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<鑑賞記録>ナンバー / オールド・ヴィック劇場

ロンドン出身の劇作家 カール・チャーチルが2002年に書いたSF(A Number / Caryl Churchill)。息子と妻を亡くした父親がクローンを作ったら、病院のミスで同じ遺伝子の息子が出来てしまって・・・、という話。面白かった。ワンシチュエーションで、たった4人だけしか出ていないとは思えない密度。
毎週必ず一本は観てるけど、ロンドンと言えども殆どが、うん、まあ、好きではない。って感想で、それは東京に居た時と同じだったから、むしろ安心すらしたんだけども、面白い作品は本当に物凄い。
この作品もその一つ。コメディーっぽいシーンもあるんだけど、その匙加減が絶妙で、オモシロ悲しいというか、幸せ切ないというか、ベタに言えば、笑えて泣けるっていう、とにかく上質な会話劇だった。会話の中に、いろいろ面白い仕掛けがありそうだって事は分かったんだけど、細かいニュアンスまでは分からなかったのが残念。
写真の通り、セットが全部真っ赤っか。その中で、一枚目の写真の右上にある、母親の写真だけが白い額縁の中にあるのが印象的に使われている。これが主張しすぎてなくて、ちょうど良い。遺伝子の話なので、血をイメージしているんだと思う。

どこまで会話を尽くしても、血からは逃れられないというか。整形すりゃ顔も、努力すりゃ言葉も、手続きをすりゃ戸籍も変えられるけど、DNAだけは変えられないというような。75分くらいで大満足。チケットが1万円くらいして、え、この値段で75分かよ。まあ、経験だ、有名な作家だしなとか思ってた頃の僕の両肩をグッと掴んで「スーツ着てネクタイして、背筋を伸ばして、観劇をさせて頂け!」って叱りたい。

こっからさき、軽めのネタバレなんですけど、メモがてら。今後、この戯曲を読みたい人は、読まないでください。

ラストシーン、美術館で息子と会うシーン、人間の遺伝子の90%は他人と同じで、80%はチンパンジーと同じで、33%はレタスと同じ。だから、レタスに親近感を感じるんだ。みないな台詞を真面目に話すシーンは、ほんとに泣き笑いだった。パーセントは違うかも。それから、途中途中の早替えが、早すぎた。衣装がどういう仕掛けになってるのか、舞台裏見させて欲しかった。

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