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<鑑賞記録>ウェスト・エンド

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ウェストエンドで観た演劇の鑑賞記録です。
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<鑑賞記録>『A Little Life』

<鑑賞記録>『A Little Life』

※この記事には、性暴力と自傷行為に関する詳細な描写があります。

ロンドンで上演中の話題作、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出「A Little Life」を観て来たが、この作品が、とても衝撃的だった。というのも、劇中で描かれるレイプとリストカットのシーンが、今まで観てきた演劇作品の中で一番直接的だったからだ。そこで、この公演について思ったことを、記憶が新鮮なうちに書き残しておきたい。

あらすじ【第一

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2022年の観劇まとめ。印象に残った5本。

2022年の観劇まとめ。印象に残った5本。

2022年の観劇まとめです。年始にツイッターに投稿したのと同じ物を、noteにも残しておこうと思います。
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『オーランドー』
現在、上演中。ヴァージニア・ウルフの同名小説を戯曲化。主演は、ネットフリックスの人気シリーズ「ザ・クラウン」でダイアナ妃役を演じたエマ・コリン。ダイナミックな脚色とキレのある演出、色鮮やかな衣装が良かった。世界的に有名な役者の演技が間近で見られるの

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2022年 エディンバラ演劇祭

2022年 エディンバラ演劇祭

去年の夏に行ったエディンバラ・フェスティバルの記録です。ツイッターに投稿した物と同じ物を、noteにも残しておこうと思います。
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エディンバラ・フェスティバルに行ってきました。さすが世界最大の演劇祭で、物凄い規模の大きさでした。大通りは、大道芸人とその観客で、雨の日でも大賑わい。

街に出ると、役者たちがビラ配りをしていて、歩くだけでも楽しい。驚いたのは、当日券は無料の公

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<鑑賞記録>リア王 / グローブ座

<鑑賞記録>リア王 / グローブ座

グローブ座の野外劇場は、初めてだった。夏の期間だけ開いていて、コロナも重なり、なんだかんだタイミングが合わなかったが、ようやく観られて良かった。
主演は、野田秀樹さんの作品にも度々出演しているキャサリン・ハンター。映像で何度も観た事がある女優さんが目の前にいて、なんだか不思議な気分だった。つくづく贅沢な話だ。真面目なシーンとコミカルなシーンの演じ分けが丁寧で、長いセリフを喋ればお客さんを一気に掴ん

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<鑑賞記録>父と暗殺者(the Father and the Assassin) / ナショナル・シアター

<鑑賞記録>父と暗殺者(the Father and the Assassin) / ナショナル・シアター

面白かった。舞台美術が綺麗だったし、転換も良く練られていて良かった。史実に忠実で、歴史の勉強にもなって良かった。若い頃から最期までが、約2時間半で描かれていて、内容は盛り沢山。

ガンジーの暗殺者 ナトラム・ゴドセの話。ガンジーに傾倒していた彼が、右翼の活動家になり、遂にはガンジーを暗殺して死刑に至るまで。ゴドセは、3人の兄がいたが、いずれも早くに亡くしていた。「男の子を狙った呪いがかけられている

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<鑑賞記録>ミドル / ナショナル・シアター

<鑑賞記録>ミドル / ナショナル・シアター

2017年にナショナルシアターで上演された「ビギニング」という公演の続編。三部作になるらしい。話自体は繋がっていないし、登場人物も違うんだけど、一作目の「ビギニング」は男女の関係の始まり、今回の「ミドル」は夫婦の関係の途中、最終作の詳細はまだ発表されてないけど「エンド」というタイトルだという事は決まっているので、おそらく男女の関係の終わりを描く事になるんだと思う。

テーマ自体は好みだったけど、演

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<鑑賞記録>ダディー / アルメイダ・シアター

<鑑賞記録>ダディー / アルメイダ・シアター

少し前に観た、超話題だった作品。なんとか当日券で観に行けた。直前でキャンセルになったド真ん中の席に座れてラッキーだった。

主人公は、ブラック・アメリカンでゲイで、まだキャリアを始めたばかりのアーティスト。彼には、大富豪で中年で白人の恋人がいるが、これが本物の恋なのか、遊ばれているだけなのか?という話。人種差別的な描写も性差別的な描写もあるけど、変に説教臭くなくて良かった。タイトルの「ダディー」は

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<鑑賞記録> The 47th / オールドヴィック劇場

<鑑賞記録> The 47th / オールドヴィック劇場

2024年、ドナルド・トランプが大統領選へのカムバックに向けて進んでいくという近未来のフィクション。トランプとその家族、バイデン、カマラ・ハリスとか実在の人物が出てくる。モノマネにならないように演技を作っていて、それは上手いと思ったけど、話は別に面白くなかった。トランプの顔は似てた。話も平坦で意外性がない。チケット代が高かっただけに残念。

2024年を舞台にしているのに、2021年の連邦議会の襲

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<鑑賞記録>フィーバー・シンドローム / ハムステッド劇場

<鑑賞記録>フィーバー・シンドローム / ハムステッド劇場

初めて行った劇場。ここも、ロビーが広いカフェになっていて、飲んだり食べたりしながら開場を待っていました。

舞台はニューヨークの裕福な家庭。主人公の教授は体外受精のパイオニアで、医療業界に大きな功績を残した。しかし、現在はパーキンソン病を患っていて、歳をとってから気性も荒くなっている。そんな彼の功績を讃えるパーティーの前日に家族が集まって、そこで色々ある話。再婚相手の若い妻、主人公は娘の子育てに悩

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<鑑賞記録>ハウス・オブ・アイフ / ブッシュシアター

<鑑賞記録>ハウス・オブ・アイフ / ブッシュシアター

ロンドンで暮らすエチオピア出身イギリス人の家族の話。兄の葬儀の後の話。楽しげに過ごす兄妹たちだが、どこか寂しさが滲んでいる。中盤、兄が麻薬中毒で、薬物の過剰摂取で事が明らかになり、そこから、ドラマが展開する。保守的な父親は子供達が宗教に熱心じゃない事に対して怒るが、子供達はその父親が、母よりも若い女性と再婚した事に怒っている。それに伴って、幼少期の虐待も明らかになったり・・・と、テーマは面白いんだ

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<鑑賞記録>小麦は緑 / ナショナルシアター

<鑑賞記録>小麦は緑 / ナショナルシアター

これは、もう物凄く面白かったです。聞いた事ない台本だったけど、調べたら「小麦は緑」って邦題で映画化されてました。日本で上演された事はあるのかな、誰もやってないなら、和訳して持って帰りたいくらい面白かった。ざっくり言うと、マイフェアレディーの男女逆転版なんですけど、なんせ演出が凄まじかったです。

ナショナルシアターライブでやっても不思議じゃないと思ったので、ネタバレ気にする方は読まないで下さい。

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<鑑賞記録>ナンバー / オールド・ヴィック劇場

<鑑賞記録>ナンバー / オールド・ヴィック劇場

ロンドン出身の劇作家 カール・チャーチルが2002年に書いたSF(A Number / Caryl Churchill)。息子と妻を亡くした父親がクローンを作ったら、病院のミスで同じ遺伝子の息子が出来てしまって・・・、という話。面白かった。ワンシチュエーションで、たった4人だけしか出ていないとは思えない密度。
毎週必ず一本は観てるけど、ロンドンと言えども殆どが、うん、まあ、好きではない。って感想で

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<鑑賞記録> コラボレーション / ヤング・ヴィック劇場

<鑑賞記録> コラボレーション / ヤング・ヴィック劇場

ヤングヴィック劇場の新作。アンディー・ウォーホルとバスキアのコラボの話。実際にあった話が基で、1984年のニューヨークが舞台。前半は、ちょっとザ・美術の話が多すぎてあざとい印象だったけど、後半から、超人気の若手のバスキアと、段々落ち目になってきたと言われているウォーホルとの、友情か愛情か、ライバル意識か自己嫌悪か、みたいな人間ドラマが深掘りされてきて、面白かった。トータルで見ると、前半の説明的な描

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<鑑賞記録>Kontakthof(ピナ・バウシュ) / サドラーウェルズ劇場

<鑑賞記録>Kontakthof(ピナ・バウシュ) / サドラーウェルズ劇場

ピナ・バウシュの劇団の公演です。劇団名、Tanztheater Wuppertal Pina Bauschなんですけど、日本語表記がどうなるか分かりませんでした。タイトルの「Kontakthof」は、「コンタクトホーフ」と読むそうで、「触れ合いの館」といった意味らしいです。誤訳だったらごめんなさい。1978年に初演された作品で、彩の国さいたま芸術劇場でも上演されていたようです。
初のピナ・バウシュ

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