品です。内部から覗きこんだ様子です

さて、ここでまた興味深いWordに出会いました!
テンセグリティという言葉です。初めて聞きました。
この展示会場の後に行く「構造デザインの展開」のコーナーにてテンセグリティの作品が広がっていきます。
そしてテンセグリティという言葉からバックミンスター・フラーという人物につながっていきます。
なんだかすごく難しい世界になってきました!(汗)

テンセグリティとはバックミンスター・フラーによって提唱された概念。「Tension(張力)」と「Integrity(統合)」の造語なのだそうです。テンセグリティ構造というのは接着せずに安定している構造システムなので一見不思議な外見の面白さや不思議さが魅力です。
建築や構造設計の分野においては建物や橋の設計などを軽量で強靭な構造を実現するために、また耐震性を向上させることにも使用されています。
ロボット工学や宇宙探査の分野でも原理が活用され、しかしまだまだわかっていないことも多いため、今後の未来の技術や応用に可能性を秘めていると考えられ、研究がすすめられています。

バックミンスター・フラー(1895ー1983)という人物は20世紀を代表する技術科で工学者でもあり思想家でもあります。地球を一つの宇宙船ととらえ、エコロジームーヴメント(環境保護や持続可能性に焦点を当てた社会的な運動)やインターネット的思考を生むきっかけにもなりました。(フラーの思想は1970年代の多くの若者から支持を得、スティーブ・ジョブズにも多大なる影響を与え、のちにAppleの哲学にも反映されました)

フラーの造った有名な建築にモントリオール万博アメリカ館のドームがあります。

1967年。正三角形の格子を二重に重ねた構造部材で構築されています。
先ほどのイシガキフグの標本の肌も少し思わせます

ノースフェイスですでに販売されているというテントも展示されていました。やはりこれも基本は正三角形からの構造です。そしてたたむとかなりコンパクトになり持ち運びができます。

また、この構造デザインはファッションの世界でも広がりを見せ、イッセイミヤケのウエアが紹介されていました。
HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE(イッセイミヤケを代表する技法のひとつである「製品プリーツ」を背景に、着る人の多様性に寄り添う、普遍的で新しい日常着を提案する、2013年にスタートしたブランド・公式サイトより引用)の2023・24の秋冬コレクションはバックミンスター・フラーや同氏が生み出した構造体についてリサーチ、スタディからはじまり、とりくんだのだそうです。

以前三宅一生氏のことを書かせていただいたことがありましたが、今回の展示でますます進化している同氏のファッション世界に驚きました。
皮膚に近いものとしてのウエアであったり、民藝の世界を深く知ることで生み出されたウエアだったりと様々な挑戦をされていたファッションデザイナーでしたが、そうした氏の意志は今も受け継がれますます現代の人たちを虜にしたファッションを提案しつづけているのだなあと感じました。

正三角をベースにしたつくりになっているポンチョ
当時の店舗でのインスタレーション作品として展示されていたテンセグリティ構造

イッセイミヤケの作品でまさに折り紙工学の構造をもとにしたような衣服がありました。プリーツの無限の可能性をみせてくれています。

イッセイミヤケの興味深い noteをみつけました!
ご本人の許可なくここに載せさせていただきましたこと、どうかお許しください。

Naota_tさんの記事の展覧会はもうすでに終了していますが、イッセイミヤケの洋服に対するコンセプトがとてもわかりやすく書かれていて興味深い内容でした。この展示全く知りませんでした。是非みてみたかったなあ!と思いました。
また、Abbeyさんのこちらの展示は6月23日までなのですが、私はどうしても行けなくてこちらもとても残念です。でもとてもくわしく写真も載せてくださり、みたかった会場の様子がよくわかりました!ありがとうございます!



さて、この会場にて展示されていたものに、オーサグラフという地図がありました。これまたとんでもない世界を教えてくれました。全く聞いたこともない世界ですが、あの世界地図の一番真実に近い姿を見せてくれる方法を教えてくれているのです。
世界地図は様々な図法がありますよね。でも平面にすることでどれもどこかしらひずみがでてしまうということは授業中に聞いたことがありました。
このオーサグラフと言う地図は慶応義塾大学の鳴川肇先生が作られたもので、2016年にグッドデザイン賞に選ばれました。

アフリカの位置や角度には驚きました。
ここでまたバックミンスター・フラーがでてくるのですが、彼の提案したダイマキシオンマップはかなり大きさが正しいものなのだそうです。この地図は1934年につくられました。
このことは、私の尊敬するブルーノ・ムナーリの本「かたちの不思議3 三角形」にて紹介されていました。このムナーリのかたちの不思議シリーズも本当にとても面白く興味深い内容です


 この展示会場には「平行カメラ」という「今見ている世界の真実について」の説明もあり、とても興味深い内容だったのですが、私にはなんとなくピンとこなくて、理解することができなくて残念でした。
またこの後には宇宙の世界になっていったのですが、こちらでも折り紙工学が実践されたような作品がありました。

もう、知りたいことがいっぱい!
おもしろいなあがとまりません。
難しい、
難しいんだけど、面白い!

私の自由研究はいつもこんなふうに1人ワクワクしつつもよくわかんないなあ…という不安を伴うことも多く、この思いを夫や大学生の子供たちにしゃべります。今回は次男がテンセグリティの模型のことを知っていてもりあがりましたが、娘や夫には知らない〜といわれ、私だって全然わからないのでそこどまりになってしまいました。

娘にいわれました。「大学生とか、例えば理系のそういう職業の人ならまだしもさあ、こういうことを知りたいって、お母さんは何を目指しているの?」と言われてちょっと恥ずかしくなりました。そうだよね。たはは。

なんかね、世の中ってどうなってるのかなっ人間ってなんだろうって思うんだよね。本質はどこにあるのかなって思うんだよね。だからこんな難しくてお母さんの生活になんも関係ないようなことでも「そうなってる」みたいなことを知ると、わあ!知りたい知りたい!って思ってしまうのね。でも調べても日本語がわからなすぎて結局中途半端なこともたくさんあるんだけど。たはは。
「お母さんらしくていいなって思うよ!そんなお母さんでよかった!」なんて言ってくれる娘。
ありがたいなあ!うれしいなあ!
学ぶことって本当はすごく楽しい事なんだよねってすごく思います!

この展覧会は8月25日までやっています!
是非お子様の夏休みの自由研究にもご活躍してくださったらなあ!と思いました。
小学生から大学生まで幅広く研究しがいのある興味深いテーマが詰まっています!!

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