食事

とある透析患者の食事事情:リン

【ご注意】
この投稿はあくまで個人的な見解です。
個人の体質や合併症、透析環境、投薬状況によって大きく異なりますので、ご了承ください。

食事制限(蛋白質制限)は必要?

IgA腎症と診断された腎不全保存期の頃は蛋白制限が厳しく、1日何単位と決めて食事制限。空腹感を補うためにきのこ類を足したり、白米を多めにしたりと努力の甲斐も虚しく1年で透析導入に至りました。

この頃はクレアチニンの値はどんどん上がるし、蛋白制限しても悪化が止まるわけではなかったので、食事制限の意味あるのかな?とかなり疑問に思っていました。

現在は透析を導入して2年目、2019年で3年目にはいります。
この間食事制限を意識していたのは、やはり短時間透析だった導入期〜2018年4月頃まで。ちょっとチーズやリンの上がりやすいものを食べると、すぐに血液に反応し、月2回の血液検査で引っかる→薬が増えるを繰り返していました。

事情が変わったのは2018年5月から長時間透析(6時間以上)に対応しているクリニックへの転院がきっかけです。

さすがに暴飲暴食はしませんが、グラタンやピザ、焼き肉などを食べた翌日に血液検査しても、基準値の範囲内に収まる。むしろもっと蛋白質を摂取しないとアルブミンの値が基準値より低くなってしまう、ということで塩分、カリウム以外は何も考えず食べていい状況になりました。

ちなみに、昨年はラザニアを食べたあとの血液検査がひどい状態で1年間ラザニア禁止になっていましたが、今年はラザニアの翌日に検査しても問題ありませんでした。

透析患者さんは何に気をつけるべき?

普段の食事で意識しているのは、リン・カリウム・塩分の3つです。
塩分やカリウムはわかりやすいのですが、難しいのがリンのコントロールで、これは悩んでおられる方が大変多いと思います。さらにリンは大きく有機リン・無機リンに分かれており、リンの値を上昇させる原因として考えられるのはこのうち無機リンにあたります。

これらリンで最も大きな違いは体内への吸収率の違いにあります。
有機リンの場合体内への吸収率が20~60%であるのに対して、無機リンは90%以上と大変高く、リンが上がって困るとおっしゃる患者さんの中にはここがはっきりされていない方もおられるのではないかと思います。
【参考サイト】
https://dialysis.medipress.jp/hint-of-life/meal/66

加工食品がだめだということはわかっていても、普段使っている調味料やコンビニ弁当、菓子パン、お菓子(スナック、ケーキなど)、清涼飲料水など身の回りには無機リンを含む飲食物が山のようにあり、その一つ一つについてチェックするのは面倒ですよね。
それに、あまり意識しすぎると食べるものがなくなってしまうので、ひとまず下記の2種類だけでも注意して、普段の食事や調味料を検討してください。

さすがに1商品ごとの含有量まではわかりませんが、塵も積もれば…なので食事で減らせるものは少しでも減らしておいたほうがいい結果に繋がります。

リン酸塩、重合リン酸塩(リン酸Na、ポリリン酸Na、メタリン酸Naなど)
使用目的…結着剤、乳化剤、食感向上
問題点…腎臓機能低下の誘発、腎石灰症の発症率が高まるなどの報告がある。
使用例…練り製品、加工肉類、生菓子類など

亜硝酸ナトリウム(亜硝酸Na)
使用目的…発色剤
問題点…肉や魚のアミンと反応して発がん物質に変化。
使用例…ウインナー、ハム、たらこ、明太子など
【参考サイト】
http://www.seikatsuclub.coop/biosapo/tabemono/additive/12types.html

なぜ透析患者さんはそこまでリン(無機リン)を敵視するのか。
それはリンが体内のカルシウムと結びつきやすいということにあります。
簡単にいうと、血中のカルシウムをリンが奪い、それでも足りない分を骨から分解吸収してしまいます。結果として骨粗鬆症、動脈硬化など様々な大病につながることになります。健康な方ならある程度は尿として排出されますが、透析患者さんはそれがうまく機能しません。
【参考サイト】
https://jinentai.com/dialysis/tips/5_2

もちろん、薬や透析である程度は除去できますが、やはりそれにも限界はあるので、そもそも体内に入れる無機リンを極力減らすほうが身体にとっては安心安全です。

最後に

透析患者さんに限らず、腎機能が正常な健常者の方も患者さんほど神経質になることはないと思いますが、無機リン自体できるだけ摂取しないほうがいいと思います。

腎不全になるまではまったく意識したことがなかったものですが、改めてスーパーなどで成分表を確認するとずいぶん多くのものに含まれているので、考え直すきっかけになりました。

有機リン(肉、魚、卵、豆類)はアルブミンの値を維持するためにもしっかり取ってください。ただこれについてはクリニック毎の見解もあり、特に短時間透析(3〜4時間)中心のところや透析中に血圧が下がってしまう方、原疾患、合併症などによっては制限されているかもしれません。それでもリンを上げないために有機リンを食べない、食事を取らないのは間違えています。

合併症として副甲状腺に問題のある方はどうしても上がってしまうようなので、その場合は食事だけでリンをコントロールするのは難しいと思います。
【参考サイト】
https://dialysis.medipress.jp/hint-of-life/meal/41
https://www.kissei.co.jp/dialysis/about_dialysis/complications.html

そういった場合「アルブミンの値が上がらない」と悩ましいところだと思いますが、必ず自分だけで判断せずに、薬やダイアライザーの調整なども含めてクリニックの管理栄養士さんや先生に相談してください。食べなければ大丈夫というのは最も危険な考え方です。

私自身も導入時の病院や最初のクリニックでは管理栄養士さんがいたので、いろいろ質問をしてわからないところを潰していきました。

リンの値は普段の食生活を少し意識するだけでも改善されていくものです。リンの値が改善されると、しっかりと食事ができ、体力・筋力もつき、しっかり透析できるようになります。

しっかり食事、しっかり透析、しっかり運動をめざしてがんばりましょう。

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中の人はIgA腎症から2017/01より人工透析になりました。11月からオーバーナイト透析になります。このnoteでは少し緩めの減塩生活(透析食)について掲載したいと思います。