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明石と神戸で食べ歩いた話
【明石と神戸で食い倒れてきたことを語っているだけの雑文】
「玉子焼きとアナゴを食べに明石へ行きませんか」
名古屋在住の友人に誘われ、大阪在住の私は諸手を挙げて賛成した。おいしいものの選択眼において、絶対的な信頼をおいている親友である。
そういえば、アナゴの旬、というものを真剣に考えたことはなかった。調べてみると、6月から8月にかけてがそうらしい。なるほど、ちょうど今時分である。旬を逃さない友人、さすがである。
せっかく明石まで行くのだからあれも見たいこれも食べたい、という友人謹製のプランを引っ提げて、我々はいざ、JR明石駅へ降り立った。
食い倒れ日帰り旅行、開幕である。
天気はあいにくの曇り空。だが、我々にとっては御の字である。なにせ2人揃って雨女。かたや職場の行事に台風を何度も直撃させ(私である)、かたや乗った新幹線が大雨で止まる(友人である)という2人組だ。雨女どころか荒天シスターズである。
良い天気だねえとのんきなことを言いつつ、いざ魚の棚商店街へ繰り出した。暑くも寒くもないのだから、外歩きに適していることは事実である。
魚の棚商店街。
明石駅から徒歩数分、地元では「うおんたな」と親しまれる、鮮魚店中心の商店街である。あちこちで魚がぴちぴちしているし、タコがうにうにしているし、明石焼きのお店が数軒おきに現れる。
お腹が空いていたので、手近なお店で明石焼きを食べることにした。遅めの朝食、10時のおやつである。
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明石焼き。地元では玉子焼きと呼ぶそうだ。
たこ焼きに似ているが、具はタコだけで、ふわふわしていて、だしにつけて食べる。ソースなんて掛けたら怒られるんだろうなぁとなんとなく思っていたのだが、卓上にソースが用意されていて驚いた。味変用らしい。
おだしの優しい風味と、ふわふわの生地と、噛み応えのあるタコ。そういえば、明石焼きをちゃんと食べるのはかなり久しぶりである。もしかしたら初めてかもしれない。
たこ焼きは、口に入れた瞬間口の中が火事になって喋れなくなるのが通例だが、明石焼きの場合、おだしにつけるおかげか温度がちょうど良い。薄味かと思いきや、思ったより油のコクもあって美味である。意外にソースも合う。
満足したところで再び商店街に繰り出すと、だんだん人が増えて活気が強まっていた。店先のお姉さんが話しかけてくれたので、タコの煮物をひと串買ってみる。冷やされていたが、やわらかくて食べやすかった。やわらか煮というだけのことはある。
このタイプのタコの煮物はあちこちで売られている。呼び込みのおっちゃんが試食をくれたりもした。甘めで濃い味の煮物である。
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あそこでたこめしを買おう、アナゴを買おうと算段をつけながら、友人が目を付けていたという定食屋さんに向かう。
店頭に掲げられたメニューを覗くと、ちょうど良くアナゴ丼があった。商店街で売られているアナゴはテイクアウトの品が多かったので、ここで食べられるならちょうど良いだろう。
が。我々は見てしまった。
鯛の刺身定食――。
「私は今、鯛の刺身定食に心惹かれている」
「ここでアナゴを食べないとか、もうなにしに来たのかわからない」
「アナゴは持ち帰れるけど刺身は持ち帰れない」
「アナゴ入り卵焼きあるよ」
「そこで妥協して良いのだろうか」
苦悩の結果がこちら。
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大正解である。優勝である。妥協万歳。
歯ごたえのある鯛のお刺身。ふわふわの卵焼き。混ぜられたアナゴもきちんと香りと味を主張していた。
アナゴは専門店で買って帰ることにした。運よく見切り品に出会えたのでそれをゲットする。すぐに食べてしまうので見切り品で充分だ。温めかたのこつも教えていただき勉強になった。皮目をフライパンで焼き、たれは食べる前に掛けるのが良いそうである。
2人揃ってたこめしも買った。
「たこめしください!」
「土日限定の鯛めしも炊き立てですがいかがですか」
「なんですってー!?」
新喜劇みたいな台詞を素で発する友人である。ちなみに鯛めしは涙を呑んでこらえた。
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たっぷりお土産を抱えて、次に向かったのは舞子である。
明石海峡大橋を見にいくのだ。
明石海峡大橋。
神戸市と淡路島を結ぶ、世界最大級の吊り橋である。
海に掛かる姿は見慣れたものだが、実はこの橋、回遊式の遊歩道施設がついている。それが、舞子公園から入ることのできる「舞子海上プロムナード」だ。
いざ近付いてみると、明石海峡大橋、でかい。マジででかい。そして淡路島が近い。なんだか触れそうな距離である。
「15万トンをケーブルで支えてるんだって。凄いね」
「お相撲さん15万人分だね」
「お相撲さんは1トンもないのでは?」
漫才のようだが通常運転である。
海に架かっている橋の下、に入ったことはあるだろうか。私は初めて入った。
神戸側から始まった遊歩道は、陸から150mほど海側へ突き出しているそうだ。歩いていくと、当たり前だがどんどん陸から離れていく。「いま、完全に海の上に居るな」と認識したとき、なんだか不思議な気分になった。
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思えばそもそも、私は工場見学の類が大好きなのである。そりゃあテンション上がるよな、と思った。
公園にキッチンカーが出ていたので、ジェラートを買った。潮風に吹かれながら食べるアイスは格別であった。
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再びJRに乗る。次の目的地は、神戸市中心部の中華街、南京町だった。目指すは豚まんである。
南京町周辺には、豚まんのお店がいくつかある。真っ先に名前が挙がる有名店、老祥記に向かった。友人曰く、551の豚まんとどう違うのか比べてみたい、とのこと。なるほどその発想はなかった。
老祥記。有名店だけあって常に行列ができている。何年か前に食べたことがあるが、そこそこ長い時間待った記憶がある。なので今回も長時間並ぶ覚悟をしていたのだが、運よく列の短いタイミングに滑り込むことができた。
あつあつの豚まんをゲットし、友人と分けて食べた。二口サイズの小ぶりな豚まんは、皮がもちもち、味は濃いめでジューシーである。
食べ終わる頃には行列が伸びていた。運が良かった。
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他にも食べ比べをしてみたい豚まんがあったのだが、お腹具合と相談して断念することにした。次の楽しみがあるというのも良いものである。
お土産屋さんを覗く。見たことのない中国食材に色めき立ったり、謎の置物にツッコミを入れたり。ああいうところで見るキャラクターグッズというのは、なぜどれも「パチモンでござる」という顔をしているのだろうか。
そのまま、元町から三宮まで続く商店街を散歩する。
激安の服屋さんをあちこちで見かけたので、面白がって寄り道しては物色した。アウトレットやらB品やら在庫調整やらが、安いものだと数百円くらいから売られている。数千円の品があると高く感じるが、元値を見れば数万円ということもあり感覚が狂う。
お腹がこなれたところで本日のディナー、牛カツである。ほんとうに食べてばかりである。
見よ、この鮮やかなミディアムレア。
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一口サイズで食べやすく、存分に牛肉の味を堪能することができた。醤油にソースにカレー塩、味変にも事欠かない。個人的にはカレー塩で千切りキャベツを食べるのがヒットであった。
最後に駅前の阪急百貨店を覗いた。新館の工事はとっくに終わっていて、かつてロフトと紀伊国屋書店が入っていたフロアが別世界のように変わっており驚いた。
デパ地下の551でアイスキャンデーの取り扱いが始まっているのを発見し、友人が興奮しながらまとめ買いしていた。彼女は私と同じく関西の出身なのだが、関西を離れて随分経つので551が恋しくなるらしい。確かに、豚まんもアイスキャンデーもおいしい。「あるとき~!」は、やっぱり嬉しいものである。
次はどこへ行こうか、あそこへ行きたい、あれが食べたい、と話を弾ませながら、新幹線に乗る友人を見送った。
食いしん坊たちの旅は、まだまだ続くのである。
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