HK15

鉄砲おたく。ハードボイルド好き。

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最近の記事

ばんざい!

 この作品が逆噴射小説大賞の一次&二次選考を通過! 嬉しい! 本選考で選ばれたらもっと嬉しいけど、それでもとにかく嬉しい! よかった!  冷静になって分析。  過去二年はてんでだめだったのに対し、今回はうまくいった。「このあとどうなる」の引きの部分までどうつなげるかというところに課題があると思って、工夫して書いてみたのがよかったのだろう。舞台の提示、主人公のパーソナリティの紹介、そして事件発生までの流れを以前よりうまく構築できたと感じる。アプローチがうまくいったという実感が

    • 龍の島

       ずしん、ずしんという足音と地響きともに、霧の向こうから現れたのは、途方もない化物だった。  とてつもなくでかい。いつだったか動物園で見た象の何倍も大きい。  丸太みたいな四本脚。  長い尾。  でかい胴体。  長い首。  冗談みたいに小さな頭。  そんなのが何頭も現れた。  大概のことには動じない俺たちも、これには唖然として黙り込むしかなかった。  あれは何ですか少尉殿。  軍曹がポツンと言った。  少尉殿は丸眼鏡の底の目を大きく見開き、口をあんぐり開けていたが、ややあって

      • 罪人どもの街

         カバン片手にだだっ広い駅のホームに降り立つと、独特の臭いが鼻をついた。  煤と鉄の臭い。強い酒と焼けた肉の臭い。  火の臭い。  ドワーフの街の臭い。  駅の公衆電話で先方に連絡を入れた。交換手は少しもたついたが、それでもすぐつながった。夜も遅かったが先方はまだ起きていた。私は街に到着したことを告げた。  今日はもう遅いですから、会うのは明日にしましょう。場所とお時間はそちらにお任せします。私は〈コクランの巻鬚〉亭に宿を取っています。  私がそう言うと、先方は、そちらの食堂

        • 今年の目標

           長編小説を書く。できれば4月あたりにはそれらしいかたちにしたい。

        ばんざい!

          ダンジョン・ディテクティヴ

          2026年11月13日 日本標準時 午後11時47分 愛知県名古屋市 特七号地下迷宮 第三層  その横穴はやけに暗くて湿っていた。何とも言えず薄気味悪い雰囲気が漂っていた。この穴蔵の住民なら、瘴気が充満しているとか何とか言うんだろう。 「ここですね」  小鬼の案内役は流暢な日本語で言った。それからこちらの方を見て言った。 「ほんとに入るんですか? 今から? やめといた方が……」 「虎穴に入らずんば虎児を得ず、って知ってるかい?」  俺がそう言うと、小鬼は首をひねった。俺は苦

          ダンジョン・ディテクティヴ

          復讐走路

           チクタク。チクタク。時計の針がリズムを刻む。チクタク。チクタク。チクタク。  リズムが俺をせき立てる。チクタク。チクタク。チクタク。心臓のビートが早まる。汗がにじむ。息が荒くなる。身体が震える。 「焦るんじゃねえよ」  相方が言う。 「タタキは初めてじゃねえだろ。ガキじゃあるまいに」  俺は言い返す。 「何言ってんだよ。てめえもブルってるじゃねえか」  俺はちらっと横に視線を投げる。真っ青なマニキュアで彩られた白くて細い指が、レミントンの12番をきつく、きつく握りしめている

          復讐走路

          逆噴射文学賞、選考通過ならず

           そういうことです。三作とも落選。自信あったのにな~マジ残念! くやしー!  とはいえ、事実は事実。わたしが一歩……いや二歩か三歩か……あるいはまったく……及ばなかったということ。パルプの道は険しい。  次は一本でも通過したいなあ!

          逆噴射文学賞、選考通過ならず

          ブラッド・サイバー・スチールエッジ

           空から女の子が降ってきた。  と言ったらテンプレすぎるか。じゃ、その女の子が、いかしたパンクロッカースタイルで、ショートヘアを真っ赤に染めていて、ついでに日本刀を持っていたら、あんたどうする?  おれはポカンとしていた。  女の子はこっちを向いた。ルビーみたいな双眸がおれを見つめた。抜けるように白い顔の中、バラの花びらみたいに艶やかな唇が動く。 「あんたばかァ?」  どっかで聞いた台詞だな。 「警告したでしょ? キルゾーンに踏み込んでるって」  そんなことも言われた気がす

          ブラッド・サイバー・スチールエッジ

          全裸の大罪

           当てつけだ、とやつは言った。これは当てつけだ、この世界に対するささやかな異議申し立てというやつさ、と。  フルチンでそんなことを言われても困る。また、やつのやらかしたことを考えたら、ささやかな異議申し立てとはとても言えない。今となっては。  すべての日本の大都市は狂気に占拠された。東京、大阪、名古屋。そのすべての大通りを、今や全裸集団が練り歩いている。ネオ・ヒッピーが公園を占領してへたくそなコンサートを無期限開催し、パスタファリアンは家系ラーメン過激派と手を組み、神聖讃

          全裸の大罪

          殺戮者たち

           彼の次のターゲットは半グレだった。ベトナム系の組織からの依頼。連中は間違いをおかした。ベトナム人からヤクを奪ったのだ。その報復だ。  そんなことはどうでもいい。問題はカネだ。払いはいい。断る理由はなかった。  午前0時10分前。  荒川沿いの団地、その一画。 「なんだてめえ」  そうやって凄みかけたチンピラの顔面に、彼はレミントンを向けた。OOバックをぶちこむ。飛び散る赤。かまわずポンプ・アクション。首なしの死体を踏み越えて、彼は部屋に踏み込んだ。 「な」  

          殺戮者たち